中国・北京で開催されたスポーツ大会で、オーストラリアの女性アスリートが競技中に下痢による便漏れを起こしながらもレースを続行し、優勝しました。

「最後まで諦めずに走り切った」といえば、精神力の強さを称賛する話にも聞こえます。しかし、今回のケースは単純に根性論だけで語れるものではありません。衛生面での問題に加え、ほかの選手や大会運営にも影響を及ぼす事態となったためです。

この騒動を受け、大会側は対応の不備を認めて謝罪。さらに、同様の事態を防ぐため、新たなルールと手順を導入することになりました。

● 便漏れを起こしながらもレースを続行し、優勝
問題が起きたのは、9月12日に中国・北京で開催された「HYROX(ハイロックス)」の大会です。

HYROXは、1キロのランニングと1種目のワークアウトを交互に8回繰り返す屋内型のフィットネスレースです。ドイツで誕生し、現在では日本を含む世界各地で大会が開催されるなど、近年急速に競技人口を増やしています。

この大会で注目を集めたのが、女子の世界記録を持つオーストラリアのジョアンナ・ヴィエトリク選手です。

ヴィエトリク選手は競技の途中で下痢による便漏れを起こしましたが、レースを離脱せず、そのまま競技を続けました。そして最終的には優勝を果たしました。

競技中に便が脚に付着した状態で走り続ける様子はSNSで拡散され、たちまち大きな議論を呼びました。

SNSでは、「棄権すべきだった」「なぜ続行させたのか」「衛生面や健康面で危険ではないか」といった批判が相次ぎました。選手本人だけでなく、状況を把握しながら競技を続行させた大会運営側にも厳しい目が向けられました。

● 「やるなら限界まで。勝ちは勝ち」と投稿
ヴィエトリク選手は競技後、自身がベッドに横たわっているセルフィーをInstagramに投稿しました。その投稿には、「やるなら限界まで。勝ちは勝ち」というキャプションが添えられていました。

しかし、この投稿も大きな批判を招くことになります。

「ほかの競技者への配慮を欠いている」といった声が上がり、SNS上では選手に対する批判が広がりました。その後、ヴィエトリク選手は投稿を削除し、謝罪しました。

選手はInstagramで、レース開始時点では健康で体調も良く、途中で体調を崩すことを予想できなかったと説明しています。

その一方で、体調不良が起きた後もレースを続けたことについては後悔しているとし、「皆さまに不快な思いをさせ、混乱を招いてしまったことを深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。

騒動が広がるにつれ、SNS上では選手への誹謗中傷や個人攻撃も目立つようになりました。これを受け、コーチらが過剰な批判を控え、「建設的な議論」をするよう呼びかける事態にも発展しています。

● 問題視された衛生面のリスク
今回の騒動で特に深刻な問題として指摘されたのが、衛生面への影響です。

便や血液、嘔吐物などの体液には、細菌や病原体が含まれている可能性があります。そのため、ほかの選手や観客、スタッフが接触すれば、健康上のリスクにつながるおそれがあります。

特にHYROXは、マラソンのような屋外競技とは異なり、屋内の会場でカーペットや器具、設備を共有しながら競技します。

そのため、競技中に排泄物がコースや設備を汚染すれば、後から同じ場所や器具を使用する選手にも影響が及ぶ可能性があります。

実際、大会主催者は今回の件を受け、該当するコースの設備やカーペットをすべて撤去し、交換する対応を取りました。

● 大会側も対応の不備を認める
今回の問題をさらに複雑にしたのが、当時の大会規則に排泄物に関する明確な規定が存在しなかったことです。

当時のルールには、ゴミのポイ捨てや唾吐きに対するペナルティは設けられていました。しかし、競技中に血液や嘔吐物、尿、便などが発生した場合について、具体的に定めた規定はありませんでした。

そのため、大会側が選手の状況を把握しながらも、レースを直ちに中断させなかったことについて、「不適切だった」として公式に謝罪する事態となりました。

HYROXの共同創業者であるモリッツ・フュルステ氏も声明を発表し、今回の対応について謝罪しています。

「直接的、あるいは間接的に影響を受けたすべての方々、そして私たちの対応が不適切だったと感じたすべての方々に謝罪いたします」

フュルステ氏はこのように述べたうえで、HYROXがレースを直ちに中断しなかったことは「過ち」だったと認めました。

また、同様の事態を繰り返さないため、新たなルールと手順を導入したことも明らかにしました。

● 排泄物などを対象とした新ルールを導入
今回の騒動を受け、HYROXは競技規則を改定しました。

新たに設けられた規定では、血液、嘔吐物、尿、便などによって健康上の問題や汚染のリスクが生じる場合、レースディレクターの判断で選手を競技から外し、未完走扱いにできるとしています。

今回の一件は、選手が最後まで競技を続けたことだけでなく、体調不良が発生した際に大会運営側がどの時点で競技を止めるべきなのかという問題も浮き彫りにしました。

選手本人の意思を尊重することと、ほかの競技者やスタッフの安全・衛生を守ること。その両方をどう両立させるのかが問われる形となり、結果として大会のルールそのものが見直されることになりました。

参照:便漏れしながらスポーツ競技を続行した豪選手に批判の声。主催者が謝罪、ルール改正へ