「落下の王国 4Kデジタルリマスター」2006年製作 アメリカ 原題:The Fall 劇場公開日:2025年11月21日
 

青森駅から徒歩10分ほどの場所にあるシネマディクトで、「落下の王国 4Kデジタルリマスター」を鑑賞してきました。我ながら景色がかすむほどの激しい吹雪の中、映画館を目指して歩き続けた自分を振り返り、よく出かけたものだと感心してしまいました。

物語の舞台は病院の入院室です。入院中の5歳の少女アレクに、映画撮影中の事故で重傷を負い、同じ病院に入院しているスタントマンが即興の冒険物語を語り聞かせます。しかしその裏には、彼が自ら命を絶つため、少女に薬を盗ませようとする思惑が隠されています。

本作はターセム・シン監督が世界24か国以上、13の世界遺産を含むロケ地で撮影した作品で、息をのむほど美しい風景が最大の売りとされています。加えて、アカデミー賞を受賞した石岡瑛子による、独創的で華麗な衣装も見どころのひとつだとされています。

ここまで美術面の評価が高いと、物語が置き去りにされているのではないかという不安がよぎりました。映像表現に力を注ぐあまり、ストーリーが追いついていない映画は決して珍しくないからです。

残念ながら、その不安は当たってしまいました。物語はどうにも弱く感じられます。絶望の中にいる男が、無垢な少女との交流を通じて希望を見いだしていく過程を描こうとしたのでしょうが、その変化が十分に伝わってきません。

スタントマンの重い怪我や、恋人に去られた喪失感が観客に響かないため、少女の想像力によって語られる冒険物語が現実の人物と重なっていく展開にも、感情移入しづらく感じました。冒険譚と病院での現実が、最後まで別々に提示されているような印象を受けます。

ただし、美しい建築や壮大な風景による映像美は確かで、もう一度観たいと思わせる場面がいくつもあります。4Kデジタルリマスターによって色彩の奥行きや細部の表現が大きく向上し、映像そのものを楽しめる作品になっている点は評価できるのではないでしょうか。