先週、東京・上野や羽田空港、さらに香港で、巨額の現金を狙った強盗事件が立て続けに発生しました。被害総額は6億円を超えており、極めて異例の事態です。
● 捜査の進展が早い香港
最初の事件は1月29日午後9時半ごろ、東京・上野で起きました。路上で、現金約4億2000万円が入ったとみられるスーツケースが奪われ、犯人らが乗った車は一方通行を逆走して逃走したといいます。

続いて、約2時間40分後の1月30日午前0時10分ごろ、羽田空港第3ターミナル近くの駐車場で、現金約1億9000万円を狙った強盗未遂事件が発生しました。さらに同日、被害者らが向かった香港で、現金約5100万円が奪われる三つ目の事件が起きています。
これらの事件でまず驚かされるのは、被害金額の大きさだけでなく、多額の現金がスーツケースに入れられ、人の手で運ばれていた点です。銀行振り込みが一般化した現在、このような方法で現金を移動させることは、ほとんどなくなっていると思われていました。

また、犯罪が日本と香港にまたがって展開している点も印象的です。香港では事件翌日に容疑者が逮捕され、2月2日には起訴された4人の初公判が開かれました。捜査の進展が早い香港と比べると、日本の捜査には時間がかかっているようにも見え、今後の逮捕の行方が注目されます。
● 上野で「第一の事件」
上野で起きた最初の事件では、日本人と中国人の男女7人が、口元を隠した男3人組に襲われました。
現金入りのスーツケースを車に積み込んでいた際、中国籍の40代男性が催涙スプレーをかけられ、現金4億2千万円を奪われたといいます。犯人らは逃走中、リュックサックを指して「リック」と繰り返しており、被害者は中国語特有のイントネーションだったと話しています。
現場にいた日本人男性は、自身を社長と名乗り、日本円を羽田経由で香港へ運び、香港ドルに両替する仕事をしていると説明しました。100万円を超える現金を海外に持ち出す場合、税関への申告は必要ですが、持ち出し額そのものに上限はありません。運搬役の人々は、1回につき3万円の報酬で現金を運ぶ約束だったと話しています。
● 羽田で「第二の事件」
羽田空港での二つ目の事件では、両替商の日本人男性に対し、車に乗った4人組が接近し、催涙スプレーを噴射しました。
車には、仕事仲間3人と約1億9000万円が入ったスーツケースがありました。
ハンマーで車の窓を叩かれる被害もありましたが、現金は奪われず、未遂に終わっています。犯人らが使用していた白いプリウスは偽造ナンバーを付けた強盗車両で、後に神奈川県厚木市の河川敷で発見されました。
● 香港で「第三の事件」
その後、被害者らが到着した香港で三つ目の事件が発生します。羽田事件と香港事件の被害者は同一人物で、短時間のうちに二度も現金を狙われたことになります。入国直後、香港島・上環の両替所付近で、現金5100万円入りのリュックサックが奪われました。
香港警察は約6時間後、この事件に関与したとして日本人と中国人の男女6人を逮捕しました。その中には、被害者の一人とされていた鈴木悠介容疑者も含まれており、警察は内通者だったとみています。鈴木容疑者は、移動ルートや到着時間などの情報を強盗側に伝えていたとされています。
起訴された4人のうち3人は日本人で、実行犯とされる下村桂吾被告と山口将人被告、内通者とみられる鈴木被告、そして通訳とされる中国籍の女性です。4人全員の勾留が認められ、次回の公判は4月14日に予定されています。
● 差益を見越した両替ビジネス
では、なぜ大量の日本円が香港へ運ばれていたのでしょうか。テレビ番組で取り上げられているのは、香港では金が“非課税”で購入できる点です。
香港メディアによると、2025年3月に、香港から日本へと大量の「金」を密輸しようとして摘発される事件が発生。その量は約145kg、日本円で約22億円近くにのぼります。香港から日本に金を密輸する目的は、香港では金が“非課税”で購入できる点を悪用した手口だといわれています。
例えば、日本から現金1億円を香港に持ち込み、非課税の香港で金1億円分を購入します。その購入した金を日本に持ち込む際、「密輸」することで、本来税関に支払う10%の消費税を踏み倒し、そのまま日本で売却。
すると、売却時は消費税10%を含んだ1億1000万円で売れるため、1000万円の“利益”が発生するといいます。
しかし、羽田事件の事情を知る関係者はこう明かしています。
背景として指摘されているのが、差益を狙った両替ビジネスです。香港では外貨や暗号資産への交換が比較的容易で、まとまった現金を持ち込めば、わずかな利幅でも利益を得られるといいます。これを繰り返すことで、年間に多額の利益を上げるケースもあり、一部では密かなトレンドになっていたとされています。
日本と香港を舞台に、半日足らずで約4億7000万円が奪われた一連の事件。現実に起きた犯罪として、その全容解明と早期の解決が待たれます。
参照:【4.2億円強奪事件】スーツケースに現金計4億2300万円…責任者「日本円を香港ドルに替える」
上野・羽田・香港で計6億円が狙われる巨額の現金強盗事件…逮捕の容疑者に内通者の日本人
“被害者”を逮捕・起訴…上野・羽田・香港“多額の現金狙い”3つの事件 4人初公判
