『はたらく細胞』と聞くと、ぼくはまず実写映画を思い浮かべます。細胞を擬人化したユニークな設定で人気を集めた同名漫画を実写化した作品で、永野芽郁さんが赤血球役、佐藤健さんが白血球役を務め、『翔んで埼玉』の武内英樹監督がメガホンを取りました。

映画は2024年12月13日に公開されると、国内映画ランキングで4週連続1位を獲得し、興行収入は60億円を突破する大ヒットとなりました。

原作漫画は清水茜さんが2015年から『月刊少年シリウス』で連載を開始しました。シリーズ累計発行部数は1,000万部を突破し、体の仕組みを楽しみながら学べる作品として注目を集め、アニメ化もされています。

● 連載期間中にうつ病を発症
順風満帆な作品に見えますが、2025年7月3日、講談社は「【お詫び】清水茜先生によるXでのご投稿について」と題した声明を発表しました。

「講談社が、漫画『はたらく細胞』の著者・清水茜さんによる、連載中の監修体制や担当編集者の対応に関する告発を受け、謝罪した」というニュースを目にし、何があったのかを確認しました。

清水さんは自身のXで、連載開始当初に約束されていた医療監修を受けられないまま作品が刊行されたことや、担当編集者から人格を否定するような発言を受けていたことなどを明かしました。

その結果、作品の医学的な正確性について読者から批判を受けたほか、自身も連載期間中にうつ病を発症したと告白しています。

講談社は声明でこれらの指摘を認め、「編集部における管理体制の不備、および不適切な対応により、清水先生に多大なご負担とご心痛をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。

また、告発の対象となった編集者については、すでに担当を外れているとしたうえで、「本件は編集部の管理・監督体制の問題であり、弊社ならびに編集部としても重く受け止めております」と説明しています。

● 連載時に適切な監修を受けられなかった
清水さんによると、連載開始前後には担当編集者から「医療監修が入る」と説明されていたそうです。

しかし、単行本第1巻の刊行時にも監修者名は記載されず、内容に誤りが残ったまま作品が出版されました。そのため、読者から内容の正確性を疑問視する声が寄せられていたといいます。

制作体制にも問題がありました。編集部からアシスタントを紹介してもらえなかったため、自ら専門学校時代の同期を複数採用しました。しかし、一部のアシスタントが作業を拒否する事態となり、編集部にプロアシスタントの募集を要請していたとしています。

● 改善を求めても十分な支援を受けられず
清水さんは連載中、監修体制の整備やプロアシスタントの確保を何度も編集部へ求めました。しかし、紹介されたのは漫画家志望の新人であるなど、十分な支援は受けられなかったといいます。

さらに、その過程で担当編集者から人格を否定するような発言を受けたことも明かしています。

こうした状況が続く中で清水さんはうつ病を発症し、心身の負担から連載終了を決断したと説明しています。

さらに、2021年の連載終了後も、スピンオフ作品では「原作 清水茜」というクレジットが、本人に無断で「協力:清水プロダクション」に変更されていたほか、『はたらく細胞図鑑』(2019年発行)では清水さんの名義が削除されていたことも明らかにしました。

● 現在の担当編集者とは良好な関係
一方で、清水さんは2025年に講談社の漫画誌『good!アフタヌーン』へ短編『イエローフレイム』を掲載しています。現在の担当編集者とは良好な関係を築いていることもXで報告しています。

講談社は声明の最後で、「このたびは、清水茜先生をはじめ、読者の皆様、関係者の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます」と締めくくっています。

今回の件を読んで気になったのは、漫画家が連載中にうつ病を発症した場合の支援体制です。会社員であれば、休職制度や有給休暇、傷病手当金などの制度を利用できる場合があります。一方、自由業である漫画家には、こうした支援制度がどこまで整っているのでしょうか。

今回の告発をきっかけに、ほかの漫画家からも過去に編集部で似たような対応を受けたという声が上がっています。この問題は清水茜さん個人だけの問題ではなく、漫画業界全体の労働環境や編集体制を見直す必要性を示す事例ではないかと感じました。

参照:漫画『はたらく細胞』作者が編集者とのトラブルやうつ病発症をSNS上で告発 講談社は謝罪へ