12月7日(火)
ケラリーノ・サンドロビッチ書き下ろし作品「黴菌」(シアター・コクーン)観てきました。KERA作品はこれでもう何本目だろう。「カラフルメリィでオハヨ」、「東京あたり」、「噂の男」、「あれから」、「世田谷カフカ」…。彼の関わった作品はみんな外れがなくて、爆笑させてくれたり狐につままれた気分にさせてくれたり泣かせてくれたりしながらも、作品の背骨に一本きっちり筋が通ってる、モチーフのはっきりした作品ばかりでした。はたして、シアターコクーンという大箱で上演されるこの作品の出来は?

太平洋戦争末期。敗色濃厚な中、窮乏生活を強いられていた日本国内にあって、東京郊外の丘の上に立つ五社池家の邸宅内には全く違う時間が流れていた。豪勢な調度、贅沢な食事、お茶にお酒…。そこで暮らすのは実業家の父と訳ありげな三人の息子、長男の嫁とその息子、女中に父の愛人。そこに脱走兵とその妻が転がり込んでくる。精神科医である三兄弟の長男は、この夫婦を使って怪しげな実験を企てていた。陸軍幹部の影武者をしながら無軌道に暮らす次男、女たらしの三男。一見、何の不自由もなさそうな五社池家に、実は暗く悲しい過去があった。庭から掘り出される子供の頭蓋骨、長男の病院から抜け出してきた脳病患者、そして父の愛人の兄…。敗戦の衝撃と時代の激流の中で、優雅な上流階級の暮らしの裏側に潜む過去の傷跡が、次第に彼らの心を脅かしていく…。
初めてです。KERAがらみで、こんな失敗した舞台を観たのは。個性的でユニークな役者たちが、エッジの効いた演出でマシンガンのように気の利いた台詞を連射するスピーディーで楽しい舞台、ではあります。様々な小ネタと入り組んだ伏線が、決して難解にならないように巧みに張り巡らしてあります。しかし…。最期までその仕掛けが機能しませんでした。歯車がかみ合って動き出さないのです。たくさんの歯車が、あちこちで空回りしている。そんな感じの舞台でした。死んだ三男のエピソードと、長男の人体実験に一体何の関係が?トリックスター的に大目立ちしていた愛人の兄の役割は?実は大富豪だった女中の役割は?次男が陸軍幹部の影武者であることの意味は?全部が絡み合ってリンクする必要はないのでしょうが、これだけかみ合わないと、観ていて辛いものがあります。う~ん、どうしちゃったのでしょう?
会場は満席でしたが、通常最低でも3回はあった(ような気がした)カーテンコールは二回だけ。なんか役者たちも不完全燃焼のように見えました。残念!
★※☆☆☆(ホシひとつ半)