2017年1月、大手出版社に勤める敏腕編集者が妻殺害の容疑で逮捕されました!自分は殺していない、「妻は自殺した」と一貫して殺人を否定したが、さまざまな証拠から夫による殺害だと断定。この事件、一体なにがあったのか?

ということで、11月18日(火)夜9時~10時54分放送の「ザ!世界仰天ニュース」では、「まさかの出来事&大手出版社社員妻殺害2時間スペシャル!」として放送します。

番組では、2017年1月に朴鐘顕(パク・チョンヒョン)被告が妻・佳菜子さん(当時38)殺害容疑で逮捕された事件を扱います。当時、彼は41歳でした。

● 妻の様子が変で包丁を持ち出して
この事件に関しては、いろいろと思うところがあったので、2022年11月にブログにアップしました。ポイントを再掲して改めて考えてみたいと思います。



朴被告は1999年に講談社入社後、2009年に別冊少年マガジンの創刊に携わり、「進撃の巨人」「聲の形」「七つの大罪」など人気漫画の連載に関わりました。2016年6月から漫画誌「モーニング」の編集次長として辣腕を振るいます。

朴被告の妻・朴佳菜子(かなこ)さんが死亡したのは2016年8月9日のことです。「自宅の階段下で妻が倒れている」。午前2時50分頃、心肺停止状態の妻を目の当たりにした朴被告は、119番通報しています。

社会部記者が振り返ります。
「女性は病院に搬送されましたが、約1時間後に亡くなりました。38歳でした。玄関近くにある階段の下で部屋着のまま倒れていたそうです。額に擦り傷が数か所ありましたが、致命傷はありませんでした」

朴鐘顕被告は以下の説明をしています。
午前1時過ぎに帰宅すると、妻の様子が変で包丁を持ち出し、「お前が死ぬか私が死ぬか選んで」と言われました。

その後、妻は1階の寝室にいた生後10か月の次男と一緒に死ぬと言い出し階段を下りたので、朴被告は寝室で妻を突き飛ばして押さえつけ、もみ合いになりました。

朴被告は泣き出した次男を抱えて2階の部屋に避難して閉じこもりました。ドアには包丁を突き立てた跡が12か所もあったといいます。

その後、階段からドドンという音が聞こえて静かになったため、朴被告が様子を見に行くと、妻が階段の手すりに巻き付けたジャケットを使って自殺していたそうです。

朴被告は妻の首からジャケットを外し、階段下に横たえて通報しました。

● 夫婦仲に大きな亀裂が生まれて
当時、警察は事件性を疑っていました。

被害者に持病はなく、遺書も残っていませんでした。自殺の動機も見当たりません。死因が窒息死だと判明しました。被害者の首には手で絞められた内出血の痕がありました。絞殺体によくみられる舌骨の損傷はありませんでしたが、室内が物色された形跡もなく、侵入者がいたとも考えにくいため、夫・朴被告に疑いの目が向けられました。



ジャケットからは佳菜子さんの皮膚片などのDNA型は検出されませんでした。一方、1階の寝室のマットレスからは佳菜子さんの尿成分や血が混じった唾液が検出されました。外部から何者かが侵入した形跡もないことから、警視庁は朴被告が自殺に見せかけるために虚偽の説明をしたとみて、5か月間の捜査の末、逮捕に至りました。

朴被告は逮捕後の取り調べに対して容疑を否認し、黙秘に転じました。彼の友人は、「4人の子供の教育方針を巡って夫婦仲に大きな亀裂が生まれていた」と証言します。

「子供のために姓を変えたほうがいいと考える奥さんに対し、韓国籍の朴被告は朝鮮学校への進学も想定して応じず、揉めることが多かった。小学3年生の長女の中学受験は特に大きな問題でした。

昨年7月中旬、深夜に『何で叩くのッ!』という奥さんの叫び声が聞こえてきました。事件直後から『奥さんは旦那さんに殺されたんだわ』と噂になっていましたね」

妻の佳菜子さんも約3年前に文京区の子育て支援センターに「子供の教育のことで夫と喧嘩になり、平手打ちをされた」などと数回にわたって相談していたことが新たに判明しています。日常的に暴力(DV)を受けていたのかは明らかになっていません。

近隣住民も夫人の体調を気がかりに思っていたといいます。
「奥さんは育児ノイローゼ気味ではないかと聞いたことがあります。小さいお子さんが四人もいて大変だったのでしょう。夫婦喧嘩の大きな声が聞こえてきたこともありました」

● ポイントとなった「額の傷」
朴被告は、佳菜子さんは産後うつで自殺したとして無罪を主張しましたが、1審、2審ともに懲役11年の実刑判決が出て、上告していました。

