GMOインターネットグループが受けた大規模なサイバー攻撃は、単なる情報漏えい事件ではありません。利用者の資産やプライバシーを脅かすだけでなく、企業の危機管理や国家のサイバーセキュリティーにも関わる深刻な問題を浮き彫りにしました。攻撃者による巨額の身代金要求に対し、GMOはどのように対応したのでしょうか。事件の経緯を振り返ります。
● 約80億円から約1億5800万円へと変わった身代金要求
GMOインターネットグループが運営する「お名前.com デスクトップクラウド」が、サイバー攻撃の被害を受けました。このサービスは、外国為替証拠金取引(FX)などに利用されています。今回の攻撃では、利用者が知らない間に口座で取引が行われる被害も発生しました。
攻撃者とみられる人物は、当初、GMOに約80億円の身代金を要求しました。支払いに応じなければ、利用者の情報をインターネット上に公開するほか、「ランサムウェア」と呼ばれる悪意のあるプログラムで攻撃すると脅迫していました。
ランサムウェアとは、パソコンやサーバーに侵入し、保存されたデータを暗号化したり、システムを使用できない状態にしたりする不正プログラムです。攻撃者は、データの復旧などと引き換えに金銭を要求します。
その後、攻撃者は要求額を変更し、約1億5800万円相当の暗号資産を求めました。最初の要求額から大幅に引き下げた背景には、交渉を通じて支払いを実現しようとする狙いがあったと考えられます。巨額の要求で相手に衝撃を与えた後、現実的に支払いを検討させようとする交渉手法とも受け取れます。
一方、GMOインターネットグループは、最初の支払い期限とされた10月21日を迎えても、要求に応じませんでした。同社は、身代金を支払っても、データの削除や情報の悪用防止が保証されるわけではないとして、拒否する姿勢を貫きました。
● 流出したとされる情報に「ほとんどデタラメ」との証言
10月27日、GMOは、攻撃者がインターネット上に同社や利用者に関する情報を公開したことを確認したと発表しました。
これを受け、同社は、公開された情報に自分の個人情報が含まれていることを確認した人に対し、見舞金を支払う方針を明らかにしました。支給額は、1回の公開につき最大300万円です。
しかし、公開された情報については、本人とされる人物から疑問の声も上がっています。取材に応じた人物は、掲載内容について「ほとんどデタラメです」と話しました。
さらに、GMOのFX取引用クラウドサービスを利用した経験があるか尋ねられると、「一度もないです。GMOの銀行とかは使う予定でしたけど。でもそれも使う予定というだけでまだ使っていません」と回答しました。
情報が流出する可能性に心当たりがあるかという質問にも、「ないです。本当にないんです」と答えています。
この証言が事実であれば、公開された情報の正確性や、攻撃者がどのような情報を入手したのかについて、慎重に検証する必要があります。情報が公開されたという事実だけで、その内容がすべて正しいと判断することはできません。
● 攻撃者のサイト停止を確認、情報提供に最大1億5800万円
10月28日、被害を受けたGMOインターネットは、攻撃者のものとみられるウェブサイトの停止を確認したと発表しました。ただし、セキュリティー会社からは、同日以降も一部の環境では閲覧できる状態が続いているとの指摘がありました。サイトの停止が確認されたからといって、公開された情報へのアクセスが完全に遮断されたとは限らないようです。
同社は同日正午、攻撃者の特定につながる情報を集めるため、専用の情報提供窓口も開設しました。犯人の逮捕や国際手配につながる情報を幅広く募り、有効な情報を提供した人には、総額で最大100万ドル(約1億5800万円)の懸賞金を支払うとしています。
興味深いのは、攻撃者が要求した約1億5800万円と同額の懸賞金を、犯人の特定に協力した人に提示した点です。身代金の支払いを拒否するだけでなく、攻撃者の特定と逮捕を目指すことで、事件の根本的な解決を図ろうとする姿勢がうかがえます。
被害を一時的に食い止めることも重要ですが、攻撃者を特定し、法的責任を追及することは、同様の犯罪を抑止するうえでも大きな意味があります。企業が身代金の支払いに応じるだけでは、攻撃者が再び同じ手口を使う可能性を排除できないためです。
GMOは、情報提供窓口の開設から6時間で113件の情報が寄せられたと発表しました。多くの情報が集まったことは、事件の解決に向けた一歩といえるでしょう。ただし、情報提供の件数だけで犯人の特定や逮捕が近いと判断することはできません。寄せられた情報の精査と、捜査機関などとの連携が重要になります。
今回の事件は、サイバー攻撃を受けた企業が身代金の要求にどう対応するのか、また、被害の拡大を防ぎながら攻撃者の特定を目指すには何が必要なのかを考える機会になりました。今後、事件の全容解明が進めば、企業のサイバーセキュリティー対策や、ランサムウェア攻撃への対応を考えるうえでも、重要な事例となる可能性があります。
参照:GMO攻撃 ハッカー集団のサイトはきょう未明に停止 GMO側「1.5億円の懸賞金」
「ほとんどデタラメ…」GMOサイバー攻撃で個人情報をさらされた人物が代表取材に困惑
