★クラッシュ★~「作品賞にふさわしい感動作!」 | 思い入れ★ホームシアター★日記

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わ~い。ついに我が家にホームシアターが・・
6.1ch 80インチスクリーン。
その驚きの臨場感!!近所の皆さんごめんなさい。m(_ _)m

crash



いつも思うのだけど、アカデミー賞にノミネートされる
作品ってどうして、日本での公開が遅いの?
そして、どうして、単館上映の作品が多いの?

ノミネートされる作品って、アメリカでも、単館上映なの
かな??
ヒット作品ではなかったの?

もし、そうでないとしたら、日本の配給会社は見る目が
ないってこと??(笑)

今回、アカデミー賞の作品賞を含む3部門を受賞した
「クラッシュ」
も上映してる所を探すの結構苦労した。

それでも、元々は、単館系シネマだったのが、
オスカー受賞で、改めて拡大上映されたそうで・・。


クラッシュ」-crash”というのは、”ぶつかる・衝突する”の意。
その題名とおり、この映画も、ロスのハイウェイでの激しい
衝突事故から始まる。

でも、”車の衝突”だけを、クラッシュと言っているのではない。
実際は、そこにいあわせた人種・職業・階層、趣趣雑多な人々を
取り巻くいろいろな場合・場所での”クラッシュ”がテーマ。


これが、わずか、2時間の映画でありながら、実に丁寧に
描かれていく。

「クラッシュ」という題名。よく見かける、事故で助け出されるシーンを
映したスチール写真。雑誌などの紹介記事。

これだけが、予備知識であったが、見る前は、人種差別をテーマにした
骨太の社会派ドラマか、はたまた、アクションドラマか・・と思っていた。
ところが、実際は、ひとことでは語れない
”人間の心”の複雑さというものに、
真っ正面から向き合い、じっくりと描き出した人間ドラマであった。

展開的には、「24」である。

同時進行でいくつもの”ドラマ”が進行していき、その”ドラマ”の
それぞれの主人公がいろいろな場所で接点を持つ

こういう形式のドラマだと、やたら、薄っぺらなエピソードの
てんこ盛りやら、
派手なアクションの連発やら、映画が終わっても
整理しきれない複雑な人物関係な~んて事しか印象に残らない
作品が多い。

この映画も、確かに、登場人物どおしの接点があまりにも偶然すぎ

”現実にはありえない偶然な出会い”(←女医が誰だったか、気がつき
ました~?)なんて所があるにはある。

だが、ひとつひとつのエピソードが、決して薄っぺらなものではなく、
それぞれが、見る側にいろいろな問題を提起し、じっくりと考えさせて
くれる。

エピソードも”人種差別”と言う問題だけにとどまらず、介護問題、
夫婦問題、親子の関係など人間をとりまくさまざまな問題をテーマに
している。

そして、なんと言ってもこの映画の素晴らしいところは、この手の映画だと
やたら重くなったり、後味の悪い思いをする事が多いのであるが、
この映画の監督も脚本も”人間”をとても暖かい目で見ている所にある。
この映画の脚本家は、「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家だそうだが、
あの映画もテーマの重さに反して、見た後、何故か、清々しい涙
流させてくれた。この映画も同じである。

夏目漱石は、その小説「こころ」で、

「そんな鋳型にいれたような悪人は世の中にあるはずがない。
 平生はみんな善人なんです。」

・・と書いていたが、この映画を見て、その一節をふと
思い出した。
人は、ちょっとしたきっかけで、善意に満ちた人間にもなれば
悪意に満ちた人間にもなる。

アメリカにおける人種差別の根は深く、単一民族で国家を形成
している日本人には、安易に口を挟める問題ではない。
ただ、これだけは言えると思うのは、人種差別というのは、先入観に
よる偏見以外の何物でもないということである。
人間に”本質的な悪人”というものがいないのなら、深刻な人種差別も
各人のちょっとした心の持ちようで、もしかしたら無くすことができる
のではないだろうか。
そんな救いの部分を残してこの映画は終わったような気がする。