キネマ旬報5月号を買った。
この雑誌を買うのはひさびさ。ショーケンの顔写真を表紙にしたデザインがいい。
雑誌は週刊文春や新潮をよく買っていたのだが、最近はパスしている。最近の高年齢をあきらかに意識した特集造りには、辟易。ネットの影響もあるのだろうが、そもそも週刊誌としてつまらなくなっている。
ところで、キネ旬。3名の評価者による新作のレビューがいい。16本について書かれている。一番、高得点なのは今回は「ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ」というドキュメンタリー映画。
==================== 清張の短編を読んで
松本清張の短編(37P)
1.偽狂人の犯罪 60点
(犯罪小説 松本清張ジャンル別作品集)
主人公の名前が変わっている。猿渡卯平(さるわたりうへい)という。職業は経師屋(きょうじや)。経師屋がなんだか知らないので、調べると、『書画の幅(ふく)、また、ふすま・びょうぶなどの布・紙などで縁どりや裏打ちなどをして掛軸・額に仕立てることをする人。』とあった。
彼は父親の死後、通っていた大学を中退し、親の代を継いで始めたのだが、腕も劣るのでそれまで店にいた人もやめていき、残った従弟と細々と仕事を進めていた。そこに思いがけず大きな仕事が入るが、それがちょっとした油断で賠償金を払うはめになってしまう。
そこの場面は、こう書かれている。
最大の不幸は、彼が便所を立ったあとに起こった。部屋には妻も居なかった。ものの五分も経たないうちに戻ってくると、絵の上から一筋の煙が立ち昇っていた。火のついた炭が火鉢から弾いて飛び、傍の枠に貼りつけていた絖(ぬめ)の上に落ちたのである。彼は急いでそれを取り除いたが、間に合わず、牡丹の壮麗な花弁に無惨な穴があいていた。その直径五ミリばかりの緑の黒い焼穴こそ、卯平自身の人生をすっぽりと呑み込んでしまったのである。
その事故が元で、自分の女も取られ、借金地獄にはまっていくさまがいかにも現実にありそうな話だけに怖い。この短編では文章に説明が多く、猿渡の会話の場面が出てこない。出てくる会話は、猿渡の鑑定人が、彼に事件に関する事を聞くところくらいだ。猿渡の会話をもう少し入れてほしかった。
その反面、精神病を装って犯罪を犯すことへの説明文は多すぎると思った。せっかくの読んでいくリズムがそこで停滞してしまった。ということで、僕としては、「惜しいなぁ」と思う作品。
あと、「おやっ?」と思ったこと。
犯罪を犯すときの犯人の心情で、ドストエフスキーの「罪と罰」が引用されていた。確か、松本清張自身が、ドストエフスキーを好きだったという記憶がある。