フィリピンを拠点に「ルフィ」などと名乗る指示役が関与した広域強盗事件を巡り、検察側は2月5日、強盗致死などの罪に問われている犯罪組織の元幹部の男に対し、無期懲役を求刑しました。

起訴されているのは、犯罪組織の幹部だった藤田聖也(としや)被告(41)です。藤田被告は、2022年以降に相次いだ「ルフィ」などの偽名を使う指示役による強盗事件や、複数の特殊詐欺事件に関与したとして、強盗致死や窃盗などの罪に問われています。

検察側は「過去に例のない凶悪事件」として無期懲役を求刑し、弁護側は有期刑が相当と訴え、結審しました。判決は今月16日に言い渡される予定です。

● 「ルフィ」という名前だけが独り歩き
そもそも「ルフィ」という呼び名は、少年漫画『ONE PIECE』の主人公を連想させます。そのため、凶悪な犯罪の実態とは結び付きにくく、違和感を覚える人も少なくありません。

藤田被告が所属していた広域強盗・特殊詐欺グループでは、指示役たちが「ルフィ」や「キム」など、複数の偽名を使い分けて犯行を指示していました。

 

事件が社会問題化する中で、主犯格の正体が明らかになる前から「ルフィ」という名前だけが独り歩きし、指示役の象徴として定着しました。その影響で、藤田被告も「ルフィグループの幹部」として報じられるようになりました。



捜査や裁判を通じ、幹部たちはフィリピンの収容施設から通信アプリ「Telegram」を使い、複数のアカウント名で実行役に指示していたことが分かっています。役割分担も明らかになっており、藤田被告は主に「キム」や「ミツハシ」といった名義を使用していたとされています。

 

一方、今村磨人被告は「ルフィ」を名乗って直接指示を出し、渡辺優樹被告はグループの最高幹部として複数の偽名を使っていた疑いがあります。また、小島智信被告は資金管理などを担当していました。

今村被告は漫画『ONE PIECE』の熱心な愛読者で、作中の名場面や台詞を暗記するほどだったといいます。「ルフィ」という偽名も、そうした嗜好から選ばれたものでした。

 

同様に、「ミツハシ」は『今日から俺は!!』の主人公の名字から、「白鳥たつひこ」は『新宿スワン』の登場人物から取られたとされ、偽名はいずれも好きな漫画に由来していました。

この「ルフィ」という名前は、テレビ番組でも思わぬ形で取り上げられました。2023年2月7日、特殊詐欺に関与した疑いで、フィリピンから日本へ移送中だった今村容疑者と藤田容疑者が機内で逮捕され、その様子が速報で伝えられました。

昼の情報番組「ぽかぽか」では、「速報 “ルフィ”逮捕」とのテロップが流れ、出演者の岩井勇気さんがこれに反応しました。岩井さんは「ルフィ逮捕です」「みなさん、ルフィ逮捕となりました」などと繰り返し、笑いを誘いましたが、この発言には「重大事件を軽く扱っている」「被害者への配慮に欠ける」といった批判も寄せられました。

● 暴行を想定していなかった
では、藤田被告は具体的にどのような役割を担っていたのでしょうか。

起訴状などによりますと、藤田被告は2022年10月から2023年1月にかけ、仲間と共謀し、1都3県で住宅や店舗を狙った強盗事件7件に関与しました。これらの事件では、凶器を使った暴行により1人が死亡し、5人が負傷しました。被害額はおよそ1億円に上るとされています。

中でも、東京都狛江市で90歳の女性がバールで殴られ死亡した強盗致死事件を含む7件について、藤田被告は実行役に指示を出したとして責任を問われています。一方で、特殊詐欺事件への関与は認めたものの、強盗事件については「暴行を想定していなかった」「現場の状況は把握していなかった」と述べ、一部を否認しました。

弁護側は最終弁論で、藤田被告が当時収容されていたフィリピンの施設で、上位幹部から強い支配を受けていたと主張しました。そのうえで、「指示を拒否できない状況で、強制的に犯行に関わらされた」として、藤田被告はあくまでほう助犯にとどまると訴えました。

裁判の最後、藤田被告は被害者や遺族に謝罪したうえで、「お金に困って闇バイトや犯罪に手を染める前に大切な人のことを思い出して、思いとどまってほしい」と述べました。

参照:「ルフィ強盗団」最高幹部の獄中告白…広域強盗事件幹部がマンガのキャラの名前を名乗った訳
             「ルフィ事件」指示役の藤田聖也被告に無期懲役求刑…弁護側は「有期の懲役刑が相当」と主張
              なぜ容疑者名ではなく「ルフィ」と呼ぶのか…連続強盗事件でキャラ名を連呼する報道への違和感