東京・吉原の高級ソープ店「ルーブル」を売春防止法違反で刑事告発し、摘発に追い込んだと主張していた30歳の大学生の女性が、10月20日、恐喝と恐喝未遂の疑いで逮捕されました。
かつて自ら性風俗店を告発した女性が、なぜ今度は恐喝の疑いで逮捕される事態になったのでしょうか。
警視庁は10月21日までに、勤務先だった性風俗店の店長から現金を脅し取ったなどとして、中村靖菜(なかむら やすな)容疑者(30)を逮捕しました。警察の調べに対し、中村容疑者は「間違っています」と述べ、容疑を否認しているといいます。
● 「面接荒らし」を繰り返していた要注意人物
「ルーブル」の摘発からおよそ1か月後、中村容疑者は吉原にある別の大衆ソープ店で働き始めました。しかし、ほどなくして退職しています。
その後、7月26日から29日にかけて、同店の店長に対し、「荷物を取りに行きます。往復のタクシー代をお支払いいただけるのであれば刑事告発はしません」などと告げ、現金を脅し取った疑いが持たれています。さらに、「告発しない条件で100万円を振り込んでください」と要求した疑いもあります。
中村容疑者は7月から8月にかけて複数の風俗店の面接を受けており、同様の手口で金銭を得ようとしていた可能性も指摘されています。業界関係者の間では、こうした行為を繰り返す「面接荒らし」として警戒されていたようです。
中村容疑者は以前、「ルーブル」を刑事告発した理由について、次のように説明していました。
「私は中国と日本のハーフなのですが、人種のことで店の人から受け入れがたい言動がありました。吉原に最近増えている中国人の観光客にも対応できるとアピールしたところ、『性病、怖くないの?』などと言われ、腹に据えかねる思いがありました。また、本意ではない形で店を辞めることになった経緯もあり、店に報復したい気持ちがありました。そのため、刑事告発に踏み切ったのです」
そもそも、なぜ中村容疑者は性風俗店で働いていたのでしょうか。本人によれば、家庭の事情から、どうしても働かざるを得ない状況だったといいます。
「私は家庭の事情で、どうしても風俗で働かざるを得ませんでした。『ルーブル』では150万円ほど稼ぎましたが、それは私の実力によるものです。恩はありません。そもそも風俗店などなくなればいいと思っています」
性風俗店で働きながら、その存在自体を否定するような発言をしていた中村容疑者。仕事を通じて、何らかの強い不満や反感を抱いていた可能性も考えられます。
ただし、今回の問題は「ルーブル」への告発だけではありません。中村容疑者をめぐっては、学歴を偽っていたことや、別の男性との関係についても証言が出ています。
● 東大生の交際相手から教えられた「設定」
中村容疑者が「ルーブル」とは別の吉原の高級ソープ店で働いていた当時、交流があった現役ソープ嬢のAさんは、彼女について次のように話します。
「彼女は私立大学の出身なのに、『現役東大生』を名乗っていました。高学歴のソープ嬢は、それだけで付加価値が生まれますし、客もつきやすくなります。彼女には人気がありました」
Aさんによると、中村容疑者は当時、現役東大生という設定について、交際相手だった東大生の男性から教えられたと話していたそうです。
「彼氏が東大生だったのは本当のようです。彼から学生証を借りて加工し、SNSに掲載していました。ソープの客には、学歴を過度に重視する『学歴厨』(学歴を重視する傾向が強い人物を指す俗語)もいます。そうした客との会話にも対応できるよう、彼氏から東大のキャンパス内の様子などを熱心に聞いていたと話していました」
実際に、中村容疑者が東大生を名乗っていた当時、勤務先のプロフィールには、次のような紹介文が掲載されていました。
〈なんと! 最高学府である東○大学の現役大学生が吉原○○入店です!!! 天が二物以上を与えてしまった美人さん。子供の頃からずっと勉強漬けだった女の子が20歳過ぎてからエッチを覚え、勉強と同じ位エッチが大好きになってしまいました〉
学歴を売りにすることで、ほかの女性との差別化を図っていた様子がうかがえます。
● 「パパ活」のような形で金銭的な支援を受けていた男性
中村容疑者は今年6月の取材で、「東大生というのは設定だった」と認めています。
また、当時の男性との関係についても、次のように説明していたといいます。
「彼氏というより、実はパパ活的に融資を受けて付き合った男性でした。でも、その設定を考えて学生証を貸してくれたりしていた関係で、私が店で稼いだお金の一部は彼に渡してもいました」
中村容疑者自身が東大生という設定だったことを認めていた一方、当時の説明からは、その行為をどのように受け止めていたのかが見えにくい部分もあります。
では、彼女はこれまでどのような経緯をたどり、今回の逮捕に至ったのでしょうか。
中村容疑者の逮捕に安堵しているのは、吉原のソープ店経営者だけではありません。実際に働く女性たちからも、厳しい声が上がっています。
吉原の大衆ソープ店で働く40代の女性Bさんは、憤りを隠しません。
「ソープは確かに身を削る仕事で、感情労働にほかなりません。中村容疑者も、働くなかでたくさん傷ついたのだと思います。でも、私をはじめ、この街でしか働けず、ここでしかお金を稼げない女性は大勢います。
そうした女性たちの事情を考えず、自分の利益のために店を潰そうとしたことは許せません。個人的な報復や復讐心によって、風俗で働く女性たちの生活や経済基盤を脅かさないでほしいです」
中村容疑者が「ルーブル」を告発した背景には、本人が語る人種に関する不満や、退職をめぐる経緯があったとされています。一方で、今回の逮捕では、別の店舗の店長に対する金銭要求が問題となっています。
個人的な不満や報復感情があったとしても、それが他者への恐喝を正当化するわけではありません。今回の事件は、個人間のトラブルにとどまらず、性風俗業界で働く女性たちの生活や雇用環境にも影響を及ぼす問題として、関係者の間で受け止められています。
参照:「風俗なんてなくなればいい」“ソープ店潰し”強烈な怨恨と“東大卒ニセ経歴時代”
