「Tシャツが乾くまで」 2026年製作 日本
2026年7月期に放送された蒼井優主演のドラマ『Tシャツが乾くまで』が、9月11日(金)に最終話となる第10話を迎えました。本作は、とある事故をきっかけに幸せな日常を失った2組の夫婦を主人公に、「喪失と再生」を描いた物語です。
毎週楽しみに見ていたドラマですが、最後まで見終えても、どうしても腑に落ちなかった設定があります。それが、咲子(蒼井優)の「バツ4」です。
咲子は4回の離婚を経験した女性という設定ですが、正直なところ、そのキャラクターからは、離婚を4回も繰り返してきた女性のイメージがほとんど感じられませんでした。もちろん、そこに意外性を持たせる狙いがあったのだとは思います。しかし、物語を見ている限りでは、後から付け加えられた設定のようにも感じてしまいました。
ネット記事では、この「バツ4」という設定について、「人間の愛おしいわけ分からなさ」や、夫婦が抱える「本当の恐怖」を描くために必要不可欠なフックだった、と説明されていました。なるほどと思う部分がないわけではありませんが、果たして本当にそこまで必要な設定だったのでしょうか。
第9話には、咲子が歴代の旧姓の免許証を並べるシーンが登場します。そこに写る彼女の姿は、ナチュラル系、バンギャ風、清楚系と、相手の好みに合わせるように毎回別人のように変化していました。
これは、「素の自分では愛される自信がない」という咲子の強い不安や、形だけでも「家族」を得たいと願ってしまう心理的な歪みを表現したものだそうです。その意図は理解できます。ただ、それでも「4回」という回数には、やはり多すぎるのではないかという違和感が残りました。
さらに、互いの重大な秘密――充(松山ケンイチ)の失踪癖と、咲子のバツ4――を知ったことで、充は咲子を不安にさせまいと、それまで以上に優しくなり、こまめに連絡を取るようになります。
この展開にも、どこか乗り切れない自分がいました。とはいえ、出演している俳優たちがみなうまいので、設定や展開に多少の不自然さがあっても、白けてしまうほどではありません。結局、最後まで見続けることになりました。
そして最終話です。
離婚を選んだ咲子と充が、中庭で洗濯物を干しながら、離れ離れになる時間を少しでも延ばそうと、シーツに霧吹きで水を吹きかけるシーンが描かれました。
ところが、2人とも同じようにシーツへ霧吹きを吹きかけ、乾く時間を延ばそうとしている姿を見ていると、切ないというより、思わず笑ってしまいました。
「全部乾いたら行くね」という言葉も印象的でしたが、そこまでして別れの時間を引き延ばす必要があるのだろうか、と感じてしまいます。そこまで「大切な人と一緒にいたい」と思い合っている2人が、それでも別々に暮らさなければならない必然性が、僕には最後まで十分に伝わってきませんでした。
そもそも、このドラマに登場する2組の夫婦は、どこか似た者同士です。そして、2組ともかなり突拍子もない設定や展開を抱えています。そのため、僕はドラマを見ながら何度も笑ってしまいました。
考えてみれば、2組ともビジュアル的には人並み以上に魅力的な夫婦です。それなのに、それぞれがコインランドリーで知り合い、そこで会話を交わすだけで、それ以上の関係には発展しない。こうした展開も、現実というよりは、かなりメルヘンチックで不思議な世界です。
もちろん、そこに本作ならではの魅力があったのも確かです。ただ、僕にとって『Tシャツが乾くまで』は、「喪失と再生」を描いた夫婦ドラマであると同時に、かなり笑えるコメディドラマでもありました。