この裁判で争点となっているのが、佳菜子さんは自殺か他殺かという点です。

自殺を主張する弁護側によると、事件当日、朴被告が帰宅した後に包丁を持った佳菜子さんともみ合いになりました。寝室にあったマットレスに佳菜子さんを押さえつけた後、朴被告は子ども部屋に閉じこもりました。

しばらくして部屋から出ると、佳菜子さんは階段の手すりに巻き付けられたジャケットに首を通し、自殺を図っていたと主張しています。

一方、他殺を主張する検察側は、朴被告が突発的に殺意を抱き、寝室のマットレスで佳菜子さんの首を圧迫して窒息させた上で、階段から落下させるなどして事故を装い、その際に額に傷を負わせたとしていました。

階段から落下させるには、1階で瀕死の妻を朴被告が偽装のために2階まで持ち上げ、階段から突き落としたというストーリーになります。

ポイントとなったのは、この「額の傷」の件です。2審では、この傷によって血が流れたりぬぐったりした痕跡が顔にないことから、傷を負った後に自ら首をつったという弁護側の主張は不自然だとしていました。

● 懲役11年の有罪判決
事件から3年後の2019年。1審の東京地裁は「夫が妻の首を圧迫して殺害したことは常識に照らして間違いない」として、懲役11年の有罪判決を言い渡しました。

被告の証言が信用できないとされたのにも理由があります。妻が首をつっていたのを発見し、遺体を階段の下まで降ろしたとする朴被告。駆けつけた警察官に対し「階段から落ちたことにしてほしい」と説明しました。母が自殺したとなれば、子どもたちがショックを受けると考えたからだと言いました。

朴被告が警察に「妻は自殺した」と供述したのは事件の翌日です。この供述の変化が法廷でも厳しく問われました。

最高裁は2022年11月21日、審理を東京高裁に差し戻すよう命じました。妻の顔の血痕と自殺との関係について「審理が尽くされていない」「重大な事実誤認の疑いがある」と指摘しました。

ところで、もともと「妻殺害」容疑で逮捕されたことも朴さんやその母親には青天の霹靂でしたが、1審・2審は朴さんに有罪を宣告しました。ところが、最高裁はそれを破棄して高裁に差し戻しました。東京高裁で再び審理が行われました。高裁の差し戻しという決定自体が異例であり、朴さん自身も家族も、今度こそ無実であることが明らかになるはずと確信しました。

ところがその期待に反して、2024年7月18日、差し戻し審の東京高裁のくだした判決は控訴棄却、つまり有罪だったのです。そして今回、最高裁がそれを支持して上告棄却を決定したのでした。

2025年3月11日、最高裁第二小法廷(草野耕一裁判長)は朴の上告を棄却しました。これにより懲役11年の判決が確定しました。

2024年7月の差し戻し審の判決の日にも、子どもたちはきょうこそ父親が帰ってくると信じて待っていたし、結果を聞いて全員が泣き出したといいます。

差し戻し審の判決の時も、記者会見で朴さんの母親はこう話していました。

「もう8年経ってます。子どもたちも、小学3年生の子が高校2年生、一番下の1歳だった子が8歳になりました。みんな4人ともパパが好きで、家で待っているんです。

今日私は今から家に帰って、どう子どもたちに話したらいいんでしょうか。つらくてつらくて、あまりにもかわいそうすぎて……。最高裁でちゃんと正しい審理をするようにと差し戻されましたけど、今度こそ本当に正しい判断をしていただきたいです。」

● 事件の疑問
ぼくは事件の記事を読んで、当初わからなかったのは、やり直しを命じられるほど黒白がつかないという状況でした。
 

もし朴被告が妻を殺していないとするならば、布団の失禁の説明があいまいなままだと思いました。

殺しはしなかったが、覆いかぶさって羽交い絞めしたことがニュースで流れていたと思いますが、相手が失禁するほど羽交い絞めしたら、奥さんはほとんど意識はもうろうとした状態ではないでしょうか。そのもうろうとした状態の後で、自殺という行動に出ることは考えられないのではないでしょうか。

さらに、遺書もないというのも気になるし、たとえ自殺したとしても、自分の旦那さんや子どもが同じ家の中にいて、いつ見つかるかもしれない状況の中で自殺を決行してしまうものでしょうか。

仮に検察側の主張の通りだとしても、奥さんが失禁する状態を放置して子ども部屋に閉じこもる朴被告の態度もよくわかりません。「ジャケットからは佳菜子さんの皮膚片などのDNA型は検出されませんでした」という件は、ジャケットに首を通し自殺を図っていたという自殺説の説明がつかない証拠になると思います。

