「BEEF/ビーフ シーズン2」 2026年製作 アメリカ 原題:Beef Season 2
Netflixドラマ『BEEF/ビーフ シーズン2』は、日常のささいな出来事をきっかけに、人間関係が連鎖的に崩れ、物語が思いもよらない方向へ進んでいく作品です。タイトルの「BEEF」は、日常に積もった不満や、特定の相手に抱く根深い怒りを意味しています。
シーズン2では、高級ゴルフクラブで働く若いカップルが、上司夫妻の激しい口論を偶然目撃し、その様子を録画したことで事態が大きく動き始めます。熟年夫婦と若いカップル、それぞれの対立に加え、富裕層と従業員の格差に潜む狂気が描かれています。
なかでも強く印象に残ったのが、若い女性アシュリーを演じたケイリー・スピーニーでした。

ある夜、恋人と車で帰宅する途中、アシュリーは彼を問い詰めます。すると彼は、職場で知り合った韓国人女性に惹かれていると打ち明けます。「私と別れたいの?」「君を愛しているから正直に話しているんだ」。そう語る彼に対し、アシュリーは動揺を隠せません。
やがて彼女は、走行中の車のドアを突然開け、そのまま道路へ転がり飛び出します。「捨てられる……捨てられる……」とつぶやきながら、呼び止める彼を振り切り、「来ないで、頭を冷やしたい」と暗い茂みの中へ進んでいきます。しかし足を滑らせ、坂道を転げ落ち、最後は沼のような場所に落ちてしまいます。
額から血を流すアシュリーを、彼は病院へ運びます。ですが病院内は異様な空気に包まれていました。入口では半裸で嘔吐している患者と遭遇し、待合室には椅子に座れず床に直接座り込む人々の姿もあります。血のにじむ包帯を巻き、サングラスをかけた男性が、じっと彼女を見つめ続けています。そんな状況でも、4時間たっても診察の順番は来ません。
彼が受付で「精神的に危険な状態です」と訴えると、「記録では膝の腫れとなっています。精神症状なら別の受付が必要です。その場合、今の順番は失われますが?」と冷たく返されます。「あとどれくらいですか」と尋ねても、「席に戻ってください」と突き放されるだけでした。
待ち時間の末、アシュリーは激痛で失神します。ようやく病院側は緊急対応に切り替え、彼女を担架に乗せて手術室へ運びます。看護師は「卵巣捻転の既往があります」と叫びながら廊下を駆けていきます。
翌朝、目を覚ましたアシュリーに、彼は静かに告げます。「卵巣は摘出するしかなかった。血流が止まっていたんだ。ショック状態になる前に手術した」
彼が病室を出た後、アシュリーは感情を抑えきれず崩れ落ちます。卵巣を失った現実に打ちのめされ、泣きじゃくる姿はあまりに生々しく、見ている側の胸を締めつけました。
その後、彼は「浮気はしていない。でも、もう君を愛していない」と別れを切り出します。するとアシュリーは、病院から届いたメッセージを彼に見せます。それは、体外受精によって子どもを授かった可能性を知らせる内容でした。
その瞬間、彼のスマートフォンに、想いを寄せる韓国人女性から電話が入ります。彼が応答しようとすると、アシュリーは引き止めます。
「私たちは、お互いの最低な部分まで知っている。でも彼女にも、きっと最低な部分はある。あなたは同じことを繰り返さないと言い切れる?」
そして彼女は続けます。
「目を閉じて。10年後の私たちを想像して。かわいい子どもがいて、その子はあなたにそっくり」
その言葉に彼は少し黙り込み、「……俺に似てる?」と尋ねます。アシュリーは静かに「ええ」と答えます。
8年後を描くラストシーンでは、結婚したアシュリー夫妻が車に乗り込みます。しかし夫の表情は晴れず、妻の言葉にもどこか上の空で返事をしています。
決して爽快感のあるドラマではありません。それでも、人間の弱さや執着、愛情と絶望が複雑に絡み合い、観る者の感情を激しく揺さぶります。登場人物たちの言葉は、生きることの苦しさと切実さを突きつけ、深く胸に残る作品でした。
