「ゆりかごを揺らす手」 1991年製作 アメリカ 原題:THE HAND THAT ROCKS THE CRADLE

カーティス・ハンソン監督の『ゆりかごを揺らす手』(1992年)は、平穏な家庭に入り込んだベビーシッターが、周到な策略で家族を崩壊へ追い込んでいく90年代サイコスリラーの傑作です。本作は2025年に同名タイトルでリメイクされています。

以前に鑑賞し、その面白さに強く感銘を受けていたため、今回あらためて視聴しました。さまざまな面ですぐれたスリラーだと再認識しましたが、何よりもまず驚かされるのは、ベビーシッターのペイトン(レベッカ・デモーネイ)の妖艶な美しさです。

優しい夫と娘、そして赤ん坊とともに暮らすクレア(アナベラ・シオラ)は、幸せな毎日を送っています。しかし、その家庭に現れたベビーシッターがあまりにも魅力的であれば、家庭の均衡が崩れる予感を抱いてしまいます。少なくとも、こんなに美しい女性を雇うのは危険ではないかと思わせるほどです。

ペイトンが用事でクレアの夫の研究所を訪れた際には、社員たちの視線が一斉に彼女へ向けられます。その反応が実に面白く、同僚が「どこで雇ったのですか」と尋ねるほど、彼女の存在は強い注目を集めます。

夫を信頼していても、後半になると、子供も夫も自分よりペイトンになついているのではないかと思わせる場面が続きます。クレアは次第に不安を募らせ、家庭という本来安全であるはずの聖域が、少しずつペイトンに侵食されていく恐怖を味わうことになります。

そんな事態を予感していた友人女性は、さりげなくクレアに忠告します。彼女は「ゆりかごを揺らす手は世界を支配する手」という詩の一節を引用し、魅力的な女性に家庭を支配させてはいけないと警告します。しかし、クレアは当初その言葉を気に留めません。

ところが、その友人は温室で全身にガラスの破片を浴びるという悲惨な目に遭います。クレアを助けようとして家を訪れた結果、そのような悲劇に見舞われる展開はあまりにも気の毒です。

気の毒といえば、クレアの告発によってわいせつ行為が発覚した産科医も複雑な存在です。彼は自殺に追い込まれ、財産も失います。そして妻であるペイトンは、自分の幸せを奪われたとして壮絶な復讐を企てます。もちろん彼女の行為は許されませんが、その境遇を思うと同情せずにはいられません。

ペイトンが赴任した家庭には、優しい夫と愛らしい娘、そして赤ん坊がいます。一方の彼女は、夫を失い、自身も妊娠中のショックで流産し、二度と子供を産めない体になっています。ペイトンは単なる殺人鬼ではなく、「理不尽に母性を奪われた女性」として描かれており、その悲しい過去があるからこそ、完全には憎みきれない人物にも映ります。

女性たちの激しい情念が渦巻く物語の中で、知的障害のある誠実な黒人青年ソロモンの存在も印象的でした。彼はペイトンの異常性にいち早く気づき、家族を守ろうと勇敢に立ち向かいます。その姿は、本作における大きな救いとなっていたように感じました。