Netflixの犯罪ドキュメンタリー『史上最悪のパートナー』シーズン2第1話「交際相手はデッドプールキラー」は、理想的な恋人だと思っていた相手が残虐な殺人鬼へと変わっていく恐怖と、その悲劇を防げた可能性がありながら見過ごした警察の失態を描いています。

本作は、マーベル作品のキャラクターと同じ名前を持つことから「デッドプールキラー」と呼ばれた死刑囚ウェイド・ウィルソンについて、元交際相手のケリー・マシューズの証言を軸に構成されています。

まず目を引くのが、ウェイドの顔全体を覆うタトゥーです。体のタトゥーはともかく、顔にまで施されたものには強い違和感を覚えました。

同じことはケリーにもいえます。ウェイドほど派手ではありませんが、ぼくには肌を必要以上に装飾しているように見えました。この感覚は、実際にドキュメンタリーを見れば理解しやすいと思います。

ウェイドは自分の容姿に強い自信を持っていました。番組の冒頭では、彼の人物像を象徴する次のような言葉が紹介されます。

「俺は容姿を武器にする。俺はライオン、お前は獲物だってことだ。俺の中の衝動だ。殺人、殺人、殺す、殺す、殺す」

● 甘いマスクに隠された最悪の素顔
ケリーはマッチングアプリでウェイドと出会いました。当初の彼は理想の結婚相手に思えるほど魅力的だったといいます。

「身長196センチで、とてもハンサム。歯並びもきれいで、完璧な男性を見つけたと思った」

しかし、同棲を始めると状況は一変します。ノートパソコンを無断で質に入れる、子犬を盗む、浮気を繰り返すなど問題行動が次々と表面化しました。そして最終的には、ケリーに対する拉致・監禁や性的暴行へと発展していきます。

ケリーの証言からは、恋人だった相手が少しずつ本性を現し、恐怖の存在へ変わっていく過程が生々しく伝わってきます。

● 未曾有の連続殺人につながった警察の失態
命からがら逃げ出したケリーは、身体に傷を負った状態で警察へ被害を訴えました。

ところが担当したポッター刑事は十分な捜査を行わず、「証拠不十分」と判断します。さらにウェイドの主張をほぼそのまま受け入れ、わずか1週間で事件を終結させてしまいました。

番組では、この時点で適切な捜査と逮捕が行われていれば、その後に犠牲となったクリスティン・メルトンとダイアン・ルイスの命は救えた可能性が高かったと指摘されています。

結果論ではあるものの、警察の対応が後の悲劇につながったと考えると、非常に重い事実です。

● SNSで神格化された殺人鬼の異様さ
事件後のウェイドは、顔中にタトゥーを入れた特徴的な姿と整った容姿によって、SNS上で異様な人気を集めるようになります。

彼の顔がニュースで報じられると、多くの女性が連絡を取り始めました。面会記録を確認したところ、女性からの電話は数百件にのぼったといいます。

TikTokやInstagramを中心に、彼に恋愛感情を抱いた女性たちがファンクラブを結成しました。彼女たちは自らを「Wade's Wives(ウェイドの妻たち)」と呼び、「自分が最も愛されている」と主張して競い合っていたそうです。

刑務所には毎日のようにラブレターや自撮り写真が届き、売店などで使用できる個人口座にはファンから多額の寄付金が振り込まれていました。

こうした現象を見ると、容姿の魅力によって、その人物が犯した行為の善悪を度外視して強く惹かれてしまう人が一定数存在することを考えさせられます。

また、ファンたちはウェイドが厳重な刑務所に収監されており、自分に危害を加えることはできないと理解しています。そのため、「絶対に安全な距離」を保ちながら、危険な男性との恋愛というスリルを疑似体験していた側面もあるのではないでしょうか。

本作は凶悪な殺人事件の実態を描くだけでなく、犯罪者を偶像化してしまう現代のSNS文化や、人間心理の複雑さについても考えさせられる作品でした。