三木聡監督の映画『大怪獣のあとしまつ』は、全長380メートルの巨大怪獣の死体が放置され、腐敗によるガス爆発の危機が迫るという前代未聞の事態を描いた作品です。「この死体はどの省庁が担当するのか」「予算や責任をどうするのか」といった現実的な問題を、シュールなコメディとして描いています。
主人公の特務隊員・帯刀アラタを山田涼介さん、環境大臣秘書官・柾雪乃を土屋太鳳さんが演じています。そのほかにも豪華な俳優陣が多数出演していますが、個人的には特別出演のような扱いで有名俳優を数多く起用する必要はなかったように感じました。
この映画のレビューを読むと、怒りにも近い厳しい意見が目立ちます。
「久々に駄作を見たなぁという感じ。コメディなのはわかるが全然笑えない。キノコの悪ノリは寒すぎて誰が喜ぶの?ってレベル」
「これだけの予算があれば、ちゃんとした監督と脚本家が付けばかなり良い作品が作れるだろうなぁと、途中からずっと上の空で観てました。」
「なぜ誰もこの映画の製作を止めなかったんだろうと思うくらい苦痛な115分」
これほど酷評されているので、陳腐な映像とストーリーで作られた怪獣映画なのだろうと思って鑑賞しました。しかし、実際にはぼくにとって十分楽しめる作品でした。
特に批判の多いギャグは、あまりにもくだらなさすぎて逆に笑ってしまいました。実際に何度か声を出して笑ったほどです。
ただし、若い世代には伝わりにくいだろうと思うギャグもいくつかありました。監督が60代で、脚本も自ら担当していると知り、「なるほど」と納得しました。ギャグの好みが大きく分かれる作品なのも無理はないでしょう。
映像面も思っていた以上に見応えがありました。巨大怪獣の死体の上空をカラスの群れが旋回する場面は非常にリアルで、怪獣の巨大さと不気味さが伝わってきます。また、腐敗を防ぐために怪獣を凍らせようとしたり、水洗トイレの応用で臭い物は水で流そうと考えたりするなど、ユニークな発想も楽しめました。
ぼくが特に気に入ったのは、怪獣の傷口を下から金属の棒で突いた瞬間、赤黒く粘り気のある液体が勢いよく噴き出し、それを頭から浴びた3人が「臭い!臭い!」と言ったり、吐いたりしながらあわてふためく場面です。
怪獣の死体が時間とともに腐敗し、放置すれば何が起こるかわからない恐ろしさがよく表現されていました。
一方で、物語には少し疑問を感じる点もありました。巨大怪獣の死体を処理する際、海外での前例についてまったく触れられていません。そのため、「これは世界で初めて直面した問題なのだろうか」と考えました。
もし本当に前例がない出来事であれば、世界中で大ニュースになっていても不思議ではありません。しかし、作中で大きく取り上げられているのは日本や韓国、中国くらいで、西洋諸国がほとんど関わってこないのは違和感がありました。世界規模の問題として、各国を巻き込んだ展開になっていてもよかったのではないかと思います。
