「ビーキーパー」 2024年製作 イギリス,アメリカ 原題:The Beekeeper
 

デビッド・エアー監督の映画『ビーキーパー』は、ジェイソン・ステイサムが「養蜂家(ビーキーパー)」でありながら、実は国家の秩序を守る秘密組織の元工作員という過去を持つ男を演じる、リベンジ・アクション映画です。

タイトルの「ビーキーパー」には、2つの意味が込められています。ひとつは、ミツバチを育てる本物の養蜂家。もうひとつは、国家の法律が及ばない領域で社会の不条理を正してきた秘密組織「ビーキーパー」に所属する、エリート工作員(暗殺者)のことです。

主人公が養蜂家という設定であることに加え、劇中の会話にも蜂にまつわる話題がたびたび登場します。オープニングでは蜂の群れや蜂を描いた絵、蜂の巣の正六角形などが映し出され、作品全体から蜂へのこだわりが感じられます。

映画の内容とは別に、「なぜ蜂の巣は六角形なのだろう」という疑問を持ちました。平面を隙間なく敷き詰められる正多角形は、正三角形、正方形、正六角形の3種類だけです。同じ広さの空間を作る場合、正六角形は円に最も近い形のため、壁の長さ、つまり材料を最も少なくできます。材料を節約できるうえに強度も高いため、蜂は六角形の巣を作るそうです。

本作の見どころは、ジェイソン・ステイサムによる圧倒的なアクションです。敵がどれほど大勢いても意に介さず、容赦なく倒していく姿は爽快で、圧巻の戦闘能力を存分に堪能できます。

一方で、ぼくは大人数の敵を相手にしてもまったく苦戦せず、ひたすら倒し続けるアクションには、少しマンネリを感じるようになりました。そのため、本作では怒涛のアクションが始まるまでの序盤の物語のほうが印象に残っています。

アメリカの田舎で養蜂家として静かに暮らす、謎めいた男アダム・クレイ。彼は養蜂のために土地を貸してくれた、唯一の理解者であり恩人でもある老婦人と道端で出会います。

「受け入れに感謝している。俺と……蜂のこと」
「荒れ果てた土地がよみがえった。神の恵みよ。」
「初めて優しくされた。それじゃあ」

そう言って立ち去ろうとするクレイを、老婦人は呼び止めます。

「クレイさん、夕食をごちそうさせて」

その後、クレイが老婦人の家を訪ねると、彼女は自ら命を絶っていました。コンピューター詐欺の被害に遭い、自身の財産だけでなく、管理していた慈善団体の資産まで一瞬で失ってしまったのです。

老婦人の娘はFBI捜査官で、クレイに母への思いを語ります。

「感謝している、母のこと。私もできるだけ一緒にいようとしたけど」
「年を取ると孤独だ。一定の年齢になると存在を無視される。それまでは家族を形成していた。蜂の群れみたいに。」

ぼくは、この序盤の静かな展開がとても好きです。