鹿児島県鹿屋市(かのやし)でスナック「リアン(Lien)」を経営していた大隅さつきさん(当時49歳)が殺害された事件は、発生から2カ月以上が経過した現在も、犯人の逮捕には至っていません。
7月28日、大隅さんの遺体が自宅で発見されました。しかし、事件の背景や犯人につながる手がかりなど、いまだ多くの謎が残されています。
● 数日間連絡が取れず、実の姉が自宅を訪問
大隅さんと数日間にわたって連絡が取れなかったことから、身を案じた実の姉が自宅を訪ねました。大隅さんは鹿屋市笠之原町の住宅で一人暮らしをしていました。
玄関には鍵がかかっていましたが、姉が中に入ると、寝室で大隅さんが倒れているのを発見しました。呼びかけても反応はなく、息をしていないように見えたため、すぐに119番通報しました。
その後、現場に駆けつけた救急隊員や医師によって、大隅さんの死亡が確認され、警察による捜査へと引き継がれました。
発見当時、室内には激しく争った形跡や、何者かが侵入して物色したような目立った跡は見当たりませんでした。衣服の乱れや、刃物などによる外傷も一見しただけでは確認できなかったといいます。
こうした状況から、発見した親族も、当初は事件性を疑うより、突然の病死や孤独死の可能性を考えたとしても不思議ではありません。
近隣住民も、当時の様子について取材に対し、次のように証言しています。
「特に何も悲鳴が聞こえるわけでもないし」
物音についても、記者から質問されると「物音もするわけでもないし」と答えています。
しかし、捜査の結果、大隅さんの死因は、鼻や口を塞がれたことによる窒息死と判明しました。
首の皮下組織や臓器などを詳しく調べる顕微鏡検査には、数週間から1カ月程度を要したとされています。こうした鑑定に時間がかかったことが、他殺と判断するまでの期間に影響したとみられます。
一方で、事件を殺人と断定し、捜査本部を設置するまでに約1カ月を要した点については、捜査の進展が遅かったのではないかという印象も残ります。
● 自宅から現金500万円が盗まれた過去
大隅さんの自宅玄関前には、防犯カメラが設置されていました。また、知人らへの取材では、室内にもカメラが設置されていたとの情報が出ています。
自宅に防犯カメラを設置するきっかけとなったのは、過去に発生した窃盗被害だったといいます。
常連客は、当時の状況について次のように証言しています。
「自宅で500万円盗まれたと。ピンポイントで500万円だけ盗まれて、ほかのところには手をつけなかったと。お金があることを知っている人間。20万円とかもあちこち置いていたけど、そのお金は手をつけずに500万円だけを取っていったから、知っている人間」
この証言によると、室内にはほかにも現金が置かれていたものの、盗まれたのは500万円だけだったといいます。そして、この窃盗事件の犯人は、現在も逮捕されていないとされています。
捜査関係者によると、大隅さんは3年前、自宅に保管していた300万円以上の現金を盗まれたとして被害届を提出していました。また、警察には複数回相談していたことも分かっています。
過去の窃盗事件と今回の殺人事件に関連があるのかは、現時点では明らかになっていません。しかし、多額の現金が自宅にあることを知る人物がいた可能性や、過去の被害をめぐる人間関係については、事件の背景を考えるうえで気になる点です。
もし過去の事件と今回の事件に何らかのつながりがあるなら、早い段階で犯人を特定できていれば、今回の事件を防げた可能性はなかったのでしょうか。
もちろん、両事件の関連性が確認されたわけではありません。ただ、未解決の窃盗事件が残した疑問は、今回の殺人事件をめぐる捜査においても重要な意味を持つ可能性があります。
● 6〜7年前にスナック「リアン」を開業
大隅さんは東京から故郷の鹿児島へ戻り、6〜7年前にスナック「リアン(Lien)」を開業しました。
明るく天真爛漫な人柄で、歌も上手だったという大隅さん。店には多くの常連客が集まり、地域で親しまれる繁盛店となっていました。
提供していたのは、お酒だけではありません。団体客の予約が入れば自慢の手料理やおつまみを振る舞い、常連客のために餅を焼くこともあったといいます。
大隅さん自身が毎晩カウンターに立ち、客との交流を大切にしながら店を切り盛りしていました。単にお酒を提供する場所というだけでなく、訪れる人たちが気軽に集まれる、アットホームな雰囲気の店だったことがうかがえます。
事件が起きたとされる日の夜も、店は普段どおり営業していました。午前1時半ごろに閉店した後、大隅さんは常連客と一緒に運転代行の車に乗り、自宅へ帰ったといいます。
また、前年の誕生日には、たくさんの花が届いていたそうです。多くの人に慕われていた様子は、本人のものとみられるSNSの投稿からもうかがえます。
「こんな幸せがずっと続きますように。これからも皆様に愛されるお店、人間になれるよう日々頑張っていきたいと思います」
店を訪れる客や地域の人々とのつながりを大切にしていた大隅さん。その日常が突然奪われたことに、関係者の間では衝撃が広がっています。
● 金銭トラブルと事件の関係は?
大隅さんは交友関係が広かった一方、複数のトラブルを抱えたことも分かっています。
近くの店で働く従業員は、大隅さんをめぐる金銭問題について、次のように話しています。
「金銭のトラブルはよく聞いていた。お金を貸していたという話も聞いていた」
過去の窃盗被害に加え、金銭の貸し借りをめぐるトラブルもあったとされる大隅さん。こうした問題が今回の事件につながった可能性はあるのでしょうか。
警察はこれまでにのべ約三千人の捜査員を投入し、約50人態勢で捜査を続けています。定例会見では「決してなすすべがなくてお手上げ状態ではない」と強調しており、捜査が行き詰まっているわけではないとの姿勢を示しています。
事件発生から2カ月以上が経過しても、犯人逮捕には至っていません。過去の窃盗被害や金銭トラブル、事件当日の行動など、さまざまな情報をどこまで結びつけられるかが、解決への鍵となる可能性があります。
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