7月3日(日)
下北沢ザ・スズナリで行われた弘前劇場公演「家には高い木があった」観てきました。

井戸掘り職人だった老人が97歳で死んだ。東京で、秋田で、札幌で、ばらばらに離れて暮らしていた弟妹たちがふるさとで家を守る長男のもとに久々に集う。井戸掘り職人の息子で兄妹たちの父親は教師だったが、彼らが幼い頃に失踪。母親の姿も見えない。兄妹たちは父の影響か、そろって教員だ。しっかり者の長男・龍郎、ひょうきんな次男・子郎、いまだに甘えん坊の三男・虎、そして、一人娘のうさぎ。あっという間に打ち解けて、子供の頃のようにふざけあう男兄妹をよそに、夫と共にやってきたうさぎの表情は浮かない…。老人の葬式。小さな街らしく、まるで親戚のようにたくさんの人たちがやってくる。老人が暮らし、老人が愛し、そして老人が死んだ家の離れに、様々人々が集い、様々な人間模様が入り乱れる。その離れの近くには、高い高い一本の木があった…。
この作品、聞けば17年ほど前に初演が行われた劇団の代表作なんだそうです。作・演出の長谷川孝治さんの全盛期(?)の作品。なるほど、ホンも演出も若々しさにあふれてます。重厚で落ち着いた感じの中に、機関銃のような台詞のやりとりが挿入されるといういつものスタイルではなく、跳んだりはねたりはしゃいだり、その合間に掛け合い漫談のような台詞のやりとりが繰り返される感じ。言ってみれば、小劇場のノリです。まさしく、このスズナリで上演されるのにぴったり来るような舞台でした。この作品の素晴らしいところは、そうした小劇場のノリでありながら、きちんと骨太のモチーフが描かれている点です。離れて暮らしていても、あっという間に打ち解けて、楽しげな会話を交わす兄妹。その一方、それぞれに守るべき家族と暮らしがあり、明かすことの出来ない悩みや苦しみがあり、打ち解けているようでいて互いに”超えてはならない一線”はきっちり押さえている。子供の頃とは違う…まるで、仲のよい兄妹を演じているかのよう。あっという間にやってきて、あっという間に去っていく。もう子供ではない。明るく振る舞えば振る舞うほど感じる寂しさ…。でも、それでいいじゃないか。それが家族、とりわけ兄妹というもの。兄妹って、やっぱりいいよね――。そういったしみじみした感じがしっかり伝わります。
おなじみの役者さんたちに加えて、見慣れない客演?の役者さんたちもいい味を出していました。とくに次男役の俳優さんが”トリックスター”的な役割を果たしていて、舞台に普段と違ったはちゃめちゃさと軽快なテンポを与えていました。スズナリの客席がほぼ満席になっていたのも、納得の舞台でした。
★★★★☆(ホシ4つ)