「ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語」2025年製作 韓国 
原題:서울 자가에 대기업 다니는 김 부장 이야기

 

『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』は、エリート意識の強い中年男性が突然の転落と挫折を経験し、家族や部下との関係を見つめ直しながら、本当の自分と人生の喜びを見つけていくドラマです。


ソウルの一等地に家を構え、出世街道を突き進むキム部長(キム・ナクス)は、大企業の部長であることを何よりの誇りにしています。自分より立場が下の人間が高級車を所有していたり、ブランドバッグを持っていたり、より良いマンションに住んでいたりすると強く気にします。思わず「それより仕事に集中すればいいのに」と言いたくなるような、どこかせこい性格です。


営業時代は優秀だったものの、管理職としては結果を出せず、部下からも陰で軽んじられています。


プライドは高いものの、どこかずれていて憎めないキム部長の姿は、独特のユーモアを生み、序盤は軽快なコメディとして楽しめます。しかし、仕事の失敗で左遷され、すべてを失った後に見せる哀愁には、笑いだけでは済まされない重みがあります。


頑固だったキム部長は、左遷先の地方工場で、犬のふんの処理まで任される屈辱を味わいます。「トイレの詰まりの直し方とふんの処理しか教わっていません」と引き継ぎ担当に訴えるものの、実際には形ばかりの安全管理が仕事という状態です。それでも次第に周囲と向き合い、人生を立て直していく姿には心を動かされます。


工場では昼食を全員で食堂でとります。従業員たちは一斉に食堂へ走り込み、まるで毎日が短距離走のような光景が広がります。年齢や性別を問わず、全員が必死な表情で走る様子が印象的です。


出遅れて食堂に着くと、バイキング形式のため人気のない残り物しか残っておらず、質素な食事になってしまいます。


ある日、世話をしていた犬が逃げ出し、それを追ううちに工場から食堂までの近道を発見します。その後は常に先頭を走る女性班長に追いつき、ついには先頭で食堂に滑り込みます。


食事にかける執念と負けず嫌いな性格が際立つこの場面は、滑稽さと可笑しさが入り混じり、名場面として強く印象に残ります。


本作はキム部長を中心に、登場人物それぞれの思いが交錯する群像劇でもあります。会社勤めの人であれば、身近に似た人物や状況を重ね、強い共感を覚えるはずです。ドラマ『ミセン』(2014)に並ぶ、優れたお仕事ドラマだと感じました。