「綺麗な花には棘がある」ということわざを、そのまま現実にしたような事件が韓国で起きました。
事件の中心にいるのは、20歳のキム・ソヨン被告です。キム被告は、計6人の男性に向精神薬を混ぜた飲料を飲ませ、そのうち2人を死亡させたとして、殺人などの罪に問われています。
事件が大きな注目を集めた理由の一つが、キム被告の容姿でした。SNSに投稿されていた写真は「美人」「かわいい」と評判になり、事件が報じられると、ネット上にはさまざまな反応が寄せられました。
「正直、かわいい。自分でもすぐに飲み物を受け取ってしまいそうです」
「本当に美人です。鋭い目つきなのに、なぜか美しく見えます」

ところが、こうした声の多くはSNSに掲載された写真を見た人たちの感想でした。実際の姿が報じられると、反応は一変します。
「写真の加工にだまされました」
「これなら詐欺罪も追加すべきです」
容姿への関心ばかりが先行する一方で、事件そのものは極めて重大なものでした。
● 第一の殺人
2026年1月29日、ソウル市内のモーテルで、20代の男性が死亡しているのが発見されました。
男性の遺体には目立った外傷がなく、当初は自然死を含めた急死の可能性も考えられていたといいます。
しかし、警察はこの時点ですでにキム被告に疑いの目を向けていました。発端となったのは、前年12月14日に起きた出来事です。
当時、キム被告と交際していた男性が、ソウル近郊の京畿道南楊州市にあるベーカリーカフェの駐車場で、キム被告から飲み物を渡されました。
「運転で疲れたでしょう?」
そう声をかけられた男性は、渡された飲料を口にしました。
ところが、その直後にカフェ内で倒れ、2日間にわたって意識を失いました。男性はその後回復しましたが、飲み物についてキム被告を問いただしても納得できず、2026年1月9日ごろ、警察に被害を届け出たとされています。
「男性の体内からは、向精神薬などに含まれるベンゾジアゼピンの成分が検出されました。警察はその事実をつかみ、キム被告について捜査を進めていました。そんなさなかに、モーテルで男性が死亡する事件が起きたのです」
大手紙の国際部記者は、こう説明します。警察が捜査を進める中で、さらに重大な事件が発生します。
● 第二の殺人
2026年2月10日午後5時すぎ、ソウル市内にある別のモーテルで、男性の遺体が発見されました。
退室予定時刻を過ぎても宿泊客と連絡が取れなかったため、従業員が部屋を確認したところ、ベッドの上で男性が死亡していたのです。
「最初の男性が死亡したモーテルから、わずか1キロほどしか離れていませんでした。警察が防犯カメラを調べると、今回も男性と一緒にいたのはキム被告だったのです。遺体が発見されてから数時間後、警察はキム被告を自宅近くで緊急逮捕しました」
前出の記者が明かします。
2人目の男性について司法解剖を行ったところ、最初の事件と同じ系統の向精神薬の成分が検出されました。
キム被告は取り調べに対し、薬物を混ぜた飲み物を男性に飲ませたこと自体は認めています。ただし、殺意については否定し、
「眠らせるつもりだっただけで、死ぬとは思いませんでした」
と説明しました。
しかし、捜査当局はキム被告の主張を認めませんでした。傷害致死ではなく、殺人の罪で起訴したのです。
その判断を後押ししたのが、キム被告の携帯電話に残されていた記録でした。
● 「死ぬ可能性」を確認していた
捜査によって、キム被告がChatGPTに対し、睡眠薬を大量に摂取した場合や、酒と併用した場合の死亡可能性について質問していたことが判明しました。
ChatGPTからは危険性を指摘する回答を得ていたとされます。
それにもかかわらず、前年12月に薬物を飲ませても死亡しなかった男性と比べ、死亡した男性には約2倍近い量の薬物を与えていたことが分かりました。
さらに捜査では、キム被告の行動にも注目が集まりました。
最初の殺人が起きた直後の2026年1月、キム被告は実の姉とともに日本の京都を訪れていました。しかも旅行中、別の男性とも連絡を取り、新たな犯行の準備を進めていたとされています。
検察側は、この行動をキム被告の罪の意識の希薄さを示す重要な材料とみています。
「人を死亡させた直後にもかかわらず、平然と観光旅行に出かけ、その間にも次の犯行を計画していた」
検察側は、こうした行動を冷酷な計画殺人の根拠の一つとして主張しています。一方、キム被告側は京都旅行について、まったく異なる説明をしています。
「姉が日本旅行に行きたがっていたので、初めて一緒に海外旅行をしました。姉は私にとって第二の母親のような存在です。母が父の家庭内暴力を止められなかったとき、姉はよく私を守ってくれました。そのため、私は姉ととても親しい関係にあります」
では、キム被告はなぜ、次々と男性に薬物を飲ませたのでしょうか。
● 過去の強姦被害が引き金になったのか
捜査当局によると、キム被告は男性たちに高級レストランやホテル、買い物などの費用を負担させていたとされます。そして、金銭をめぐって問題が生じると、薬物を使って男性を「排除」しようとしていたと指摘しています。
一方で、キム被告は一部の男性に薬物を摂取させたことを認めながら、その理由について別の主張をしています。
「被害男性から同意のない身体接触を受けました」
さらに、
「過去に似たような強姦被害を受け、そのときの記憶が蘇りました」
と供述しています。
現地報道によると、弁護人もキム被告に殺意はなかったと主張しています。
「被告には薬物の成分や致死量についての認識がありませんでした。傷害や殺人の故意はありません。被害者たちが性的な行為をしようとしたため、それを防ぐ目的で薬を与えただけです」
というのが弁護側の主張です。
法廷でのキム被告は、終始無表情だったといいます。しかし、18日に行われた論告求刑公判では、最終陳述で事前に用意していた手紙を読み上げました。
「誰も私の話を信じてくれません」
そして、自らの反省をこう語りました。
「死ぬまで自分の過ちと行動を忘れず、罪を償いながら生きていきます。私はいつも自分が不幸だと思っていました。しかし拘置所に来て、母や姉と一緒に温かいご飯を食べたことが、とても大きな幸せだったのだと分かりました」
最後に、キム被告はこう訴えました。
「私には最後の夢があります。家族のそばにいたいです。どうか命を助けてください。私に、きちんと生き直す機会を一度だけ与えてください。お願いします」
しかし、2人の男性の命を奪ったとされ、その間に京都旅行に出かけ、さらに別の男性との接触を続けていたキム被告の訴えを、遺族や関係者はどのように受け止めるのでしょうか。少なくとも遺族側は、検察が求刑した死刑を支持しているとされています。
写真の中では「美人」「かわいい」と注目を集めた女性が、実際には複数の男性を薬物によって死に至らしめた疑いをかけられている――。その落差も含め、韓国社会に大きな衝撃を与えた事件となっています。
参照:《「目つきが鋭いのに美しい」》死刑求刑の20歳のシリアルキラーが男性に“薬物混入ドリンク”
《「正直、かわいい」ハタチの被告に死刑求刑》「誰も私の話を信じてくれません」
