Netflixのドキュメンタリーシリーズ『史上最悪のパートナー』シーズン2の第2話を見ました。今回取り上げられているのは、2019年に逮捕されたジェフリー・パッシェルの事件です。恋人に対する過去の経歴の隠蔽、モラルハラスメント、深刻な家庭内暴力、誘拐など、さまざまな問題行動が明らかになっていきます。

● 過去を隠して「新しい愛」を探した男
ジェフリーは、恋愛リアリティ番組『90 Day Fiancé(90デー・フィアンセ)』に出演していました。番組に登場した時点ですでに過去の犯罪歴があったにもかかわらず、なぜ彼は出演できたのでしょうか。

ジェフリーには若い頃、規制薬物の所持や麻薬密売などで服役した過去があります。しかし本人は、番組側や交際相手のバリャに対して、「20年以上前の若気の至りであり、刑期も終えて、現在は更生した人間だ」と説明していました。

番組側も、過去の苦難を乗り越えて新しい愛を探す男性というストーリー性を重視し、彼の出演を認めたようです。

この経緯を知ると、過去に人に火をつけたとして逮捕されたことを番組内で告白し、問題になったNetflixの恋愛リアリティ番組『ラヴ上等』シーズン2を思い出します。こちらも「現在は更生している」という前提で出演させている点では共通しています。過去の犯罪歴を持つ人物を恋愛リアリティ番組に出演させることには、同じような危うさがあると言えるでしょう。

● 犯罪歴のある人物をテレビに出すことの問題
ジェフリーが交際相手のクリスティンに対する激しい暴力や誘拐の容疑で逮捕されたのは2019年6月です。その直後から『90 Day Fiancé』シーズン4の撮影が始まり、2020年2月に放送されました。



この時点では裁判が始まっておらず、法的には有罪が確定していない段階でした。ジェフリー自身も、元妻たちの陰謀によって自分が犯人に仕立てられたのであり、自分は無実だと番組側に主張していました。そのため、番組側は彼の出演部分をそのまま放送する判断をしました。

アメリカのリアリティ番組では、出演者の身辺調査が行われるのが一般的です。しかし、当時の『90 Day Fiancé』を放送していたTLCは、出演者の犯罪歴などに対するチェックや倫理基準が甘いことで知られていたとされています。

実際、放送が始まると、視聴者がインターネット上でジェフリーの複数の前科や、直近のDV逮捕歴を次々と掘り起こしました。そしてChange.orgなどでは、「犯罪者をテレビに出すな」という大規模な降板要求の署名運動まで起こりました。

こうした視聴者からの激しい批判を受け、番組側はシーズン最終回のスタジオトーク、いわゆる同窓会スペシャルへのジェフリーの出演を取りやめました。事実上の番組からの追放と言える対応です。

この事件をきっかけに、海外のリアリティ番組では、出演者の身辺調査、いわゆるバックグラウンドチェックをどこまで行うべきなのかという問題も注目されるようになりました。

そもそもジェフリーは番組に出演する以前から、恋人のクリスティンに自分の犯罪歴や複数回の結婚歴、つまり何人もの元妻がいることを隠していました。表面的には魅力的で優しい人物に見えても、その裏ではパートナーを心理的に追い詰め、支配しようとする態度を見せていたのです。

その後、家庭内暴力や誘拐などの重罪で有罪となり、最終的に18年の懲役刑が言い渡されました。出所するのは2040年になるとされています。

一方、ジェフリーが番組を通じて知り合った交際相手のバリャは、現在も彼を支持しているといいます。

● 『Court TV』が裁判を完全中継
『90 Day Fiancé』からは追放されたジェフリーですが、彼の裁判はアメリカのテレビで大きく取り上げられました。アメリカの著名な法廷専門チャンネル『Court TV』が、「テネシー州対ジェフリー・パッシェル」の裁判を詳しく報じたのです。

2021年10月に行われた2日間の裁判は、テレビや同局の配信サイトでリアルタイムに生中継されました。被害者のクリスティンが証言台に立ち、ジェフリーから受けた激しい暴行について、涙ながらに証言する様子もそのまま放送されています。

さらに、ジェフリーが証言台で「彼女の怪我は自傷行為によるものだ」と主張する場面や、検察側から厳しい尋問を受ける様子もカメラに収められました。

こうしたアメリカの重大事件の裁判を、テレビを通じて視聴できる環境はうらやましいと思います。

日本では、人権やプライバシーの保護などを理由に、法廷内での録音・録画が原則として厳しく制限されています。そのため、裁判の様子を映像で見る機会はほとんどありません。

もちろん、ジェフリーの裁判については、『Court TV』の公式YouTubeチャンネルなどにアーカイブが残されているため、後から視聴することもできます。ただし、当然ながら英語なので、そこがつらいところです。