北海道日高町で、飲食店の壁の内部に女性の遺体を遺棄したとして、49歳の男が逮捕されました。
● 壁の中に遺体を隠す
1月13日、この遺体は行方不明となっていた28歳の看護師、工藤日菜野さんであることが判明しました。工藤さんの遺体は、今月10日未明、日高町にあるバーの店内で発見されています。このバーを経営していたのが、死体遺棄の疑いで逮捕された松倉俊彦容疑者(49)です。
この事件について、「記事を見たとき、壁に穴を開けて遺体を埋めたのかと思った」というコメントを目にしましたが、ぼくも同じ印象を受けました。まるで昔の怪奇映画や小説のような、猟奇的な事件が起きたのだと感じたのです。
文学作品でいえば、エドガー・アラン・ポーの『黒猫』など、壁の中に遺体を隠す場面を描いた作品が思い浮かびます。
遺体は、客が行き交うダーツ台の裏手付近にある、縦横およそ40センチの穴の奥で見つかりました。その先には畳一畳分ほどの空間があり、穴はベニヤ板のようなもので塞がれていたといいます。この場所は、本来は物置として使われていたスペースでした。
「1月2日にバーの営業が始まりましたが、空気清浄機を複数台回すなか、たこ焼きパーティーをしていたことが分かっています。道警は1月3日には防犯カメラなどから松倉容疑者が関わっているとみて、任意聴取を開始。そして10日に工藤さんの遺体が見つかり逮捕したという経緯です」(地元事件担当記者)
司法解剖の結果、遺体は死後およそ10日が経過しており、死因は首を絞められたことによる窒息死とみられています。
● 計画性の乏しい犯行
犯罪心理学者で東京未来大学の出口保行教授は、今回の事件には計画性が感じられない点があると指摘しています。
出口教授は、「凶器がロープのようなものであったことや、遺体を外に運び出さず、店内に隠した点から、突発的に起きた事件とみています」と話しています。また、「外に持ち出せば人に見られる恐れがあるため、店内に置いておけば常に状況を把握できる。計画性の乏しい犯行では、こうした行動が見られる」と分析しています。
ただし、その「ロープのようなもの」が事前に用意されていたとすれば、衝動的な犯行ではなく、一定の計画性があったとも考えられます。実際に使われた凶器が発見されているのかどうかも、気になるところです。
● 大晦日の予定「31日は彼氏と会う」
工藤さんは、松倉容疑者の知人であり、遺体が見つかったバーの常連客でした。数年前から店に通っていたとされ、松倉容疑者とは地元の猟友会に所属するなど、複数の接点があったようです。
工藤さんは12月31日午後4時ごろ、自宅近くの店で買い物をする姿が防犯カメラに映っており、その後に事件に巻き込まれたとみられています。同日の夕方以降、行方が分からなくなりました。
工藤さんは祖母に対し、大晦日の予定について「31日は彼氏と会う」と話していたといいます。28歳の工藤さんの交際相手が49歳の松倉容疑者だったのかについては、年齢差が約20歳あることから疑問視する声もありましたが、交際していたこと自体は事実だったようです。
事件現場近くで店を営む経営者は、2人の関係について「噂を何度も耳にしていた」と話します。「松倉さんには妻子がいましたが、被害女性とも交際しており、金銭的なトラブルがあったとも噂されていました」といいます。
また、近隣の飲食店に勤める男性は、松倉容疑者について「陽気で親しみやすいと感じる人がいる一方、距離感が近く、苦手に思う人も多かった」と証言しています。「女性関係が派手だったかは分かりませんが、女好きな印象はありました」と話していました。
● 何事も否定から入るタイプ
別の男性は、「話し方がやや高圧的で、何事も否定から入るタイプだった」と振り返ります。閉店時間を過ぎても店に居座り、サービスを要求することもあったため、関わりたくないと感じていたそうです。
周囲でも松倉容疑者を苦手とする人は多く、経営するバーも客足が少なかった印象だといいます。そのため、今回の事件について「正直、やはりそうかと思った」と語っています。
松倉容疑者が酩酊することも多かったようだ。近隣で飲食店を営む女性オーナーがこう振り返ります。
「松倉さんは酒癖が悪くってね、ご自身のお店でもかなり飲んでいましたよ。しかもお客さんに高い酒を入れて、高額な請求をしてトラブルになったこともあったみたいですし。うちに来た時なんかは飲み過ぎて毎回寝てしまって、椅子を揺らしても起きない。だから強引に起こして帰ってもらうこともよくありました」
バーの客などに取材したところ、2人は頻繁に酒を飲んでいたようです。「松倉容疑者が工藤さんに耳打ちしながら内緒話をしていた」「距離が近くて親密そうだった」という証言も複数あがりました。
一方で、松倉容疑者と親交のあった別の飲食店経営者は、事件に強い衝撃を受けたと話します。「人に怒りをぶつけるような性格ではなく、酒が入って声が大きくなる程度でした。明るい人という印象です」と述べています。被害女性については顔見知り程度だったものの、交際の噂は耳にしていたといいます。
「小さな町なので、一緒にいるだけで噂になります。私も2人でいるところを見たことはありますが、仕事終わりに飲んでいるのだと思っていました。人を殺めるどころか、遺体を壁の中に隠すような事件を起こすとは想像できませんでした」と語っています。
● 『いずれ別れる』と話していた
事件現場のバーから約100メートル離れた場所にある一戸建てで、松倉容疑者は妻と幼い子どもと3人で暮らしていたといいます。近隣に住む30代の男性は、次のように話します。
「昨年の夏、何度か庭で家族とバーベキューをしていました。通りがかった私を誘ってくれたこともあり、そのときは夫婦仲も良さそうでした。ただ、周囲には『いずれ別れる』と話していたそうで、表向きとは違う事情があったのかもしれません」
松倉容疑者は、近所では羽振りが良い印象を持たれていたようです。高級感のある車やバギーバイクを所有しており、フォード製の大型ピックアップトラックにも乗っていたといいます。
ただし、その車は公道を走れない仕様で、普段は軽自動車を使用し、仕事では灯油販売のタンクローリーで通勤していたそうです。自宅が古い借家だったことから、生活ぶりに違和感を覚えた人もいました。
灯油配達とバー経営を掛け持ちしていた点や、店の客足が伸びていなかったという証言を踏まえると、見た目ほど裕福ではなかった可能性もあります。金銭感覚に無理があり、そのために働き続ける必要があったのではないかとも考えられます。
なぜ松倉容疑者は工藤さんを殺害するに至ったのか、その動機はまだ明らかになっていません。今後の捜査の進展が注目されます。
参照:〈北海道・壁のなかに看護師遺体〉「サービスしろって上から目線」競走馬を運ぶ仕事に従事
壁のベニヤ板の奥に遺体…被害者は28歳女性看護師 「31日は彼氏と会う」
「関係性が濃密であるほど一気にストレスを解消しようとする衝動が」犯罪心理学者が読み解く
