2024年7月、ロケバスの車内で女性に性的な行為をしたとして、不同意性交と不同意わいせつの罪に問われている、お笑いトリオ『ジャングルポケット』の元メンバー・斉藤慎二被告の公判が8月5日に結審しました。検察側は懲役7年を求刑し、判決は11月16日に言い渡される予定です。

2026年3月13日に東京地裁で初公判が開かれて以降、今回で公判は5回を数えました。しかし、斉藤被告と被害を訴える女性の主張は最後まで交わることなく、双方の言い分は大きく食い違ったままです。

● そんなことしとる場合やないやろ
そんななか、最近になって斉藤被告の活動をめぐる投稿がSNS上で注目を集めています。

斉藤被告が手がけるバームクーヘンブランド『クーヘンSAITO』の販売イベントについて、日程変更を知らせる投稿とともに、《話題のバームクーヘン》《斉藤さんが販売にやってきます》と本人の来店を強調する動画が公開されました。

これに対してXでは、厳しい声が相次いでいます。

《そんなことしとる場合やないやろ》
《被害者からしたら反省してないしバカにされてると思うだろ》

また、斉藤被告が行っているTikTokライブも話題になっています。

「配信では、終始ぼんやりした表情で画面を見つめながら、視聴者とやり取りする姿が拡散されました。“虚ろな表情”と受け止める人もいる一方で、視聴者から贈られる高額な“ギフト”を求めるような姿も話題になっています。ギフトを贈る常連視聴者の名前を何度も読み上げる一方、少額のギフトにはほとんど反応を示さない場面もありました。こうした近況に、SNSでは驚きの声が広がっています」(芸能関係者)

事件をめぐる裁判が続く一方で、本人は現在もSNSなどで活動を続けています。その姿を見て、事件の影響を感じさせるような様子だと受け止める人もいるようです。

● なぜ女性は再びロケバスに入ったのか
この事件について最初に知ったとき、ぼくが感じたのは「なぜ、ロケバスの中でこのような行為に及んだのか」という疑問でした。

芸能人として活動していた人物が、自らの人生を大きく変えてしまう可能性のある行為を、いつ誰が乗り込んでくるか分からないロケバスの車内で行ったことには、あまりにも不用意な印象があります。さらに、ドライブレコーダーのデータが残っている可能性も考えれば、なおさらです。

もっとも、ドライブレコーダーのデータについては、結果的に残っていなかったとされています。

当初、この事件についてぼくは、人気を得た芸能人が、番組に出演していた女性に対して「自分なら言うことを聞かせられる」と考えたことから起きた問題なのではないか、という程度の認識でした。

しかし、裁判で明らかになった双方の主張を見ていくと、別の疑問が浮かび上がってきます。

それが、「なぜ女性は、斉藤被告と2人きりになることができるロケバスに、再び入ったのか」という点です。

特に気になったのが、細川バレンタイン氏によるXへの投稿でした。そこでは、次のような疑問が投げかけられています。

1回目にキス、2回目にディープキスをされることが嫌だったのであれば、3回目に斉藤被告が1人でいるロケバスへ、マイクを外すためとはいえ女性が1人で入り、2人きりになることは考えにくいのではないか、という趣旨の内容です。

もちろん、これはあくまで第三者から見た疑問であり、実際にその場で女性がどのような心理状態だったのかは、本人にしか分かりません。

では、被害を訴えている女性は、どのような立場の人物だったのでしょうか。

● 一般企業に勤めながらインフルエンサーとして活動
裁判で明らかになったところによると、女性は芸能事務所などに所属する芸能人ではなく、一般企業に勤務する会社員です。

検察側からは、「会社員のかたわら、インフルエンサーとして活動していた女性」と説明されています。

当日は、番組のゲスト、出演者としてインフルエンサー枠で出演することになっており、そのためロケバスに同乗していました。斉藤被告とは、この日が初対面だったとされています。

この点を考えると、女性が斉藤被告からの誘いを断ったとしても、そのことによって芸能活動そのものを失うような立場ではなかった、という弁護側の主張にも一定の理解はできます。

また、弁護側は斉藤被告が女性の仕事上の立場を利用する意図もなかったと主張しています。

一方で、だからこそ疑問として残るのが、その後に女性が3度にわたってロケバスに入ったという事実です。

女性は裁判で、「いきなりキスをされ、本当に怖かった」「仕事への影響が不安で、その場で声を上げられなかった」と証言しています。

撮影を中止させれば周囲に迷惑がかかることを恐れ、自分のような立場の低い人間が我慢すればいいと考えたため、その場では周囲に被害を訴えなかったという説明です。

ただ、女性は事件直後、当時交際していた男性と実母に対して、「斉藤がキスしようとしてきた」という趣旨のメッセージを送っています。

現場のスタッフなどには相談しなかった一方で、身近な人物には出来事を伝えていたわけです。

もちろん、メッセージを受け取った側が、その後どのように行動するかは分かりません。警察やマスコミ、撮影現場の責任者などに相談する可能性もあります。

その意味では、単純に「何もせず我慢していた」とだけ捉えることもできないでしょう。

それでは、実際に当日、ロケバスの中では何が起きたのでしょうか。

斉藤被告は2024年7月30日、番組ロケの合間などにロケバス内で女性に対して3回にわたって性的な行為をしたとされています。

双方の証言をもとに、その経緯を振り返ります。

● 1回目――早朝のロケ待機中にキス
最初の出来事は、番組ロケが始まる前の早朝でした。

待機中のロケバスで2人きりになった際、斉藤被告は女性の頬をつかんで無理やりキスをしたほか、胸を触るなどのわいせつ行為に及んだとされています。

一方、斉藤被告の説明は異なります。

2人でスキンケアの話をしているうちに、お互いが前のめりになり、顔を見合わせる形で距離が近づいたというのです。

斉藤被告は、そのときの状況について次のように説明しています。

「最後、肌の話になってお互いの距離が近くなっていって、彼女も同時に距離を近づけ、肌を見つめる時間が長くなって、こんな至近距離でもニコニコしながら顔全体を見てくれたので、きっとこれは好意を持ってくれていると確信しました」

