「キング・オブ・ヴァジュラ 金剛王」 2013年製作 香港
                                                                                                         原題:金剛王: 死亡救赎 / The Wrath of Vajra

 

ジャッキー・チェン主演の『ライド・オン』が面白かったこともあり、今度は本格的なカンフーアクションを楽しみたいと思い、「DMM TV」で配信されていたロー・ウィンチョン監督の『キング・オブ・ヴァジュラ 金剛王』を鑑賞しました。

本作で主演を務めるシン・ユーは、実際に嵩山少林寺の第32代弟子として修行を積んだ経歴を持つ武術家です。その身体能力を存分に生かしたアクションは、CGやワイヤーに頼らない生身の迫力に満ちています。まさに超人的なリアルカンフーを堪能できる作品です。

物語の主人公は、大日本帝国軍の陰謀によって殺人兵器として育てられた「金剛王(こんごうおう)」です。幼少期にカルト組織「ハーデス教団」に拉致され、暗殺者として育てられた彼が、過去と決別するために教団へ反旗を翻します。囚われた子供たちを救い、教団による精神的な支配を打ち破るべく、不気味な刺客たちが待ち受ける死の寺院へ単身乗り込んでいく、肉弾戦主体のアクション映画です。

懐かしい倉田保昭も出演しています。久しぶりに彼のカンフーアクションが見られるのではないかと期待しましたが、残念ながら本作では格闘シーンがありませんでした。

ただ、倉田保昭は2026年現在も80歳で現役のアクション俳優として活動を続けています。「アクション俳優に引退はない」をモットーに掲げ、年齢を理由にアクションから身を引くつもりはないようです。

2026年7月には、自ら製作総指揮と主演を務めた映画『夢物語 The Living Dragon』が公開されました。アクション俳優としての活動60周年を記念した作品で、劇中では激しい格闘シーンも披露しているとのことです。80歳を迎えてなお、アクションへの情熱を持ち続ける姿には感服します。

本作で特に見応えがあったのは、宿敵・蒼龍(ツァンロン)を演じたユ・スンジュンと、シン・ユーによる雨中の決闘です。激しい攻防が繰り広げられ、二人の身体能力と技の切れ味が存分に発揮された印象的なシーンでした。



ユ・スンジュンはテコンドーの黒帯を持ち、ヌンチャクの扱いにも長けています。足技を中心とする格闘技の基礎がしっかりと身についており、劇中で披露するハイキックや飛び蹴りにも抜群の切れ味があります。単に派手な技を繰り出すだけでなく、一つひとつの動きに説得力があるのが魅力です。

彼は1990年代後半、韓国で絶大な人気を誇ったトップソロ歌手でもあります。当時から「ダンスの神」と呼ばれるほどの卓越したダンススキルで知られ、鍛え上げられた筋肉質な肉体も注目を集めていました。ジャッキー・チェンに実力を認められて事務所に所属し、『ラスト・ソルジャー』などの作品に出演。その後、本作では主人公のライバル役に抜擢されています。歌手、ダンサーとして培った身体表現の能力が、アクションにも生かされているように感じます。

もう一人、強烈な印象を残したのが、「猿(クレイジー・モンキー)」役のポッピン・ヒョンジュンです。

長い爪を武器に、暗闇に身を潜めて敵を襲うその姿は、まさに獣そのものです。肉体的な攻撃だけでなく、相手の恐怖心をあおるような不気味な振る舞いも特徴的で、物語の中盤に立ちはだかる強敵として存在感を放っています。

シン・ユーとの格闘シーンでは、一般的な武術とは一線を画す、前衛的なダンスを思わせる動きが目を引きます。一度見たら忘れられない、独特の戦闘スタイルです。ポッピン・ヒョンジュンならではの身体能力が存分に発揮されており、ほかの格闘シーンとは異なる面白さがあります。

関節を不自然な角度に曲げたり、瞬時にピタリと静止したり、軟体動物のように滑らかに動いたりと、その動きはどこか人間離れしています。武術家の技とは異なる、ダンサーならではの身体表現を取り入れた異色の体術は、本作のアクションに独特の個性を与えています。

このように、見どころとなる格闘シーンは非常に充実しています。出演者それぞれの身体能力や得意分野を生かした戦闘スタイルが用意されており、アクション映画としての完成度はなかなかのものです。

一方で、どうしても物足りなさを感じたのがストーリーです。

物語の背景には「ハーデス教団」というカルト組織が存在しますが、その実態や活動目的、歴史的な背景などが十分に描かれていません。そのため、組織そのものに現実味がなく、どこか薄っぺらな印象を受けます。

「中国のカンフー対日本の過激な格闘集団」という構図は、昔ながらのアクション映画では定番の設定なのかもしれません。しかし、せっかくこれだけ見応えのある格闘シーンを連続して楽しめる作品だけに、物語にももう少し深みが欲しかったところです。

アクションの迫力や出演者の身体能力には十分満足できましたが、ストーリーの作り込みという点では惜しさが残ります。アクションを楽しむ映画としては見応えがあるだけに、物語の面でもう一歩踏み込んでほしかった作品です。