幼なじみのカールとエリーは仲のよい夫婦だった。冒険好きの二人のあこがれは探検家のマンツ。世界中を旅して次々と新発見を成し遂げたマンツのようになりたい。それが二人の夢だった。しかし、現実は…。日々の暮らしに追われ、冒険の旅に出ることもなく、子供にも恵まれず…。それでも二人は幸せだった。行方不明になったマンツが生涯を掛けて解き明かそうとした最後の秘境・エンゼルフォールの絵を眺めながら、「いつか私をあそこへ連れて行ってね」とほほえむエリー。しかし、夢を叶える前にエリーは病に倒れ帰らぬ人に。ひとりぼっちになったカールは二人の思い出がぎっしり詰まった家で寂しく暮らしていた。静かだった住宅地はいつしか高層ビルが建ち並ぶ大都会へと姿を変え、カールは立ち退きを迫られる。思い出の家を離れたくないカールは必死に抵抗するが、ついに家を明け渡すことに。このままでいいのか?そんなときよみがえってきたのがエリーの言葉だった。「いつかあそこへ連れて行ってね」。カールは思い出の詰まった家とともにエンゼルフォールへ向けて旅立つ。たくさんの風船を家につけて、大空へ…。しかしそこに思わぬちん入者が。「お年寄りのお手伝いバッジ」ほしさにカールの元を訪れていた少年・ラッセルが一緒についてきてしまったのだ。幼い頃両親と別れ、愛情に飢えていたラッセルはバッジを集めれば親に会えると信じていた。最初はラッセルを邪険に扱っていたカールも次第にその無邪気さに心を許し、二人でエンゼルフォールを目指すことに。苦難の果てにたどり着いたエンゼルフォール。そこには行方不明になった伝説の探検家・マンツが今も謎の怪鳥を探し求めていた。ひょんな事から怪鳥と仲良くなった二人はあこがれのマンツと闘うことに。はたして、カールじいさんの大冒険の結末は…?
なかなかの傑作でした。無口で引っ込み思案のカールと快活で積極的なエリー。回想シーンで描かれる幼い頃、若い頃の二人の様子はとても「大人心」をくすぐるもので、見果てぬ夢を抱きながら、日々の暮らしに埋没してしまうと言うのもとても感情移入しやすいシチュエーション。とてもリアルなアニメーションなんだけど、キャラクターが三頭身の漫画チックなものなので、風船で空を飛ぶって言うあり得ない描写もごくごく自然に受け入れられます。アタマがちょっと足りな気味で無邪気で心寂しい少年・ラッセルと偏屈じいさんの冒険道中は、細かなギャグ満載で笑えます。最高だったのがエンゼルフォールの犬たち。恥ずかしいカラーでの虐待やテニスボールを使った遊び、犬の声を使ったお遊びなど、細かい芸が効いています。唯一残念だったのが、悪役になってしまったマンツ。彼は冒険に夢を賭け、夢に生きたすてきな探検家だったのに、最後は悪役になって死んでしまう。彼の人生を思うとちょっとむなしく切なくなります。空飛ぶ家の描写や飛行船でのアクションシーンは明らかに宮崎アニメの影響を受けていて、宮崎アニメ独特の「飛行感」というか「浮遊感」みたいなものが3Dデジタルアニメで見事に生かされていました。カールとエリーのような老人になれたらいいな、と誰もが思うであろう(先に死なれるのは困るけど)カップル向けの映画です。おすすめ。
★★★※☆(ホシ3つ半)
あ、眼鏡はうざったかったけど、デジタル3Dはなかなかよかったです。「アバター」も期待!