「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」1992年製作 アメリカ 原題:Scent of a Woman

マーティン・ブレスト監督の『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』は、盲目の退役軍人と道案内役の青年が旅を通して心を通わせていく姿を描いたヒューマンドラマです。

アル・パチーノは盲目の退役軍人フランクを熱演し、アカデミー主演男優賞を受賞しました。

全寮制高校に奨学金で通う高校3年生の苦学生は、アルバイトで盲目の退役軍人フランクの世話をすることになります。初対面でいきなり「入れ、バカ者」と言われ、言葉に詰まると「どうした、死んじまったのか?」と畳みかけられます。最後には「まだいるのか? 行け、下がれ」と追い出されてしまいます。

「僕、失敗したようです。落第です」と学生が姪に告げると、「落第も何も、応募者はあなただけなのよ。伯父はよく眠るからテレビでも見ていて。それで300ドルなのよ」と引き留められます。

フランクの傲慢で気難しい態度、焦点の合わない視線のリアルな演技、そして芯から人を圧倒する大きな声は、まさにアル・パチーノにぴったりの役だと冒頭から感心させられます。

飛行機の中でフランクは、自分がいかに女性を愛しているかを学生に語ります。

「女の髪・・・カールした女の髪に鼻を埋めて永遠に眠りたいと思ったことがあるか?
女の唇・・・女の唇は砂漠を横切った後で・・・初めてふくむワインの味がする
乳房・・・デカい乳房 小さな乳房 サーチライトのようにこっちを向いている乳首
女の脚・・・ギリシャ女神のような脚でも 多少曲がっててもいい 脚と脚との間 天国へのパスポートだ」

青年はあきれながらも「女好きなんですね」と返しますが、フランクのその言葉の端々には独特の美学が感じられます。

また、目が見えない分、女性の香りには人一倍敏感です。レストランで一人で連れを待つドナの存在にも、
「そばに誰か?石ケンのいいの香りが漂ってくる、そばに誰かいるか」
と学生に確かめる場面が印象的です。

フランクは「男は死ぬまで女に興味を持つ」と語り、突然ドナに「席をご一緒しても? お独りのようで」と声をかけます。最初は戸惑われますが、「ご一緒に待ってもいいかな。いやらしい男が近づかんよ」と続け、半ば強引に同席します。さらに彼女の使っている石けんを「オグルビーの石ケン」と言い当て、タンゴに誘います。

踊りを間違えるのが怖いというドナに、フランクは「タンゴは人生と違って間違いがない。足が絡まっても踊り続ければいい」と語ります。このタンゴの場面は非常に美しく、踊り終えたときにレストランの客席から拍手が湧き起こるのも納得です。映画史に残る名シーンといえます。

フランクの毒舌は周囲を遠ざける鋭さを持ち、その結果、盲目であることも重なって自らを孤独へと追い込みます。そしてついには自殺を考えるまでに至ります。

学生はフランクの「最後の旅」に付き添い、彼を思いとどまらせます。フランクはその恩返しとして、学生が抱える学校での問題解決に力を貸します。校長から厳しい尋問を受ける学生を守るため、講堂で堂々と演説し、感動的な弁論を行います。それは学生への大きな恩返しとなります。

青年と退役軍人は互いに救い合い、それぞれの人生に光を与え合います。本作は、時代を超えて愛される名作です。