[109]記憶喪失の侯爵様に溺愛されています これは偽りの幸福ですか?ー | 泡沫の雪

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・「記憶喪失の侯爵様に溺愛されています これは偽りの幸福ですか?」 コミックス1巻、小説36話+番外編5話の感想
・ジャンル:恋愛
・絵柄・ストーリー・お勧め度:★★★★



[形だけの、いわゆる政略結婚としてスプリングフィールド侯爵家へ迎えられた、伯爵令嬢リリアーナ。とある出来事から女性を嫌悪している侯爵のウィリアム・ルーサーフォードとは、数度顔を合わせただけの関係。何もない日々が1年ほど続いたのだが、ある日、彼は訓練中に頭を打って記憶喪失になってしまう。何も覚えていない彼は夫としてリリアーナに接し、戸惑うのだが…。]



エルサが強い。一応使用人だから、主人に逆らうと職を失う可能性があるのに、心身ともに強い。非常に好感が持てる女性である。
さておき。
まあ、ウィリアムは侯爵という身分でいろんな女に言い寄られたのもあるが、元婚約者の不貞だとか、自分を巡って醜い争いが繰り広げられれば、嫌悪感持つのも仕方ないわな。
リリアーナが普通の令嬢なら、侯爵の仕打ちは侮辱に近いものがあるから、ショックか怒りで実家に帰るか助けを求めるか、直談判するかといったところかもしれないが、家格もあるし、そもそも彼女自体が訳ありだからそんな展開にはならなかったのだが。訳ありでなくとも、生来、優しいというか、善良そのものの人格なので、あり得ないだろうな。
何せ、虐待していた義母と義姉にも恨みも妬みといった負の感情はまったく抱かず、ただただ自分の中に理由を探していたのだから。彼女に責がないにも関わらず。
何にも期待せず、諦めを知っている彼女は、美しいが哀しい。

義母のサンドラも、生い立ち的には同情できなくもない。サンドラも、やはり理由なく他人に虐げられていた人間だからだが、とはいえ虐待はどんな理由があっても許されるべき行為ではないけれど。拠り所であった、リリアーナの父にも最終的には裏切られ、あっさり捨てたのもある意味復讐みたいなものだったのかな。身分がどうのと、貴族階級のくだらない風習の中になければ、きっと歪むことなく幸せになったのだろう。
義姉の方は……いろんな意味で救いようがない。甘やかされてきた弊害だろうが、自分を過大評価しすぎ。結果は、推して知るべし。

コミックスは絵も綺麗だし分かりやすい。個人的に言うならば、王太子の容姿がイメージと違ったな。いかにも箱入りみたいな感じだったから、もうちょっと世間知らず風の雰囲気が抜ければなあと。
小説も読みやすく、面白いのでお勧め。