佐藤琴美被告は2024年9月16日、東京都中野区のタワーマンションの一室で、交際相手である公認会計士・溝谷侑也さん(26)の首をハサミで刺して死亡させたとして逮捕されました。

現場はJR中野駅近くの新築高級タワーマンションで、溝谷さんの部屋は約50平方メートル。不動産情報によると家賃は月30万円ほどとみられます。

● 「私はいったい、何? あなたの何?」
2人は事件当日、寿司店からの帰り道に言い争いとなり、マンション入口でも口論は続いていました。近隣住民によれば、佐藤被告は小柄で愛らしい雰囲気の女性だったが、「私はいったい、何? あなたの何?」と一方的に責め立てていたといいます。

2人は日常的にけんかが絶えず、別の住民はエレベーター内で度々口論を耳にしていたと証言します。溝谷さんは深夜、帰宅後もエントランスの休憩スペースでスマホを操作したまま動かないことがあり、「帰りたくないのか、追い出されたのかと不思議だった」と語りました。


また、佐藤被告は溝谷さんの悩みだった脱毛症を利用し、暴力的に支配していたとみられています。知るほどに痛ましい事件です。その裁判員裁判で、事故を主張する被告側に対し、東京地裁は故意を認め、懲役12年を言い渡しました。

● 致命傷は深さ約6センチ
「すみません、けんかをしまして。血が出ています、首から」9月16日午後7時ごろ、佐藤被告は溝谷さんの求めに応じて119番通報しました。

心肺蘇生を試みたが、溝谷さんは病院で死亡。佐藤被告は殺人未遂容疑で現行犯逮捕され、後に傷害致死罪で起訴されました。

公判で佐藤被告は「もみ合いの中で、いつの間にか刺さっていた」と故意を否定しました。しかし検察は、刃渡り約8センチのハサミが6センチも深く刺さった点から「振り下ろした」と指摘しました。

● ホストに入れ込み、風俗へ
佐藤被告は山口県出身。高専卒業後に上京し、1年で退職。大学進学を目指すもコロナ禍で断念し、アルバイトをしながらホスト通いにのめり込み、借金を抱えて派遣型風俗で働くようになりました。

そんな生活の中、2024年1月にマッチングアプリで溝谷さんと出会い、1カ月後には同居を始めました。4月、溝谷さんは脱毛症を隠すためにウィッグを着けていたことを告白しました。

佐藤被告は「99%受け入れていた」と述べましたが、LINEでは《ハゲすぎる。やっぱり毛がある人がいい》などと弱みを突き、関係を支配していきました。暴行や過度の監視も繰り返したとされます。

● ウィッグなしの写真で脅迫
「私たちには決まった形があった」と語った佐藤被告。溝谷さんはいつも先に謝り、逆らうことはなかったといいます。しかし事件当日、その“形”が崩れました。

外出中の口論で、いつもならすぐ謝る溝谷さんが反抗的な態度を見せました。佐藤被告は「ウィッグがない写真をSNSに載せる」「もう載せた」と脅し続けましたが、溝谷さんは応じませんでした。

帰宅後、佐藤被告は「落ち着かせようと思い、ハサミを持ち出した」と説明します。10秒ほど立ったまま揉み合った際、気づくと溝谷さんの首から血が流れていたといいます。

佐藤被告の行動は、弱みを握り相手を支配するための手段であり、裏を返せば、自分自身に誇れるものが何もなかったのかもしれません。

● 母親に深々と頭を下げ
最終意見陳述で佐藤被告は「故意ではない」と繰り返しつつ、「今後は誰にも依存せず、淡々と生きながら償っていく」と述べました。

そして溝谷さんの母親に向き直り、「大切な命を奪ったこと、申し訳ございません」と深々と頭を下げました。しかし、家族にとってはあまりにも理不尽な運命であり、謝罪も空虚に聞こえたことでしょう。

裁判では、検察が「ハサミを振り下ろした」と主張し、弁護側は「偶然刺さった」と争いました。

判決で宮田祥次裁判長は検察側の主張をほぼ認め、26歳という若さで将来の可能性を断たれた溝谷さんについて「結果は重大」と述べました。さらに、佐藤被告が不利な点を「覚えていない」と繰り返したことから「事件に向き合っていない」と判断しました。

まさに、知識と努力を積み重ねてきた若い溝谷さんの人生が突然奪われた事実は重い事です。懲役12年という刑も、佐藤被告に寄り添える部分がほとんど見当たらないことを思えば、短く感じられてしまうほどです。

参照:【中野タワマン殺人・前編】ハサミで彼氏の首を刺した女が無罪主張
   26歳公認会計士の交際相手をハサミで刺して死なせた女 被害者のDV支配 法廷から
   「私はあなたの何?」中野タワマン「公認会計士刺殺事件」“一方的な口論”