
「サウンド・オブ・サイレンス」 2001年製作 アメリカ 原題:Don't Say A Word
「サウンド・オブ・サイレンス」と言えば、サイモン&ガーファンクルの名曲のタイトルで、映画『卒業』(1967)の主題歌に使われていました。
2001年の映画『サウンド・オブ・サイレンス』では、精神科医ネイサン(マイケル・ダグラス)の娘が誘拐され、その誘拐犯の要求がお金ではないところがポイントです。精神科に入院している担当女性患者エリザベス(ブリタニー・マーフィー)から、心の中に隠された「6桁の数字」を聞き出すように求められます。
固く心を閉ざした統合失調症のエリザベスと、必死に対話を試みる精神科医とのスリリングな心理描写、そして彼女のトラウマの核心に迫っていく過程が描かれています。
● 翻弄される彼を見たかった
銀行強盗事件から10年後という設定や、数字の謎が解き明かされるにつれて明らかになる事件の全貌などが描かれます。
マイケル・ダグラス演じる精神科医ネイサンが、入院している10代の少女と対面するとき、彼女が危険人物であることを知らされます。
少女が看護師を切りつけ、彼が111針を縫うことになった人物であると説明を受け、写真を見せられます。少女は10年間、各地の精神病院を転々とし、心的外傷後ストレス障害を抱え、入院20回、診断も20通りだったといいます。
また、少女は胸を触るしぐさを見せて精神科医に「見てたわね。触りたい?」と色仕掛けで誘惑します。しかし、彼はその手には乗らず、冷静に誘惑を退けます。
ここが『氷の微笑』(1992)でマイケル・ダグラスが演じた刑事役のときとは違います。『氷の微笑』では、犯罪に関係していると思われる女性作家に翻弄される様子がドラマチックに描かれていました。
『サウンド・オブ・サイレンス』でのダグラスは冷静すぎて、やや面白みに欠けます。ここはやはり、『氷の微笑』のイメージと重ね、少女に翻弄される精神科医の苦悩という流れで物語を見たかったように思います。
というのも、この映画はそこそこ楽しめる一方で、全体的に強く惹きつける要素が欠けている気がします。悪人の子分も、誘拐された医師の娘との間に心の交流が生まれたかのように見せながら、結局は首謀者である男の言いなりになってしまうため、物語の変化に乏しく感じます。
その中でも、複雑な過去を持つエリザベス役を怪演したブリタニー・マーフィーの演技には魅力を感じました。名作『17歳のカルテ』(1999)でも精神病患者役を演じており、彼女が32歳の若さで亡くなったのは残念です。
● 映画のタイトルの意味
ところで、映画の日本語タイトルは配給会社が決定するのが基本といわれますが、なぜこのサスペンス映画に『サウンド・オブ・サイレンス』というタイトルを付けたのか気になって調べてみました。
映画『サウンド・オブ・サイレンス』の原題は “Don’t Say a Word”(一言も話すな)で、その関連から次のような理由が挙げられます。
・登場人物が「話せない」、あるいは「話してはいけない」状況が物語の鍵となっています。邦題の『サウンド・オブ・サイレンス(沈黙の音)』は、この「沈黙」が持つ意味や、沈黙の裏に隠された真実に焦点を当てています。
・この邦題は、有名なサイモン&ガーファンクルの楽曲『サウンド・オブ・サイレンス』にちなんだものである可能性が高いです。歌詞にある “Hello darkness, my old friend, I’ve come to talk with you again(やあ、僕の旧友である暗闇よ、また君と話をしに来たよ)” という一節は、映画の主人公が患者の心の闇と向き合う姿と重なる部分があるのかもしれません。
『サウンド・オブ・サイレンス』といえば、2024年にも同名のイタリア製ホラー映画が公開されています。「このタイトル名、配給会社の方は好きだなぁ」と思いましたが、こちらは原題がもともと “Sound of Silence” でした。