検察側から「キスを受け入れてくれると思ったのか」と尋ねられた斉藤被告は、キスをした後、女性から「嬉しいです。幸せです。今日一日頑張れます」と言われたと証言しています。

さらに、女性が笑顔で、少し照れているように見えたため、「やっぱり喜んでいるんだな」と受け止めたと説明しました。

しかし、女性側の証言はこれとは異なります。

● 2回目――ロケの合間にディープキス
2回目に起きたとされるのが、舌と舌が触れ合うディープキスです。

斉藤被告は、最初のキスの後の女性の反応を見て、「あっ、こんなに喜んでくれているんだな」と感じ、女性自身もさらに求めているのだろうと思ったと説明しています。

さらに、この日はロケが順調に進み、本人自身も気持ちが高ぶっていたと振り返っています。

しかし、女性は証人尋問で「抵抗していた」と証言しました。

「唇や歯で(斉藤被告の)舌が侵入してこないようにしたんですが、それでも舌がねじ込まれてしまいました」

これが女性側の説明です。

同じ出来事について、両者の認識は大きく食い違っています。

● 3回目――ロケ終了後、再びロケバスへ
そして、今回の裁判で最も重大な争点となっているのが3回目の出来事です。

すべてのロケが終了した後、斉藤被告は着替えのためにロケバスへ戻りました。

斉藤被告によると、私服に着替えている最中、女性がロケバスに入ってきたといいます。

斉藤被告は、「撮影が終わったので(女性が)車に戻る必要がなかった。なんで撮影終わりに戻ってきたんだろう」と疑問に思ったと証言しています。

女性側は、ピンマイクを外すためにロケバスへ乗り込んだと説明しています。

ところが、斉藤被告はその理由を確認することなく、女性が自分と一緒にいたいのだと受け止めたようです。

「短い時間の中ですごく考えて、もっと僕と一緒にいたい思いがあるんだなと思いました。(女性は斉藤被告が)着替えていることもわかっていましたし、その時にはすぐにもっと一緒にいたいんだろうと思いました」

斉藤被告は当時の心境について、「(着替えに)集中できなくて気持ちがさらに高ぶってしまいました」とも述べています。

そして、「女性はそれ以上のことをしたいのだろう」と考え、最終的に口腔性交に至ったと説明しました。

斉藤被告の証言では、その際、女性の側頭部に手を添え、女性自身が近づいてきたとされており、およそ10秒間の口腔性交があったとしています。

これに対し、女性は「体を使って抵抗した」と証言しています。

ここでも、双方の主張は真っ向から対立しています。

では、ここで改めて疑問が生じます。

事件直後に交際相手や母親に「斉藤がキスしようとしてきた」と伝えた女性が、なぜ再び斉藤被告しかいないロケバスに入ったのでしょうか。

もちろん、女性にはピンマイクを外すという目的があったとされています。

しかし、どうしてもロケバスへ入る必要があったのであれば、誰か別のスタッフと一緒に入るという選択肢も考えられたのではないでしょうか。

この点については、裁判で双方の証言を聞いたうえでも、疑問が残るところです。

● 2023年7月、性犯罪をめぐる法律が改正された
この事件を考えるうえで、もう一つ重要なのが、2023年7月13日に施行された性犯罪に関する刑法改正です。

改正前の法律では、被害者が抵抗できないほどの「激しい暴行や脅迫」があったかどうかが重視されていました。

そのため、恐怖によって身体が動かなくなったり、拒絶の言葉を発することができなかったりしたケースでは、犯罪として立件することが難しいという問題が指摘されていました。

これに対して改正後は、「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態」にあったかどうかが重要な判断基準となっています。

つまり、必ずしも激しい暴行や脅迫がなかったとしても、被害者が同意しない意思を示すことが困難な状況に置かれていた場合には、罪が成立する可能性があります。

今回の事件では、まさに「同意があったのか、なかったのか」が最大の争点となっています。

斉藤被告は、女性の言動から「同意している」と受け止めていたと主張しています。

一方、女性は一連の行為に抵抗しており、恐怖や仕事への影響を考えたことで、その場で明確に拒絶できなかったと証言しています。

さらに、3回目の出来事については、女性が自らロケバスへ入ったことを斉藤被告が「もっと一緒にいたいという意思の表れ」と受け止めた一方、女性側はピンマイクを外すためだったと説明しています。

この認識の違いが、裁判の大きなポイントになっています。

公判はすでに結審し、検察側は懲役7年を求刑しました。

あとは11月16日に予定されている判決を待つことになります。

2023年7月に性犯罪をめぐる法的な基準が大きく変わったなかで、今回の事件について裁判所がどのような判断を示すのか。

双方の主張が最後まで平行線をたどっただけに、その判決に大きな注目が集まっています。

 

参照:斉藤慎二被告、懲役7年求刑の翌週に“バームクーヘン手渡し販売”…TikTokでは虚ろな表情
   「舌を入れてきたから歯と口でブロック」「『台本が飛んでしまうからやめてください』と拒絶」