「ラストマイル」 2024年製作 日本
 

塚原あゆ子監督の映画『ラストマイル』は、巨大物流倉庫を舞台に、次々と発生する爆破事件の謎を追いながら、現代社会を支える物流システムの裏側に潜む問題を描いた作品です。

物語の舞台となるのは、ブラックフライデー前夜の巨大物流センターです。大手ECサイトで注文された商品の配送段ボールが突然爆発し、その後も同様の事件が相次ぎます。新任センター長のエレナ(満島ひかり)らは、事件の真相を追うことになりますが、そこには私たちが普段意識することのない巨大な物流システムと、そこに関わる人々のさまざまな思惑が絡んでいました。

劇中で重要なキーワードとなるのが「ブラックフライデー」です。Amazonなどで耳にする機会はありましたが、改めて調べてみると、もともとはアメリカ発祥の大規模な年末セールで、11月の第4金曜日に開催されるのが一般的です。多くの小売店が黒字になることから、この名前が付いたとされています。現在では日本でも、11月中旬から下旬にかけて行われる大規模なセールとして定着しています。

『ラストマイル』では、このブラックフライデーが1年で最も多くの荷物が動く時期として描かれています。物流現場にとっては、まさに「止めることのできない戦場」です。そんな極限状態の物流網に紛れ込むようにして、爆弾を仕込んだ段ボールが次々と発送されます。日常生活を支える便利な物流システムが、事件を動かす舞台へと一変していく展開は、本作ならではの緊張感があります。

また、作品を観ていて印象に残ったのが、火野正平さんの出演です。久しぶりにスクリーンで姿を見たこともあり、懐かしさを感じました。火野さんは、映画が公開された2024年8月から約3カ月後に亡くなっており、本作が映画としての遺作となりました。

劇中では、運送会社「羊急便」の委託ドライバー、佐野昭(さの・あきら)を演じています。大量の荷物を単なる「数字」や「効率」として扱う巨大な物流システムに対して、荷物の一つひとつの先には、それを待っている人の生活があることを感じさせる人物です。佐野の存在は、本作が描こうとしている「物流の向こう側にいる人間」への視点を象徴していたように思います。

さらに本作には、満島ひかりさんや火野正平さんをはじめ、多くの有名俳優が出演しています。正直なところ、最初は「これほど多くの俳優を出演させる必要があるのだろうか」と思ってしまいました。

しかし、そこには明確な理由がありました。

『ラストマイル』は、ドラマ『アンナチュラル』(2018年)と『MIU404』(2020年)と同じ世界線を共有している作品です。そのため、両作品に登場したキャラクターたちが、当時と同じ役柄や設定を引き継いで登場します。単なるお楽しみ的なゲスト出演ではなく、事件の解決に関わる重要な役割を担っている人物もいます。

両作品を観ていた人にとっては、見覚えのある人物が登場するたびに楽しめる仕掛けになっています。私自身は、こうしたつながりを知らずに観ていたため、後から知って「なるほど、そういうことだったのか」と納得しました。

物語は最後まで一定の緊張感と面白さを保ったまま進んでいくため、気がつけばあっという間に観終わっていました。テンポよく展開するので、途中で飽きることもありませんでした。

ただ、観終わった直後になって、「あれ? 犯人は、そもそもどのような方法で爆発を仕掛けたのだったか」「ロッカーに書かれていた文字には、どんな意味があったのだろう」と、いくつか疑問が残っていることに気づきました。

結局、後からネットで調べてみて納得したのですが、細かな伏線や設定を追いながら観る必要がある作品なのかもしれません。

スピード感のあるストーリーを楽しむだけでも十分面白い一方で、細部まで注意して観ることで、より深く作品を理解できる映画だと思います。『アンナチュラル』や『MIU404』とのつながりを知ってから観ると、さらに楽しめる作品ではないでしょうか。