日本でも人気の高い韓国の観光地、済州島(チェジュ島)。韓国ドラマの舞台としてもたびたび登場する場所で、「おつかれさま」「サムダルリへようこそ」「私たちのブルース」「オールイン 運命の愛」など、済州島を舞台にした作品は数多くあります。
そんな済州島で、失踪事件の捜査を担当していた警察官が逮捕される事態となり、韓国国内で大きな波紋が広がっています。
● 失踪事件を担当した警察官を逮捕
問題となっているのは、済州西部警察署に勤務していた34歳の男性警察官、プ警長(日本の巡査長に相当)です。プ警長は業務を増やさないために、受理した失踪届を捜査せずに処理していました。行方不明者の捜索を独断で打ち切ったうえ、実際には所在を確認していないにもかかわらず、家族に虚偽の報告をしていた疑いが持たれています。
その後、捜索が打ち切られた女性が遺体で発見されたことで、ずさんな捜査対応が明らかになりました。

行方不明になっていたのは、韓国人女性のチャン・ミランさん(37)です。チャンさんの遺体は24日、済州島のヤシ畑で発見されました。
地元警察は、山間部を含む広い範囲を捜索した結果、遺体を発見したと説明しています。しかし、この捜査をめぐって、当初担当していたプ警長が逮捕される事態となりました。
チャンさんは済州島の宿泊施設に長期滞在していました。5月12日の夜に施設を出たあと、行方が分からなくなりました。
3日後の5月15日、交際相手が警察に行方不明届を提出。当時、当直勤務に就いていたプ警長が対応しました。
プ警長は、チャンさんの携帯電話の位置情報をもとに周辺を捜索しました。しかし、およそ2時間半後、交際相手に対して「本人と連絡が取れたが、居場所は教えないでほしいと言われた」と報告。そのうえで、捜索していた警察官を撤収させ、捜査を打ち切りました。
ところが、その後もチャンさんの行方は分からないままでした。
先月、家族から改めて通報を受けた警察が再捜索したところ、24日にチャンさんの遺体を発見。宿泊施設からわずか400メートルほどしか離れていない場所でした。
行方不明になってから104日が経過していました。
検視の結果、チャンさんは行方不明届が提出される前に、すでに死亡していたとみられています。遺書は見つかっていませんが、現在のところ他殺の可能性は低いとみられています。
● 60代男性の捜査でも同様の疑惑
さらに、プ警長をめぐっては、別の行方不明事件でも捜査を打ち切っていた疑いが浮上しています。
プ警長は、60代男性の行方不明届を受けた際にも、家族に対して虚偽の報告をし、捜索を終了したとされています。
また、チャンさんの事件では、警察内部の行方不明者管理システムに「交通事故の死傷者」という別のコードを入力し、チャンさんの資料を行方不明者の管理対象から削除していたことも分かっています。
こうした行為を受け、プ警長は職務を放棄した疑いなどで逮捕されました。
地元メディアによりますと、済州島ではこのほかにも、行方不明者が相次いで遺体で発見されています。
8月12日に行方不明届が出された60代の男性は、8月24日に渓谷の近くで遺体となって発見されました。また、8月22日に行方不明届が提出された70代の男性も、翌23日に海上で遺体で発見されています。
ただし、警察はこの2人について、今回問題となっているプ警長の事件とは無関係とみています。
それでも、済州島では7月から8月にかけて、短期間のうちに4人の遺体が発見されています。
観光地として知られる済州島で、これだけ短い期間に複数の遺体が見つかっていることに、不安を感じる人がいても不思議ではありません。
● プ警長が担当した298件を再調査
今回の問題を受け、警察はプ警長が約1年半にわたって担当した失踪事件298件について、再調査を進めています。
その結果、本人と連絡を取らないまま所在を確認したかのように処理していた事件が10件、死亡など別の理由を入力して処理していたケースが15件確認されています。
約1年半で298件という件数は非常に多く、プ警長が抱えていた業務量の大きさも今回の問題の背景として指摘されています。
単純計算すると、約1.7日に1件のペースで新たな失踪届に対応していたことになります。
韓国の警察関係者も、積み重なった業務負担や責任の重さによる疲労が、今回の職務怠慢につながった可能性を指摘しています。
一方で、プ警長個人だけに問題があったのかという点についても、疑問の声が上がっています。
朝鮮日報などの報道によると、プ警長は過去10年間に警察庁長表彰など、10回もの表彰を受けていた「優秀な警察官」とされていました。
さらに、今回の事件を不正に処理した直後の時期にも、別の認知症高齢者を発見した功績によって表彰されていたことが判明しています。
これまで優秀な警察官として評価されていた人物が、その一方で複数の失踪事件を放置・偽装していた疑いが浮上したことで、韓国国内では大きな衝撃が広がっています。
● 上司による承認にも問題か
今回の問題では、プ警長本人の対応だけでなく、警察組織の管理体制にも問題があった可能性が指摘されています。
プ警長が事件を不正に終結処理したあと、上司が112指令室のシステムなどを通じて、その処理を承認していたことも確認されています。
つまり、担当者が独断で捜査を打ち切っただけではなく、その後の確認や承認を含めた指揮系統にも問題があった可能性があります。
警察は現在、プ警長が担当した298件を対象に再調査を進めています。
今回の事件を受け、韓国国内では、担当した警察官個人の資質や責任を問うだけでは不十分だという声も強まっています。
1人の警察官に過度な業務を集中させていなかったか。捜査を適切に監督する仕組みが機能していたのか。さらに、行方不明者の情報を正確に管理する体制が整っていたのか。
今回の事件は、こうした警察組織そのものの管理体制や人員配置にも、大きな課題があったことを浮き彫りにしています。
参照:韓国・済州島で失踪者の遺体“終結偽装”か…警察官への批判高まる 不明者の遺体発見
済州の警察、新たに25件の「失踪虚偽終結」を摘発…「仕事が増えるのが嫌だった」
