紫紺のライラック

              著 五月雨ジョージ



「雑草とは何か?その美点が、まだ発見されていない植物である。」ラルフ・ワルド・エマーソンは「共和国の繁栄」でこう語った。

 日本だけでも名前のある花は、3000種類以上ある。まだ知られてない花も無数にある。そして、その子たちの事など何も知らない大人が、勝手なイメージだけで名前をつけ、都合良く花に言葉を添えた。その花が、その植物が、その生命がなにを語り、なにをこの世に残そうとして、この世に生まれてきたのか。私はふと、一輪に咲く名前の知らない花に、そんな事を考えてしまうことがある。

 ここに、ひと咲きのライラックの花がある。耐寒性が強く花期が長い、冷涼な地域の庭園木に咲き続け、慎ましく可憐に咲く中に、寒さを乗り切る強い心を持っている薄紫に輝く花だ。この子もなにを語り、なにをこの世に残そうとし、この世に生まれてきたのか。



 この物語は、花のことをなにも知らない1人の少年がそんな花に恋をし、その花のすべてを知りたいと願い続ける恋愛物語である。