
「善き人に悪魔は訪れる」2014年製作 アメリカ 原題:No Good Deed
サム・ミラー監督の『善き人に悪魔は訪れる』は、嵐の夜に親切心から殺人犯を家に招き入れてしまった主婦が、子どもたちを守るために恐怖のサバイバルを繰り広げる心理密室サスペンスです。
上映時間は84分と洋画としては短めで、ストーリーに無駄がなく、最後まで緊張感が続きます。2014年9月に全米公開され、初登場1位のヒットを記録しました。
酒場で男性を暴行して殺害した容疑で逮捕されたコリンは、仮出所の審議委員会に出席しています。女性4人の行方不明事件の重要参考人でもあったため委員の同意を得られず、仮出所は取り消されます。
冒頭では、コリンが審議委員会からの帰りの護送車の中で「手を貸してくれ。鼻血だ」と言います。この何気ない一言と巡査の動作をきっかけに状況が一変し、脱走へとつながります。この場面からも、展開のスピード感に引き込まれます。
夫の留守中にコリンを招き入れてしまったテリーは、娘たちを守るため家にある物を駆使して立ち向かいます。タラジ・P・ヘンソンが見せる勇気ある演技が印象的です。彼女は2008年公開の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』でアカデミー助演女優賞にノミネートされています。
ただし個人的には、もう少し見た目の印象が異なる女優でもよかったのではないかと感じました。そのほうが、凶悪犯が家に入り込む状況によりスリルが生まれたように思います。
逃亡中の凶悪犯コリン・エヴァンスを演じるのはイドリス・エルバです。親切な男を装いながら一瞬で殺人鬼へと変わる表情や態度が恐怖を引き立てます。筋肉質な体つきながら、どこか知性を感じさせる点も特徴です。悪人に見えにくい点が、この設定に合っています。
サム・ミラー監督は、エルバ主演で人気を集めたテレビシリーズ「刑事ルーサー」の演出も手がけており、本作も手に汗握るスリラーに仕上げています。
短時間で見終えられる作品ですが、ラストでテリーが夫に平手打ちをする理由が分かりにくく感じました。後からあらすじを確認してようやく理解できました。細部がやや伝わりにくい印象もありましたが、自分の見落としかもしれません。また、コリンがなぜ彼女の家を狙ったのかも後になって理解できました。