神社に油をまくという前代未聞の事件が2015年に起きました。被害は16都道府県、48か所に及びました。当初は、炎上を狙う迷惑ユーチューバーのような軽薄な犯行だと思い、さほど関心を持ちませんでした。しかし、犯人がアメリカ在住の元産婦人科医だと知り、調べるほどに複雑で異様な背景が浮かび上がってきました。

● 建物に油のような液体をかけた事件
2015年、千葉県内の寺社に油のような液体をかけたとして、県警はアメリカ在住の男の逮捕状を取りました。その後、日米の犯罪人引き渡し条約に基づき、男の身柄はアメリカから日本へ引き渡され、建造物損壊の疑いで逮捕されました。

逮捕されたのは、ニューヨーク在住の医師で、キリスト教系宗教団体の創立者でもある金山昌秀容疑者(63)です。成田山新勝寺や香取神宮に液体をかけた疑いが持たれています。

事件後、金山容疑者はアメリカへ渡りました。日本側は身柄の引き渡しを求め、アメリカの裁判所もこれを認めましたが、本人が上訴したため、実現までに長い時間がかかりました。

● 「キリストの声が聞こえる」と主張
金山容疑者は東京都内の名門校を卒業後、17歳でキリスト教と出合い、単身渡米しました。ウィスコンシン州立大学医学部などで学び、ニューヨークで産婦人科医として開業します。2013年には日本で宗教団体を設立し、帰国のたびに活動を広げていました。

インターネット上には、「東日本大震災は“日本の君(きみ)”の首の骨を折るための神の意思」「呪われている寺社などを油を注いで清めた」などとする動画を投稿していました。自らを「キリストの啓示を受ける存在」と称し、信者に預言を語っていたといいます。元関係者は「指示は絶対で、逆らえば罵倒された」と証言しており、強い支配体質がうかがえます。

当時の報道関係者によると、金山容疑者は韓国出身で1979年に帰化し、韓国系キリスト教団体と関わりがあった時期もあるといいます。一部では海外の宗教団体が支援しているとの情報も取り沙汰されました。

かつて交流があった牧師は、「震災後に様子が一変した」と語っています。「日本を目覚めさせなければならない」「各地の山を巡り油で清めた」と話すようになり、独自の団体を築こうとしていたため、危険を感じて距離を置いたといいます。

また、私生活でも不可解な言動がありました。結婚から数年後、妻の頭に蛇のようなものが見えたと主張し、「本当の正体を明かせ」と迫った結果、「フリーメーソンのスパイだ」と告白されたとして離婚したというのです。事実関係は不明ですが、強い妄想を抱いていた可能性がうかがえます。

● 医師としての評価
一方で、医師としての腕前は高く評価されていました。診察は丁寧で、手術の技術も優れていたと複数の患者が証言しています。日本の医師からも技術を称賛された例があったといいます。ただし、頻繁に日本へ帰国して連絡が取れなくなる点には不満の声もありました。

キリスト教関係者からは、「油で清める行為は聖書とは無関係だ」との指摘も出ています。「誤った解釈によるもので、宗教間の対立を招きかねない」と懸念を示しました。

確かな医療技術を持ちながら、なぜこのような行動に至ったのかは依然として謎です。知人は「真面目で穏やかな人だった」と語っています。その人物像と寺社への損壊行為との落差は大きく、理解は容易ではありません。

参照:寺や神社に“油”かけたか 日本移送中に逮捕のNY在住医師「異議ありません」
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