NHKのドキュメンタリー番組で、11月21日にNHK BSで「史上最悪の殺人鬼か 世紀の大冤(えん)罪か 〜ヘンリー・リー・ルーカス事件〜」が放送されました。これは見逃してはいけないと思っていたのですが、結局見過ごしてしまいました。

悔しさを感じていたところ、11月27日にNHK BSで9時から再放送されることがわかり、安心しています。

● 捜査当局が仕組んだ陰謀
『全米に衝撃を与えた史上最悪の連続殺人事件は、捜査当局が仕組んだ陰謀だったのか……。』

ヘンリー・リー・ルーカスの告白によって多くの殺人事件が明らかになりました。それが「捜査当局が仕組んだ陰謀」となると、数多くの殺人事件が再考されることになるのではないでしょうか。

「俺は全米各地で200人以上殺した!」──1983年、テキサスで軽犯罪で逮捕されたヘンリー・リー・ルーカスは、こう自白し、悪夢の殺人旅行を語りました。

現場検証では犯行の詳細を語り、世間は彼を殺人鬼だと信じ込んでいました。しかし、ある日突然「俺は殺していない」と自白を全て撤回したということです。

捜査当局がルーカスの虚言癖を利用し、彼を犯人に仕立て上げた陰謀の疑惑が浮上しました。

『最悪の殺人鬼か、世紀の冤罪の被害者か、前代未聞のどんでん返しの連続となった事件の結末と真相に迫る。』というキャッチコピーがあり、興味を引かれます。



なお、ルーカスは世界的に有名な連続殺人鬼であり、Netflixでもドキュメンタリー番組が放送されています。タイトルは「コンフェッション・キラー: 疑惑の自供」で、全5話、約4時間の内容です。

現在、2話目を視聴中で、ちょうどルーカスが「人を殺しても何も感じない。俺にとっては水を飲むのと同じなんだ」と語っています。

ルーカスは2001年3月12日に64歳で鬱血性心不全により亡くなりました。

● ルーカスの母親について
ヘンリー・リー・ルーカスを初めて知ったのは、平山夢明著の「異常快楽殺人」という本でした。この本に記載されたルーカスのエピソードを紹介しようと思います。

この本では、7名の殺人狂が登場します。その中でも特に印象的だったのが、ヘンリー・リー・ルーカスという男です。

そのルーカスのお母さんについてお話ししたいと思います。

彼のように殺人を何とも思わない冷酷な男が、どのようにしてそのような行動を取ることができるのか?それは彼の両親、特に母親の言動を観察することで理解できます。

ヘンリー・リー・ルーカスの母親は、ヴァイオラ・ルーカスという名前です。彼女は、十二歳から売春を始め、サディズムとマゾヒズムの専門家として知られていました。

ヘンリー・リー・ルーカスの父親は、アルコール依存症で「足なし」と呼ばれていました。彼は酔っ払ってフラフラし、線路に落ちて列車に轢かれ、両足を切断しました。その父親は、虐待されることに快感を覚えると言われています。

ヘンリー・リー・ルーカスが語る父親の姿です。

「奴は母が怒り始めると、汚れた包帯がグルグル巻かれた切断部分を自分で外し始めるんだ。そして、むき出しになった先端を母に『この糞虫』と呼ばれながら足で踏みつけてもらったり、蹴飛ばしてもらうのを待っているんだ。汚らしいマゾなんだよ。」

母親のヴァイオラは夫を役立たずの肉の塊と呼び、「足でもついていれば、パンティを穿かせて三人仲良く淫売に励みたいものだ」とののしったと言います。

『三人とは?』それではヘンリーはどのような役割を果たしていたのか。ヘンリーは髪を長く伸ばされ、女の子のように見えるようにカールされていました。

ヴァイオラはロリコンの傾向がある客を自宅に招き、息子のヘンリーの目の前で性交渉を行ないました。

ヴァイオラが息子に常に言っていた言葉。「お前は死ぬまで私の奴隷なんだ」

● ヘンリーが語る母親の姿
「母は家の中にいると、怒鳴るか殴るかのどちらかだった。一度、あまりにもひどく殴られたので『どうしてそんなに暴力的なのか』と尋ねた。すると『お前の脳みそを、床に広げてみたいのさ』と言った。」

「母は完全に狂っていた。彼女は私が何かを愛することを許さなかった。私が持っているものはすべて壊したがった。もし私が子馬を飼っていれば、その子馬を殺し、子羊を飼えば、それも殺した。彼女は私が何かを愛する感情を持つことに耐えられなかったのだ。」

さて、この調子で進むと本の内容のコピーアンドペーストで終わってしまいそうです。とにかくどこを切り取っても聞いたことがないひどい内容です。

ヴァイオラは、単なる売春婦ではなく、スカトロプレイも厭わなかったそうです。とにかくセックスやそれに付随するサド・マゾ系が好きでたまらなかったといいます。

しかし、息子のヘンリーにとって、精神的な苦痛は相当なものであったに違いありません。ヘンリーは10年以上の間に全米30州で、米国犯罪史上最多の360人を殺害したとして死刑判決を受けています。

この「異常快楽殺人」の後書きに記されていたことについて、編集長が発した言葉です。「なぜ、こんなにも幼い頃に虐待を受けた人間ばかりなのか」

SEXに溺れる母親ヴァイオラ、その毒から逃れられなくなった哀れな父親、そして呼吸をするかのように殺人を繰り返す息子、ヘンリー。その息子は「死の腕」という殺人組織に加入し、ついには殺人を職業とするに至ります。想像を超えた壮絶な人生を送ることになります。

また、本書に記載されている6人の殺人鬼の人生もまた悲惨であり、その内容は驚くべきものです。『異常快楽殺人』平山夢明著は、人間性を喪失した真の恐ろしさを考えるきっかけとなる貴重な書籍であると感じました。

参照:<ダークサイドミステリー>「ヘンリー・リー・ルーカス事件」史上最悪の連続殺人鬼