放火と聞くと、ぼくの頭には強く印象に残っている二つの事件が思い浮かびます。

一つ目は、京都アニメーション放火事件です。実行犯の男を含め、70人もの死傷者が出ました。内訳は、36人が死亡し、34人が負傷するという、あまりにも痛ましい事件でした。

もう一つは、諏訪地方連続放火事件です。諏訪市在住で、自称「熊田曜子そっくりさん」を名乗り、「くまぇり」として知られていた当時20歳の女性が、9件の放火事件を起こしました。

月刊誌「創」には、本人が刑務所で描いた、色鉛筆で着色されたマンガが掲載されており、それが非常に上手で、独特の味わいがありました。彼女は2016年に出所しています。


 

そして先週の火曜日、2月3日に放送された番組「ザ!世界仰天ニュース」では、放火事件が二つ取り上げられていました。そのうちの一件が、特に忘れられない事件として心に残りました。

● 火事を知らせた30代くらいの男
それは、2019年9月に福岡市早良区の住宅地で相次いで起きた連続放火事件です。どちらの火災現場にも、建物の持ち主に火事を知らせた30代くらいの男がいました。捜査の結果、その男は中屋斉(なかや・ひとし)という人物で、合計9件の放火に関与していたことが判明しました。

番組では、
「時に人の命や財産を奪い、死刑の可能性すらある重罪である放火を、なぜやめられなかったのか。その心の闇とは何なのか」
というナレーションとともに、中屋斉の再現実録が紹介されていました。

番組スタッフは、連続放火事件で服役中の中屋斉に対し、「なぜ犯行に至ったのか」という質問を手紙で送りました。すると、中屋から返事が届いたそうです。

その手紙には、突然の連絡への謝罪から始まり、自身の事件について番組で特集されることへの思い、専門家の意見に対する関心、そして同じように生きづらさを抱えながら事件を起こした人々への思いなどが、丁寧に綴られていました。

 

また、放火した時の気持ちに関して「パチパチと音をたてて燃えていく様子を眺めて、何だか心の奥からドキドキするような気持になって、とても興奮したのを覚えています。」と、書いていました。

番組では、中屋斉が書いた自筆の手紙のほんの一部だけが紹介されていました。文字は非常に読みやすく、内容も整理されており、できることなら全文を読んでみたいと思わせるものでした。

● 出所して、わずか1日目の出来事
中屋には前科があり、28歳のときに倉庫へ放火し、さらに窃盗も重なって、懲役5年6か月の判決を受けて服役していました。

2019年に出所した中屋は、解体業の仕事に就きますが、強いストレスにさらされるようになります。ある日、衝動に駆られてコンビニでライターを購入し、気づけば火をつけてしまっていました。出所して、わずか1日目の出来事でした。

中屋はシングルマザーの家庭で育ち、母親は喫煙者でした。幼い頃、母親のライターを持ち出し、「何を燃やしたらどうなるのだろう」という好奇心から、家の周囲にあった落ち葉を集めて火をつけたことがありました。それが、後の連続放火につながる最初の体験でした。

燃え上がる落ち葉を眺めながら、強い興奮を覚えたことを、今でもはっきりと記憶しているといいます。その後、中屋は放火を何度も繰り返すようになりました。

24歳のときには警備会社に就職しましたが、仕事に適応できず、自分自身への嫌悪感とストレスが募っていきました。そして、人目のない車庫で、デッキブラシに火をつけてしまいます。

中屋は、「ストレスがすっと軽くなる感覚があった」と語る一方で、誰かに被害が及ぶことへの恐怖も感じていました。そのため、放火の後には、強い罪悪感を抱きながら、近隣の住人に火事を知らせていたそうです。

● 依存症にも似た悪循環
衝動に突き動かされて放火をし、直後に罪悪感に苛まれるという行為の繰り返しは、薬物依存やギャンブル依存、クレプトマニアといった依存症にも似た悪循環でした。

2020年3月、中屋は福岡市早良区で発生した3件の不審火への関与が認められ、懲役7年の判決を受けました。服役中も、ストレスから放火したい衝動に駆られることがあったといいます。

番組を見てこの事件に関心を持ち、詳しく調べようと「中屋斉」や「放火 早良区」で検索してみましたが、当時の報道はほとんど見つかりませんでした。約6年半前の事件ともなると、多くのニュースサイトから情報が消えてしまうのでしょうか。



現在の刑務所では、放火を繰り返す人に特化した専門的なプログラムは、まだ十分に確立されていません。ただし近年は「拘禁刑」という制度が導入され、放火に至る動機や目的、背景にあるさまざまな要因に向き合うことで、再犯を防ぐ取り組みが進められているといいます。

参照:連続放火犯 獄中からの手紙 やめたくてもやめられないその心の闇に迫る