地震発生からおよそ1時間半後、イオンモール熊本で大規模な爆発事故が発生しました。

この事故で疑問に感じたのは、なぜガス漏れ警報器が作動しなかったのかという点です。仮に警報器が正常に作動していれば、館内の警戒がさらに強まり、一度避難した人が再び建物内へ戻ることも防げたのではないでしょうか。その結果、事故に巻き込まれて命を落とすことも避けられた可能性があります。

しかし、警報器が作動しなかった理由については、現時点で施設側や関係機関から明確な説明はありません。装置が機能しなかった原因も判明しておらず、消防や専門家による詳しい調査が進められています。

● 会社には真実を明らかにしてほしい
地震が発生したのは2026年7月28日午後4時27分ごろです。熊本県では最大震度7を観測し、イオンモール熊本がある嘉島町(かしままち)も激しい揺れに襲われました。

その約80分後の午後5時50分ごろ、館内で大規模な爆発事故が発生します。この事故では7人が死亡、5人が負傷し、合わせて12人の死傷者が出る深刻な被害となりました。

亡くなった女性店員の大竹玖瑠美(くるみ)さん(22)の母親によると、玖瑠美さんは地震直後に一度建物の外へ避難していました。その際、偶然会った親戚に次のように話したといいます。

「『一回戻らないといけない』と。親戚は止めましたが、『金庫にお金を入れないといけないと言われたので戻る』と言って戻りました」

その後、爆発事故が発生しました。

母親は「入金のために、お金のために娘は命を落としました。会社には真実をはっきり話してほしいです」と訴えています。

7月31日の報道では、玖瑠美さんが勤務していたコスメ・生活雑貨セレクトショップ「ハビタ」を運営する会社は、RKK熊本放送の取材に対し「取材はお断りしています」と回答しました。

従業員2人が亡くなる重大事故であるにもかかわらず、取材を拒否し、今後の対応についても説明がありませんでした。その姿勢には冷淡な印象を受けました。

株式会社ハビタは化粧品小売業を営み、熊本県、福岡県、佐賀県、大分県、宮崎県で15店舗を展開するほか、オンラインショップも運営しています。

● 一度避難した従業員は館内へ戻れないルールだった
8月2日、大竹玖瑠美さんの通夜が熊本市内で営まれ、ハビタの幹部が参列して遺族に謝罪しました。

幹部は、「弊社の2人の従業員の尊い命が失われる結果となりました。このことについて、ご遺族の皆さまに深くお詫び申し上げます」と述べました。

そのうえで、地震発生後に出した指示についても説明しています。
「もし可能であれば売上金を金庫へ戻してほしい。館内へ入る場合は、必ずイオンモール熊本の許可を得てから入ってほしいと伝えました」

幹部は、一度避難した従業員は館内へ戻ることができないというルールを把握していたといいます。

地震当日、休みだった店長へLINE電話で安否確認をした後、「もし入れるのであれば」と売上金の回収を相談しました。

当時、近隣の大型商業施設では従業員が建物内に入っていたとの情報があり、それを知った幹部が店長へ相談しました。店長は勤務していなかったため、出勤していた店員へ連絡し、その店員と大竹さんの2人が館内へ向かいました。

さらに幹部は、2人が入館しようとした際のイオン側の対応についても証言しています。
「ニュアンスとしては『気をつけて行ってこんね』というものでした」

一方で、現在では店長へ入金を依頼した判断そのものが誤りだったと認め、謝罪しています。

また、一部ではイオン側が「安全確認が取れたので館内へ戻ってもよい」と専門店へ説明していたとの情報もあります。この点について記者が質問すると、ハビタ本社管理部の社員は次のように答えました。

「イオン側にはまだ確認できていません。ただ、他のテナントからは、イオンモールの管理者が『1人ではなく4、5人でまとまって入るならよい』と説明していたという話も聞いています。入口が多いため、場所によって入れた人と入れなかった人がいたようです」

● 業務上過失致死罪に問われる可能性
一方、イオンの吉田昭夫社長は7月29日の記者会見で、「館内へ入ってよいというアナウンスがあったのではないか」との質問に対し、
「そのようなことは一切ありません。明確に否定します」
と回答しました。

また、多数ある入口で手分けして立ち入りを制止していたとも説明しており、イオン側とハビタ側の説明は食い違っています。

双方とも責任を相手側へ向けようとしているようにも見えますが、事実関係が明らかになれば、それぞれの責任が問われる可能性は十分にあるでしょう。

特にハビタについては、重大な法的責任を負う可能性があります。

幹部らは、避難後の立ち入りを禁止する防災マニュアルに反する指示を出しており、業務上過失致死罪に問われる可能性があります。

建物が吹き飛ぶほどの爆発までは予見できなかったとしても、大地震直後は余震や建物の崩落、火災、ガス漏れなど二次災害の危険性が非常に高い状況でした。

そのような中で、売上金を保全するために従業員へ館内へ戻るよう求めた行為は、安全への配慮を著しく欠いた判断と評価される可能性があります。

また、「もし入れるのであれば」という表現だったとしても、業務上の上下関係を考えれば、従業員にとっては実質的な業務命令として受け止められた可能性が高く、過失を否定する理由にはなりにくいでしょう。

民事上も、会社には不法行為責任だけでなく、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が生じる可能性があります。企業には、従業員の生命と安全を最優先で守る法的義務があります。

ただし、地震発生後の館内外の状況や、どの程度まで危険を予見できたのか、指示がどのような経緯で出され、従業員に拒否する余地があったのかなど、慎重に検証すべき点も少なくありません。

事故の全容を解明するためにも、警察による徹底した捜査と、関係者による十分な説明が求められます。

参照:【イオンモール爆発】従業員2人死亡のテナント会社が遺族に謝罪 “館内に戻るよう指示”
   「命に代えるものではなかった」イオンモール熊本爆発事故 テナント幹部が通夜で謝罪 
   【イオンモール爆発】命より売上金を優先?従業員を館内に戻した会社の法的責任