「リトル・シングス」 2021年製作 アメリカ 原題:The Little Things
ジョン・リー・ハンコック監督の映画『リトル・シングス』は、デンゼル・ワシントン、ラミ・マレック、ジャレッド・レトという3人のオスカー俳優が繰り広げる緊迫した演技と、事件の真相以上に登場人物たちの心理を深く描いたサスペンスです。
タイトルの「リトル・シングス(小さなこと)」が示すように、些細な証拠や小さな思い込みの積み重ねが、男たちの運命を大きく狂わせていきます。
物語の主人公は保安官代理のディークです。かつてロサンゼルス市警で優秀な刑事として活躍していましたが、ある事件をきっかけに過去の傷を抱えています。そんな彼が、ロサンゼルスで発生した連続殺人事件の捜査に関わることになります。
捜査を担当する巡査部長・バクスターは、ディークの豊富な経験と鋭い勘を高く評価し、彼と協力して事件を追います。そして、2人は不気味な容疑者・スパルマにたどり着きます。しかし、捜査が進むにつれ、事件だけでなくディーク自身の暗い過去や隠された秘密も浮かび上がっていきます。
本作は評価が大きく分かれる作品でもあります。「名優がそろっているので期待したが、期待外れだった」という厳しい感想も少なくありません。ぼく自身も、次の点が気になり、最後までどこか釈然としない気持ちが残りました。
1.デンゼル・ワシントン演じるディークは、正義感あふれる人物と思わせながら、実際にはそう単純な人物ではありませんでした。
2.真犯人の動機が最後まであいまいです。また、ジャレッド・レト演じるスパルマが警察を執拗に挑発する理由にも納得しきれませんでした。あのような言動を続ければ、自ら危険な状況を招くことは容易に想像できるはずです。刑事を極限状態まで追い詰めて楽しむだけでは説明しきれない違和感がありました。
3.結局、真犯人が誰なのか最後まではっきり示されません。
4.ラミ・マレック演じるバクスターは、美しい妻と2人のかわいらしい娘に恵まれています。しかし、その生活に満たされているようには見えませんでした。その理由をもう少し丁寧に描いてほしかったと思います。
5.ラミ・マレックのどこか不安を感じさせる独特の雰囲気は、むしろスパルマ役のほうが似合っていたように感じました。逆に、ジャレッド・レトがバクスターを演じても面白かったのではないでしょうか。
このように気になる点は多かったものの、不思議なことに最後まで目が離せませんでした。それは、やはり3人の俳優による圧倒的な演技力が作品を支えているからだと思います。また、本作には多くの考察サイトが存在することからも、一度見ただけですべてを理解できる作品ではないのでしょう。
印象的だったのはラストシーンです。ディークは、被害者が身につけていたとされる「赤い髪留め」をバクスターへ郵送します。それを見たバクスターは安堵したような表情を浮かべます。しかし、この場面には残酷なトリックが隠されていました。その意味は、映画の解説サイトを読んで初めて理解できました。
『リトル・シングス』は、明快な結末を求める人には物足りなく感じるかもしれません。一方で、鑑賞後も作品についてあれこれ考察し、余韻を楽しみたい人には強く印象に残るサスペンス映画だと思います。
