ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのフィギュアスケートで、三浦璃来(24歳)選手と木原龍一(33歳)選手の「りくりゅう」ペアが出場しました。ショートプログラムではミスがあり5位と出遅れましたが、2月17日のフリーで大逆転し、金メダルを獲得しました。

このときの二人の演技は、緊張感に満ちた美しさで、まるで魔法のようでした。4分間の完璧な滑りは、自然と涙を誘いました。

● 美しいものには見とれ、感応する
産経新聞の記事によると、二人の演技は別の場所でもドラマを生んでいました。ウェルケアガーデン馬事公苑の晴山和幸さんは、「私が働く老人ホームでも、スポーツ好きの入居者さんたちは寝不足に…」と切り出し、次のようなエピソードを紹介しています。

『80代のAさんは、入院中の転倒で要介護5に。(日常生活のほぼすべてにおいて、常時介護が必要な状態)リハビリを重ね、現在は車いすで移動できるようになり、穏やかに過ごされていますが、かつては体の節々の痛みで大声を出したり、落ち着かない様子が目立つ時期もありました。 

そのAさんが「りくりゅう」のフリーの演技をテレビでじっと観戦し、終わった瞬間、頰に一筋の涙を流しました。Aさんが心を震わせ感動している様子を見て、私は胸がいっぱいになりました。 

老いが進み、ぼんやりとしているような時間が増えると、その人らしさや、感情の動きが、周りからは捉えづらくなることがあります。何も考えていないのでは? どうせ覚えていないのでは…。そんなふうに見られてしまう。 

でも、やはり美しいものには見とれ、感応する。年を取り、表情や言葉による表現がおぼつかなくなった人にも、こういった心の動きがあることを忘れないようにしていきたいです。』

● 結婚するしかないね
このように人の心を揺さぶる二人の演技を見て、妻は「もう結婚するしかないね」と言いました。しかし、金メダルを獲得したあの瞬間が最高の輝きだからこそ、ぼくは結婚しないほうがよいのではないかとも感じました。

これほど世界を沸かせた二人が結婚し、もし別れることになれば、会見を開くことになるかもしれません。あくまで想像にすぎませんが、そのような場面は見たくないと思いました。

それぞれが別の人生を歩みながら、オリンピックでともに過ごした時間をかけがえのない思い出として心に残す。それもひとつの形ではないかと思ったのです。

結婚という日常をともにする生活は、場合によってはスケートで見せた二人の輝きを曇らせてしまう可能性もあります。

そのように考えていましたが、2月23日に放送されたNHKスペシャル『絆でつかんだ金メダル りくりゅう 二人の軌跡』を見て、気持ちが揺らぎました。番組では、互いを思いやる言葉や態度が随所に見られました。

三浦選手は木原選手について、「隣にいるのが当たり前のような存在です。いてくれないと困ります」と笑顔で語りました。

一方、木原選手は三浦選手について、「史上最高のパートナーです。璃来ちゃん以外は考えられません。もし生まれ変わってもう一度ペアを組むなら、必ず璃来ちゃんとチームを組みたいです」と語り、番組は締めくくられました。

番組からは、片時も離れがたい絆が伝わってきました。二人の間には、他の誰かが入り込む余地はないのではないかとさえ感じます。余計なお世話かもしれませんが、やはり結婚するのが自然なのかもしれないと思いました。

参照:「りくりゅうペア」魂の演技に心震えて、入居者さんの頰に一筋の涙 老人ホーム五輪秘話