「藁にもすがる獣たち」 2018年製作 韓国 原題:지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들/BEASTS CLAWING AT STRAWS

 

江戸川乱歩賞作家・曽根圭介氏の傑作犯罪小説を原作とする映画『藁にもすがる獣たち』は、大金の入ったバッグを巡り、欲望に突き動かされた人間たちが騙し合いを繰り広げるノンストップ・サスペンスです。

失踪した恋人の借金を背負う男や、DVに苦しむ女など、人生の崖っぷちに追い込まれた人々。彼らは大金の入ったバッグを巡って互いに騙し合い、やがて欲望をむき出しにしながら「獣」へと変貌していきます。予測不能な展開が続く、群像サスペンスです。

事業に失敗し、現在はアルバイトで必死に生計を立てているジュンマン。家庭では妻と姑の板挟みになり、職場では年下のオーナーから雑に扱われるなど、鬱屈した日々を送っています。

そんなある日、勤務中のジュンマンはロッカーの中に大きなバッグが置かれているのを見つけます。誰かの忘れ物だと思いながらも、チャックを開けて中を確認すると、そこには大量の紙幣が詰め込まれていました。総額はなんと10億ウォン、日本円にして約1億円にも及ぶ大金です。

「もし、それが自分の目の前に現れたら、あなたはどうしますか?」

まるでそんな問いを突きつけられているかのように、物語は冒頭から観る者を引き込んでいきます。

大金を手に入れようとする人々の思惑が交錯するなか、次々と殺人が起こり、物語は予測のつかない方向へと展開していきます。人間の欲望や残酷さを描きながらも、随所にユーモアが織り込まれているため、重苦しさだけが残る作品ではありません。残虐な描写もありますが、ユーモアとのバランスによって、物語を最後まで引きずるような印象にはなりませんでした。

登場人物たちはそれぞれ欲望に振り回されていきますが、なかでも印象に残ったのが、チョン・ドヨン演じるヨンヒです。

ヨンヒは、高級風俗店を経営する妖艶なマダムとして表向きは振る舞っています。しかし、その裏では裏社会の人間ともつながりを持ち、自らの手を汚すこともいとわない、冷酷で計算高い女性です。

男性には色気を武器に近づき、女性には見せかけの優しさを見せます。けれども、その行動の根底にあるのは、すべて金銭への執着です。欲望に翻弄され、右往左往するほかの登場人物たちを尻目に、ヨンヒは圧倒的な知略と冷徹さで周囲を翻弄し、支配していきます。まさに、この物語における「最強の捕食者」ともいえる存在です。

一緒に鑑賞した母と、遊びに来ていた従妹も、映画を見終わると「おもしろかったねぇ」と口をそろえていました。最近、母はドラマなどを見ていると眠ってしまうことがよくあります。しかし、今回は最後まで物語に引き込まれていたようです。それだけ、作品の展開に夢中になれたのだと思います。

今回は、2018年製作のキム・ヨンフン監督による韓国版を鑑賞しましたが、日本でも新たな映画化が進んでいます。城定秀夫監督、小林靖子脚本による日本版が、9月25日に劇場公開される予定です。韓国版は本国で興行収入ランキングで初登場1位を記録したといいますが、果たして日本版は日本でのヒットにつながるのでしょうか。韓国版とはまた異なる作品として、どのように描かれるのか、公開が楽しみです。