「史上最悪の隣人」2026年製作 アメリカ 原題:Worst Neighbor Ever
Netflixのドキュメンタリーシリーズ『地上最悪の隣人』第1話「ついに彼女がキレた」を視聴しました。ご近所トラブルが狂気のストーカー行為へと発展していく実話を描いた作品です。
このシリーズは、アメリカやイギリス、フランス、スペインなどではNetflixの視聴ランキングでベスト10入りしています。一方、日本ではランクインしておらず、その違いからも各国の国民性が垣間見えるようで興味深く感じました。
物語は、主人公ショーナ夫妻が家族の近くへ引っ越し、かつて親しかった友人フランシスと再会するところから始まります。さらにフランシスが向かいの家へ引っ越してきたことで交流が再開しますが、その穏やかな関係は少しずつ崩れていきます。最初は和やかな雰囲気だからこそ、「どこで歯車が狂ったのか」という過程が非常にリアルで引き込まれました。
フランシスは知人宅に居候していましたが、やがて逆恨みと被害妄想からショーナ一家への執拗な嫌がらせやストーカー行為を繰り返すようになります。しかも、自ら加害者であるにもかかわらず、毎日のように「自分が被害を受けている」と警察へ通報し続ける姿には強い異様さを感じました。
冒頭では、ショーナがフランシスに銃で撃たれた当時を振り返ります。
「2018年5月、私は顔を撃たれた。弾は顔の右側から入り、鼻を抜けて耳から出た。生きているのは奇跡よ」
この証言があるため、視聴者は「なぜここまで事態が悪化したのか」を追いながら作品を見進めることになります。
フランシスの行動は、次第に理解しがたいものへと変わっていきます。些細な出来事をきっかけに被害妄想が膨らみ、憎悪を募らせ、言動もますます攻撃的になっていきます。その変化が記録映像や関係者の証言を交えて克明に描かれており、現実に起きた出来事だからこその恐ろしさが伝わってきました。
ショーナが孫やめいたちと庭で遊んでいると、フランシスは胸を露出したり、裸で芝刈りをしたりして、子どもたちの前で挑発的な行動を繰り返します。
こうした異常な言動を不安に感じたショーナの娘は、「息子の教育に悪影響を及ぼす」と考え、孫を預けるのをやめてしまいます。孫と過ごす時間を何よりの楽しみにしていたショーナにとって、それは非常につらい出来事でした。
ショーナはフランシスの裸での行為を警察へ相談します。しかし、警察から返ってきたのは「合法なので何もできない」という答えでした。ケンタッキー州では女性が胸を露出すること自体は違法ではなく、性器を露出した場合のみ性別を問わず違法になるそうです。この法制度が事態への対応を難しくしていました。
そして事態は最悪の結末へ向かいます。フランシスは拳銃を手にショーナの家へ押しかけ、ついに発砲する事件を起こしてしまいます。
精神的に不安定で、何をするかわからない人物が近所に住み、トラブルへ発展することの恐ろしさを痛感させられました。ご近所問題は簡単に逃げられるものではないだけに、なおさら現実味があります。
一方で、フランシスはもともと「面白くて楽しい子だった」と周囲から語られる人物でもありました。だからこそ、なぜ他人へ強い憎悪を向けるようになったのか、その変化が非常に気になります。
作中では、幼い頃に母親からひどい扱いを受けていたことだけが語られますが、詳しい経緯は明かされません。また、ショーナ夫妻と関わる以前に人格が大きく変化したきっかけについても描かれていませんでした。歪んだ人格が形成された背景には、何らかの決定的な出来事があったはずです。その部分まで掘り下げられていれば、より深みのあるドキュメンタリーになったのではないかと思いました。

