ゾウ・ジェンハオ(鄒鎮豪)は、イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で博士課程に在籍していた中国人留学生です。複数の女性に薬物を摂取させたうえで性的暴行を加えたとして有罪判決を受け、最低24年間の服役を伴う終身刑を言い渡されました。
裁判では、2019年9月から2023年5月にかけて、ロンドンで3人、中国で7人、合わせて10人の女性に薬物を使用した性的暴行を加えたと認定されました。
高い学歴や裕福な家庭背景、整った容姿など、社会的に好印象を与えやすい要素を持っていたとされる鄒ですが、その裏では女性を標的にした犯罪を繰り返していました。表面的な人物像と、明らかになった犯行の深刻さとの間にある落差が、事件への関心を集めています。
● 裕福な家庭と「完璧な人物像」を利用した犯行
鄒は、裕福な家庭に生まれた博士課程の学生という立場を利用し、女性からの信頼を得ていました。
中国系のSNSやマッチングアプリを通じて女性と知り合い、「数学の勉強会」などの自然な誘い文句を使って自宅に招いています。住居には家賃約80万円の高級タワーマンションの39階にある部屋も含まれており、こうした環境を利用して被害者を誘い出していたと報じられています。
犯行に至るまでの過程には、相手に警戒心を抱かせないよう接近し、信頼関係を利用する計画性がありました。
鄒の家庭背景については、父親が中国共産党の幹部、あるいは国有企業の要職に就いているといった報道が出ています。また、複数の不動産を所有する富裕層の家庭で育ったとも伝えられています。母親は中国国内で教師として働いています。
鄒は中国で「富二代」と呼ばれる富裕層の二世として知られており、両親から多額の経済的支援を受けています。裕福な家庭環境と海外での高等教育という経歴が、周囲からの信頼を得るうえで作用しています。
● 飲み物に薬物を混入させ、女性を襲う
鄒の犯行では、飲み物に薬物を混入させ、女性の意識や身体の自由を奪う手口が用いられていいます。
現地のジャーナリストは、次のように説明しています。
「手口は極めて悪質で、飲み物に薬物を混入させて相手を眠らせ、その隙に襲うというものでした。中国系SNSやマッチングアプリを使って多数の女性と会い、食事会や『数学の勉強』といったもっともらしい理由でターゲットを誘い出していたとされています。飲み物に混入していたのは『ブタンジオール』という化学物質で、女性を抵抗できない状態に陥らせたうえで性的暴行を加えていたことが明らかになっています」
ブタンジオールは、体内で代謝されることで中枢神経系に影響を及ぼす化学物質です。摂取量や個人差によっては、強い眠気や意識障害などを引き起こす可能性があります。重篤な場合には呼吸抑制などの危険性もあり、本人の同意なく飲み物に混入させて摂取させる行為は、生命に関わる重大な危険を伴います。
意識が低下した状態では、自ら危険を回避したり、周囲に助けを求めたりすることが困難になります。さらに、嘔吐した場合には誤嚥や窒息につながるおそれもあります。
薬物を利用して相手の抵抗を封じたうえで性的暴行に及ぶ行為は、被害者の身体だけでなく、生命そのものを脅かす深刻な犯罪です。
● 押収された映像と「時間停止もの」への言及
英紙『ガーディアン』の報道によると、捜査の過程で押収された鄒のスマートフォンからは、女性を盗撮した動画が大量に発見されました。その数は1,270本に上り、そのうち58本には女性に性的暴行を加える様子が記録されています。
鄒は、動画に記録された行為について、「女性たちは強姦のロールプレイを撮影することに同意していた」と主張したと報じられています。しかし、検察側は映像の内容などを証拠として示し、女性たちが同意していたという主張を退けました。
動画に映っていた被害者の中には、ろれつが回っていない様子や、苦痛・動揺を示しているように見える人もいます。こうした状況は、薬物の影響や本人の意思に反する行為があった可能性を示す重要な証拠として扱われました。
また、鄒は公判中、視聴していたポルノ動画のジャンルについて質問を受けた際、「時間停止もの」が好きだと答えたと報じられています。さらに、弁護人から眠っている女性が登場する作品について尋ねられると、「それが一番好きです」と答えています。
これらの発言は、事件で問題となった性的嗜好や犯行との関連を考えるうえで、裁判で取り上げられた内容の一部です。ただし、本人の性的嗜好に関する発言だけで、具体的な犯罪行為のすべてを説明できるわけではありません。
● イギリスで「史上最悪のレイプ犯」と報じられた背景
鄒の事件は、被害者の数や犯行の継続期間、複数の国にまたがる捜査の必要性などから、イギリス国内でも大きく報じられました。
現地のジャーナリストは、事件について次のように語っています。
「裕福で容姿に優れ、表向きは穏やかな人物と見られていました。しかし、実際には多数の被害者を生み出したとされ、犯行の態様も極めて悪質でした。そのため、英国メディアの一部は彼を『史上最悪のレイプ犯』と表現しました。判決後も警察が捜査を続けているのは、被害の全容が明らかになっていないためです」
裁判で認定された被害者は10人です。一方、押収された映像データなどをもとに、実際の被害者は少なくとも60人以上に上る可能性があると報じられています。
事件の被害はイギリス国内にとどまらず、中国など複数の国に及んでいます。被害者が各地に分散している場合、証拠の収集や身元の特定、被害者への聞き取りなどに時間がかかるため、事件の全容を解明するには国際的な連携が必要になります。
● 国境を越えて続く捜査と被害の全容解明
2026年9月時点の報道では、ロンドン警視庁が新たに身元を特定した被害者に関する証拠を検察当局に提出し、中国当局とも連携しながら捜査を進めています。
今後の捜査では、未確認の被害者の特定や証拠の精査、各国の捜査機関との情報共有などが重要になります。すでに裁判で認定された犯罪に加え、さらなる被害が確認されるかどうかも注目される点です。
ただし、追加の起訴や被害者数の確定については、捜査機関の正式な発表や裁判上の認定を踏まえて判断する必要があります。現時点で報じられている推定値と、司法手続きによって確定した事実を混同しないことが重要と思われます。
参照:家賃80万の高級タワマンを“狩り場”に…「英国史上最悪のレイプ犯」中国人セレブ留学生
《英国史上最悪の性犯罪者》「一番好きなのは“時間停止モノ”」被害動画1270本
