千葉県柏市の病院で、入院患者の点滴の延長チューブに排せつ物を混入し、患者を死亡させたとして、51歳の看護師が逮捕されました。防犯カメラの映像などから、異物が混入したとみられる時間帯に病室へ出入りしていた病院関係者は、この看護師だけだったことがわかっています。

容疑者は51歳で、長年にわたり看護師として勤務してきたと考えられます。そのため、今回の事件以前にも同様の行為がなかったのか気になるところです。また、患者の命を預かる医療現場で、殺意を持つ人物が働いている可能性を考えると、不安を感じる人も少なくないでしょう。

● 病室にいた病院関係者は古川容疑者だけ
7月15日、殺人の疑いで古川美由紀容疑者(51)が逮捕されました。古川容疑者は、当時勤務していた千葉県柏市の「柏たなか病院」で、入院中の男性患者を殺害した疑いが持たれています。

事件が起きたのは今年1月30日午前4時ごろです。入院中だった会田栄次さん(当時75)は点滴による治療を受けていましたが、その延長チューブに古川容疑者が排せつ物を混入したとみられています。会田さんは翌日の夜に死亡しました。

病院職員は「容体が急変した入院患者が亡くなり、点滴に異物が混入した可能性がある」と警察に届け出ました。

捜査関係者によると、防犯カメラの映像などを解析した結果、異物が混入したとみられる時間帯に病室へ出入りしていた病院関係者は古川容疑者だけでした。また、古川容疑者には業務上、この病室へ立ち入る必要がなかったことも判明しています。

● 敗血症は命にかかわる病気
会田さんの死因は、敗血症による多臓器不全だったとされています。点滴への異物混入の危険性について、日本医科大学付属病院の中江竜太准教授は次のように説明しています。

「点滴は完全に無菌の状態で作られます。そのため異物が混入すると、異物の種類によっては深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。

排せつ物には大腸菌などの細菌が含まれており、それが血液中に入ると敗血症を引き起こす恐れがあります。敗血症は細菌感染などをきっかけに全身の臓器の機能が低下する病気で、命にかかわる非常に危険な状態です」

病院を運営する医療法人社団葵会は、「医療従事者としても、人としても決して許されない行為です」とコメントし、捜査への全面的な協力と再発防止に取り組む方針を示しました。

● 周囲からは「ごく普通の人」との声
古川容疑者は事件のおよそ1年前から病院で勤務し、事件から約1か月後に自主退職していました。その後は東京都内の別の病院で働いていたとされています。

近所の住民は「本当に普通の人で、悪い印象はまったくありませんでした」と話しています。一方で、別の住民は「姿を見たことがほとんどなく、本当に住んでいるのかと思うほどでした」と証言しています。

7月16日の報道では、古川容疑者が事件前後にスマートフォンで「便注入、死ぬか」などと検索していたことが、捜査関係者への取材で明らかになりました。防犯カメラの映像などの状況証拠もありますが、古川容疑者は警察の調べに対し、「延長チューブに混入したことはありません」と容疑を否認しています。しかし、現在判明している状況を踏まえると、その主張には疑問を感じます。

● 点滴を悪用した事件は過去にも発生
点滴を悪用した事件は過去にも発生しています。2024年には、神奈川県横浜市の旧大口病院(後の横浜はじめ病院)で起きた連続中毒死事件の控訴審で、元看護師の久保木愛弓被告に無期懲役判決が言い渡されました。

この事件では、2016年に入院患者の点滴へ消毒液「ヂアミトール」が混入され、複数の患者が死亡しました。3人について中毒死として立件されましたが、久保木被告は取り調べで「20人ぐらいにやった」と供述していました。

点滴は患者の命を支える医療行為ですが、悪意を持って利用されれば連続殺人にもつながりかねません。そのため、医療機関には厳格な管理体制と再発防止策が求められます。

点滴を悪用した海外の事件を描いた作品としては、実在の連続殺人犯をモデルにした映画『グッド・ナース』が知られています。医療現場で日常的に行われる点滴が犯罪に利用される恐ろしさを描いた作品で、モデルとなった犯人は29人の殺害を認め、終身刑11回分の判決を受けて服役しています。

参照:点滴チューブに排せつ物混入し患者殺害か 看護師の女(51)を逮捕 千葉・柏市
   「便注入、死ぬか」と検索 病院で患者殺害疑いの女