青森県三沢市の温泉ホテルに宿泊した際、近くを散歩していると子馬を見かけました。子馬は干し草を夢中で食べており、ぼくが見ている間も、ひたすら口を動かし続けていました。

子馬とはいえ体格はしっかりしており、その大きな体を支えている栄養が干し草だけでまかなえるという事実に、不思議な気持ちになりました。いったい、この草のどこにそれほどの栄養が詰まっているのでしょうか。

同じことはパンダにも感じます。先のとがった笹や竹は、見ているだけでも口の中を傷つけそうですが、パンダは飽きることなく夢中でかじっています。しかも、その食事だけで大きな体を維持しているのですから、動物の生命活動は実に興味深いものです。

このように考えると、食べ物と生き物の体の関係は実に奥深いと感じます。

一方で、人間は馬やパンダとは異なり、多種多様な食べ物を口にします。健康を維持するには、主食(ごはん・パン・めん類など)、主菜(肉・魚・大豆・卵など)、副菜(野菜・きのこ・海藻など)を組み合わせた、栄養バランスのよい食事が欠かせません。そのため、毎日同じものだけを食べ続ける食生活は望ましいとはいえません。



実際、「3食ともフライドポテトだけを食べ続けた中学生が亡くなった」という衝撃的な事例があります。

司法解剖によって明らかになったのは、少年が死亡するまで「1日500円」で生活する厳しい環境に置かれていたことでした。法医学者は解剖を通して、貧困と栄養問題がもたらした過酷な現実を知ることになります。

少年は「嘔吐が止まらない」と訴えて病院を受診しました。医師は胃腸の不調と判断して整腸剤を処方しましたが、帰宅した直後に亡くなってしまいました。死因を調べるため司法解剖が行われ、その結果、ハンバーガーチェーン店のフライドポテトを中心とした偏った食生活が背景にあったことが判明しました。

解剖では、胃が異常に膨張していることが確認されました。さらに、大きくなった胃が腸を圧迫し、小腸の一部が骨盤内の狭い空間に入り込んでいました。そのため小腸は壊死し、黒く変色していました。

本来、小腸は食べ物を消化しながら通過させる役割を担っています。しかし、小腸が入り込んで通り道が狭くなったことで内容物が流れなくなり、腸閉塞を引き起こしていたのです。腸閉塞になると、食欲不振や腹部の張り、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。

こうした事態に至った背景には、少年の家庭環境がありました。父子家庭で育った一人っ子の少年は、父親から渡される1日500円だけで毎日の食事をまかなっていました。

限られたお金で、調理の手間がかからず、空腹を満たせる食べ物を考えた結果、子どもでも気軽に利用できるハンバーガーチェーン店のフライドポテトを選び続けたのでしょう。

死亡診断書に記載された病名は「腸閉塞」でした。しかし、その背景には、ひとり親家庭の貧困や福祉制度の支援が十分に届かなかった現実がありました。もし少年の身近に手を差し伸べる大人が一人でもいたならば、違う結果になっていたかもしれません。この事例は、栄養だけでなく、社会全体で子どもを支える仕組みの重要性を改めて考えさせられます。

参照:「3食フライドポテト」で中学生はなぜ死んだのか…司法解剖で見えてきた「500円生活」
   「栄養バランスがよければ毎日同じものを食べてもよい?」