2024年の兵庫県知事選挙で斎藤元彦知事の選挙戦に関わったPR会社「株式会社Merchu」(以下、メルチュ)の代表取締役社長、折田楓氏が再び動き始めたようです。
折田氏をめぐっては、石黒隆之氏がSPA!に寄稿した『兵庫県知事選で注目された「PR会社社長」が再炎上…元慶應SFC生が語る“幼い万能感”への反感の正体』という記事が興味深い内容になっています。
● 折田氏は表舞台から姿を消した
折田氏が一躍注目を集めたきっかけは、斎藤元彦候補の選挙戦について、「斎藤元彦候補の広報全般を任せていただいた」と自ら公表したことでした。
しかし、その発言をきっかけに、公職選挙法に抵触するのではないかという指摘が相次ぎました。さらに、メルチュが過去に兵庫県の事業を請け負っていたことから、贈収賄にあたる可能性まで指摘されるようになりました。そうした騒動が広がると、折田氏は表舞台から姿を消しました。
その後、刑事告発された公職選挙法違反容疑については、昨年11月に嫌疑不十分で不起訴処分となりました。そして今回、騒動から時間が経過したタイミングで、折田氏は再スタートを宣言しました。
ところが、ネット上の反応は決して好意的なものばかりではありません。
「疑惑が出た当時に一切自ら説明を行わず沈黙を貫いただけでなく、捜査に協力した形跡もない。不起訴は潔白が表明されたのではなく、社会的な責任はまだ負っている立場である」
このような指摘がある一方で、
「そもそも自分がした行動が世間にどのような影響を与えたか全く分かっていない」
という批判にも、多くの共感が集まっています。
では、なぜ折田氏を擁護する声よりも、反感を抱く人のほうが目立つのでしょうか。不起訴処分になったにもかかわらず、世間の目が厳しいままなのはなぜなのでしょうか。
その理由を考えるうえで重要なのは、疑惑そのものだけではなく、これまでの折田氏自身の言動ではないでしょうか。
● 折田氏は立花氏を高く評価
折田氏は刑事告発を受ける以前から、その振る舞いがたびたび物議を醸していました。たとえば、兵庫県知事選の出直し選挙で立候補した立花孝志被告(当時は「NHKから国民を守る党」党首)に対する評価です。
折田氏は動画の中で、「立花さんが斎藤さんを守るという背景にはメディアを正していかなければならないという思いがある」と語り、立花氏を高く評価していました。
立花被告は当初から当選する意思はなく、斎藤知事を「合法的にサポート」するために出馬したと主張していました。そして、「斎藤知事はパワハラをしていない」「元県民局長は不倫がバレるのを怖れて自殺した」など、真偽が定かではない発言を繰り返し、選挙戦を大きく揺さぶりました。
こうした言動は、従来の選挙に対する常識から大きくかけ離れたものだったと言えます。
それにもかかわらず、今回の再スタートに際して公開されたnoteでは、こうした過去の自身の言動について、ほとんど説明も反省も示されていません。語られているのは、騒動を経験した自身の心境が中心です。
noteでは、当時、取材陣が自宅や子どもの通う保育園にまで殺到したことについて、次のように振り返っています。
「こうやって人は自殺してしまうんだな」という精神のギリギリの淵まで行っていた気がします。
もちろん、本人が当時どれほど追い詰められていたのかは、外部から簡単に判断できるものではありません。しかし、自分自身が受けた苦痛だけを語るのであれば、そこに違和感を覚える人がいるのも無理はないでしょう。
折田氏が応援していた斎藤元彦知事や立花孝志被告の言動をめぐっては、実際に自殺した人がいるとされる問題があります。その一方で、自身が受けた精神的な苦痛については語りながら、その問題には触れていません。
自分が置かれた状況を「悲劇」として語るのであれば、自分が支持した側の言動によって生じた問題についても、同じように向き合う必要があるのではないでしょうか。
● 日本の全てのダサいをなくしたい
折田氏のnoteには、今回の再スタートに先立つ6年前の文章も残されています。タイトルは「Who am I.」です。
「携わっているプロジェクトや業務の幅が広くなりすぎて、『折田さんのことどう紹介したらいいですか?』と言っていただくことも多いので、NOTE開設を機に自己紹介をさせていただこうかと思います」
このように前置きしたうえで、自身の仕事に対する考え方を語っています。
「日本の全てのダサいをなくしたい」
フランス留学中に、折田氏はそう思ったといいます。
フランスでは、企業のショーウィンドウや看板を含め、街全体の雰囲気が洗練されている。一方、日本は技術力が非常に高いにもかかわらず、その魅力の見せ方が十分ではない。そこに「もったいなさ」を感じ、問題意識を持つようになったというのです。
そして、その思いを会社の事業につなげています。
株式会社merchuでは、ブランディングを通じてモノやコトが本来持っている魅力を引き出し、それをさらに輝かせ、多くの人に知ってもらい、最終的にはファンになってもらうところまで支援したい。その思いに共感する人たちが集まっている、と説明しています。
しかし、「日本から全てのダサいをなくしたい」という出発点には、会社を経営する立場として考えた場合、どこか危うさがあるように感じます。
もちろん、デザインやブランディングによって企業や商品の魅力を高めること自体は重要です。しかし、「何がダサくて、何が洗練されているのか」という価値判断を自分自身の基準で決め、その基準を社会に当てはめていくのであれば、そこには慎重さが求められます。
自分の価値観を強く信じることと、自分の価値観だけを正解としてしまうことは別です。その違いを見失えば、本人にとっては正しいと思える行動であっても、周囲から見ると独善的に映ってしまうことがあります。そして、折田氏をめぐる一連の騒動を見ると、その危うさが今回の問題にもつながっているのではないかと感じます。
● フランス留学が大きなきっかけ
最新のnoteでも、折田氏が個性を大切にしようと強く考えるようになったきっかけについて、「高校生、大学生の頃のフランス留学が大きなきっかけです」と記しています。
日本とフランスを比較し、フランスから多くのことを学んだという自身の経験を、現在の仕事や価値観の原点として位置づけているのでしょう。しかし、今必要なのは、過去の価値観を改めて語ることだけではないのではないでしょうか。
自分が何を目指してきたのかを語るだけでなく、その価値観に基づいて実際に何を行い、その結果として周囲にどのような影響を与えたのかを振り返ることです。
再スタートを切るのであれば、過去をなかったことにするのではなく、これまでの言動と向き合う必要があります。
不起訴処分になったことと、社会から受けた批判が消えることは同じではありません。法的な問題が決着したとしても、社会的な評価まで自動的に回復するわけではないからです。
だからこそ、再び活動を始めるのであれば、「自分が何を経験したのか」だけではなく、「自分が何をして、その結果として何が起きたのか」を語ることが求められているのではないでしょうか。
折田氏が本当の意味で再スタートを切るためには、フランス留学以来の自分の価値観を語り直すだけではなく、これまでの自身の言動そのものを根本から見つめ直すことが必要なのだと思います。
参照:兵庫県知事選で注目された「PR会社社長」が再炎上…元慶應SFC生が語る“幼い万能感”
