「おれは男だ!」 1971年製作 日本
 

ぼくが中学生になったばかりの頃、毎週楽しみにしていたドラマがありました。森田健作さん主演の青春学園ドラマ『おれは男だ!』です。

その『おれは男だ!』が「DMM TV」で視聴できると知り、さっそく第1話を見てみました。当時のように夢中になれるかは分かりませんでしたが、懐かしさに誘われて、もう一度見てみようと思ったのです。

実際に見てみると、想像していた以上にコメディー色が強く、今見ても十分に楽しめる作品でした。一つひとつのエピソードにさまざまなアイデアが詰め込まれていて、まるで漫画を見ているような面白さがあります。そう思っていたところ、原作は津雲むつみさんの少女漫画だと知り、なるほどと納得しました。

物語は、ウーマン・パワーに圧倒される男子たちの奮闘を、コミカルに描いています。現在でも「スポ根青春ドラマの金字塔」と評される作品です。

● 「剣道部」を立ち上げ、孤軍奮闘
舞台となる青葉高校は、かつて女子校だった名残から、生徒の5分の4を女子が占めています。まさに圧倒的な「女性優位」の学校です。

そんな環境で肩身の狭い思いをしている男子生徒たちを救い、男としてのプライドを取り戻すために立ち上がるのが、転校生の小林弘二(森田健作さん)です。弘二は「剣道部」を新たに立ち上げ、女子たちを相手に孤軍奮闘します。その姿こそが、このドラマの大きな魅力です。

汗を流しながら竹刀を振る森田健作さんの姿は、今見ても胸を打ちます。爽やかなのに、とにかく熱い。その熱血ぶりが、いかにも青春ドラマらしくて印象的です。

そして、森田健作さんが歌う主題歌「さらば涙と言おう」を耳にすると、たちまち中学生になったばかりの自分に戻ったような気持ちになります。ドラマの映像だけでなく、歌もまた当時の記憶を呼び起こしてくれます。

第1話には、剣道部を立ち上げた弘二が、別の高校を訪ね、剣道の防具を譲ってもらえないかと尋ねる場面があります。

その高校の体育館で弘二が目にするのが、当時大人気だったフォーリーブスの4人です。歌の練習という名目で、突然4人が歌い始めます。あまりにも唐突な登場なので、「なぜここでフォーリーブスが?」と思ってしまいますが、どこかシュールで、無理やりドラマに登場させた感じも含めて面白い場面です。

ウーマン・パワーの代表格であり、弘二にとって永遠のライバルであると同時に、憧れの存在でもある吉川操(早瀬久美さん)との掛け合いも懐かしく感じました。

お互いを強く意識しているのに、なかなか素直になれません。顔を合わせれば「男だ!」「女よ!」と言い合い、意地を張り合う2人です。

今の感覚から見ると、ずいぶん不器用な関係にも見えます。しかし、そこには昭和の青春ドラマならではの、もどかしくて純粋な恋愛模様があります。そんな2人のやり取りを見ていると、こちらまで当時の青春を思い出すような、くすぐったい気持ちになります。

また、先日亡くなった森本レオさんも出演しています。吉川操の姉が勤める「モードサロン レオ」のマスター役です。とても若々しく、こちらも懐かしく感じました。

● バンコクの空港に約500人の現地ファン
ところで、『おれは男だ!』は日本だけでなく、タイでも大きな人気を集めたそうです。タイでは社会現象になるほどの大ヒットとなり、放送から50年以上が経った現在でも根強い人気を誇っています。

タイでは『KENDO(剣道)』というタイトルで放送され、主演の森田健作さんは、現地でアイドル並みの知名度を得たといいます。

ドラマの大ヒットを受け、1972年、森田健作さんがテレビ番組の招きで初めてタイを訪れた際には、バンコクの空港に約500人もの現地ファンが殺到しました。若い女性を中心としたファンが押し寄せ、空港は大混乱になったそうです。

あまりの熱狂ぶりに森田さんは自由に外出することもできず、4日間にわたってホテルに缶詰めになったという逸話も残っています。

それから半世紀以上が経った現在でも、タイ国内では当時のレコードやポスター、DVDなどが出回っているそうです。

こうした長年にわたる人気と信頼関係が縁となり、森田健作さんはタイの現地大学、PIM(パンヤピワット経営大学)の客員教授に就任しました。現在も、日タイ間の若者交流やビジネス、農産物のトップセールスなど、さまざまな分野でその影響力が生かされているとのことです。

中学生の頃、毎週楽しみにしていた『おれは男だ!』。半世紀以上の時を経て、あらためて見返してみると、当時とは違った面白さが見えてきました。

もちろん、今の時代の感覚で見ると驚くような場面もあります。それでも、熱血漢の弘二、強烈な個性を持つ女子たち、そして昭和ならではの不器用な青春模様には、今見ても心を動かされるものがあります。

懐かしいドラマを見直すことで、作品だけでなく、当時の自分自身までよみがえってくる。そんなところにも、昔のドラマをもう一度見る楽しさがあるのかもしれません。

参照:森田健作、タイで客員教授に バンコクの大学PIMで任命式!現地では50年来の大人気