「傲慢と善良」 2024年製作 日本
萩原健太郎監督の映画『傲慢と善良』は、辻村深月(つじむら みづき)のベストセラー小説を原作に、藤ヶ谷太輔さんと奈緒さんのW主演で実写映画化した恋愛ミステリーです。
奈緒さんは、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)で、永野芽郁さん演じる主人公の親友役を務めていました。
結婚式を目前に控えたある日、真実が突然姿を消します。婚約者の架(かける)は必死に行方を追いますが、その過程で、控えめで穏やかだと思っていた彼女が抱えていた秘密を知ることになります。
本作は現代の婚活を舞台に、男女の価値観のすれ違いや、「傲慢」と「善良」という人間の本質を描いた作品です。誰もが持つ「自分を正当化してしまう傲慢さ」と、「環境や他人に依存してしまう善良さ」という二面性に鋭く切り込んでいます。
ただし、私は主人公の二人が「傲慢」と呼ぶほどひどい行動や言動をしているとは感じませんでした。むしろ二人とも、どちらかといえば善良な人間として描かれています。本作が今ひとつ強い印象を残さないのは、このテーマの描き方がやや穏やかすぎるからかもしれません。
「結婚したい気持ちはあるのに決めきれない」架(藤ヶ谷太輔さん)と、「親の敷いたレールの上で善良に生きてきた」不器用な真実(奈緒さん)。二人の姿には、自分自身を重ねてしまう場面があります。また、思わずハッとさせられるセリフも随所に登場します。
架は婚活で女性と会った後、「婚活は就職活動に似ている。恋愛の楽しい部分が薄められ、社会的な価値だけが試される」と感じます。この言葉は、私がテレビなどで婚活の様子を見るたびに抱いていた違和感を、見事に言語化しているように思いました。
その後、架と婚活相手との出会いが何度か描かれた後に登場する真実は、純粋で清楚な印象を与えます。さらに、飲食店で隣にいたおばあさんが飲み物をこぼした際、とっさに「大丈夫ですか?」と声をかけて、自分の椅子に置いていたバッグの中身をぶちまけてしまいます。
その不器用さもまた彼女の魅力として映ります。こうした美しさと親しみやすさを兼ね備えた女性に出会えば、多くの男性が心を奪われるのではないでしょうか。
その後、架はホームパーティーで会った真実について、女友達二人からこんな評価を聞かされます。
「あの子、なんか頑張りすぎている感じ」
「分かる! “私、いい奥さんになります”っていう感じ」
すると、男友達がこう返します。
「ほんと、お前ら感じ悪いな」
さらに架も言葉を続けます。
「あのね、君たちと違って彼女は善良なんですよ」
一見すると意地の悪い女友達の発言ですが、実はこの言葉こそが物語の重要な鍵になっているところが興味深いです。
ところで、本作に関する藤ヶ谷太輔さんと奈緒さんのインタビューを読むと、二人とも原作に深い思い入れを持っていることが分かります。藤ヶ谷さんは原作を「人生で一番好きな小説」と語り、奈緒さんも辻村作品の熱心なファンです。
奈緒さんは「初めて読んだ辻村さんの作品は『凍りのくじら』でした。本を読むようになったきっかけの一冊です」と語っています。原作への深い愛情を持つ二人が主演を務めたことも、本作の大きな魅力の一つといえるでしょう。
参照:キスマイ藤ヶ谷太輔&奈緒に聞く、婚活への本音【「傲慢と善良」インタビュー】