2019年2月、東京地裁で開かれた初公判で、朴被告は起訴事実を否認しました。弁護側は「妻は階段の手すりに結びつけたジャケットで首を吊って自殺した」と無罪を主張。一方、検察側は「妻から育児を手伝わない不満や自分の母親をけなされたことから突発的な殺意を抱いて、寝室で首を圧迫して殺害した」として殺人罪で懲役15年を求刑しました。

● 『クロ現』でのえん罪事件のように報道
では、どこかに無罪であると考えられる根拠があるのでしょうか。2024年の1月に、司法担当記者が解説した内容からピックアップしていきます。

「2022年4月にNHKの『クロ現』(『クローズアップ現代』)が朴被告の事件について、まるでえん罪事件のように報じたんです。高裁判決が出て、最高裁がまだ何の判断もしていない段階です。今話題になっている袴田事件(1966年)のころならまだしも、近年、しかも殺人事件でえん罪が起こるとは考えにくい。マスコミも司法判断に逆らわずに、容疑者を犯人視する報道をしてしまいがちです。」

朴被告は2022年4月配信の「週刊朝日」のインタビュー記事で、佳菜子さんが第4子を出産してすぐに、子どもの1人に脳性麻痺があることが発覚し、自分を責めていたことを明かしています。事件当日にも、佳菜子さんは子どもの障害の関係で病院に行っていたといい、朴被告に「涙が止まらない」など、精神的に正常ではない様子のメールを多数送っていました。

「基本的に殺人ありきで裁判が進んでしまったため、佳菜子さんの精神状態がどのようなものだったのかという部分についてなど、しっかりと調べられていないことを『クロ現』は問題視していました」(同記者)

その争点となったもののひとつに、佳菜子さんの額にあった3センチほどの深めの傷があります。この傷からは出血があり、佳菜子さんの衣服にも付着していました。遺体を切っても出血はしないため、心臓が動いているときにできたものとされますが、弁護側は「もみ合いの後に佳菜子さんが負った傷で、自身は関与していない」と主張しています。つまり寝室では殺していないという根拠のひとつです。

「これに対し検察は、この傷が朴被告が佳菜子さんを絞殺し、まだ心臓が動いている段階で階段から突き落とした際にできたものと反論しました。死の間際だが、まだ心臓が止まっていないから出血したという主張です。1審の東京地裁は血痕の箇所が15か所と少ないことから、検察の主張を認めました。弁護側の主張が正しいとすると、血痕が少なすぎるという論理でした。

しかし、2審で新たな証拠が提出され、血痕が28か所もありました。すると、高裁は地裁の判断を誤りとしながらも、「意識があるときの傷ならば、遺体の顔や手に血の跡は残るはずだが、それがないことから、やはり検察側の主張が正しい」と認定し、有罪判決としました。生きている普通の人ならば出血していれば、それを拭ったりするということです。

ただし、この顔の血痕の有無は、裁判所が突然持ち出した“不意打ち”ともいえるものでした。裁判では顔の血痕は話題になっておらず、議論されていないものを持ち出して有罪判決を書いたんです。

しかも顔の写真は不鮮明なもので、後に弁護側が入手した鮮明な写真には血の跡も残っていました。このあたりも含め、有罪ありきのかなり荒い内容の判決だったんです」

最高裁はこれらの点を見逃さずに高裁判決を破棄し、審理を差し戻す決定をし、2023年10月以降、差し戻し審が高裁で行われています。

「差し戻された以上、顔の傷や佳菜子さんの精神状態に加えて、詳細な内容もしっかりと吟味せざるを得ません。例えば、布団にあった佳菜子さんの尿反応ですが、検察は首を絞められている段階で失禁したとの見立てですが、専門家の中には必ずしも命を落とすほどの窒息でなくとも失禁はしうると説明する人もいます。

だとすると、なかなか殺人だと立証するのは難しいかもしれません。そうなれば、捜査当局にとっては大問題で、長期間不当に朴被告を拘束していたことになります。ただし、検察だけでなく裁判所までもが一度はクロと判断した事件ですから、そう簡単に無罪判決ともいかないでしょう」(同)

この司法担当記者の取材を元に校正された記事が出たのが2024年の1月です。いくつかの事件の争点がはっきりしていない状態だと思いますが、結果的に2025年3月に最高裁にて、朴鐘顕(パク・チョンヒョン)被告には懲役11年の判決が確定しています。

参照:講談社エリート社員「妻殺害」逮捕までの焦燥言動!
               講談社元社員「妻殺害」裁判で最高裁決定が!朴被告に接見
            〈元講談社編集者・妻殺害裁判〉なぜ最高裁は審理を差し戻したのか?