「母性」 2022年製作 日本
 

湊かなえの「母性」という小説について、母が感想を述べた。

「母と娘の感情がどうこうと、あまりにもこねくり回していて・・・・・・・
世の中には様々な紛争や戦争が起こっている時に、そんな閉じられた世界ばかりにかまっていられないという気持ちになって、途中で読むのをやめてしまったのよ。」

その後、母は本の内容をざっと説明しましたが、母の感想とは別に小説のストーリーは面白そうです。

● 母と娘の異なる視点から
この映画が上映されていた時、散歩道で映画版の「母性」のポスターを見て、心が惹かれる気持ちになりました。緑を基にした抽象画と、戸田恵梨香と永野芽郁の組み合わせが美しいです。

「観に行こうかな」と思っていた映画でした。しかし、映画のサイトで評価を見てみると、高評価をしている人は少なく、普通の映画という印象でした。それで劇場での鑑賞は見送っていたのですが、Netflixで配信中なので視聴してみました。

映画『母性』の魅力は、同じ事件を母と娘の異なる視点から描くことで、食い違う証言と驚くべき結末が明らかになるところです。また、戸田恵梨香や永野芽郁を含む女優陣の迫力ある演技も見逃せません。

さらに、母親や娘だけでなく、祖母(大地真央)や義母(高畑淳子)も登場し、それぞれの「愛情のかたち」が描かれます。大地真央や高畑淳子をはじめとする女優陣の演技が、作品全体に深みを与えています。

「何をすれば母は、私を必要としてくれるのだろうか。
何をすれば母は、愛してくれるのだろうか。
そうやってただ求めていただけだった。だから気づけなかったのだ。
母が愛してくれなかった理由に」

という娘(永野芽郁)の告白から物語は始まります。

● 彼の人生には日が射さない
とても仲の良い母(大地真央)と娘・ルミ子(戸田恵梨香)のやり取りから話が展開します。ルミ子は「母の言葉は、いつも決して私の心を裏切ることはありませんでした」と思うほど、母の存在が大きいのです。

ルミ子は絵のサークルに参加しており、母はルミ子の絵を見て非常に褒めます。その後、横に飾られていたルミ子が暗いという理由で好きになれなかった田所の絵も褒めるのです。

「これを描いたのはどんな人なのかしら。この薔薇たちはまさに咲き誇ったこの瞬間が一番美しく、命あるものが最後に放つ美しさを表現した素晴らしい作品だわ」

少し大げさな賛辞に聞こえますが、その後、ルミ子は母が褒めた絵の作者である田所に興味を持ち、絵を譲ってもらえるようにお願いします。それがきっかけで田所との交際が始まり、三度目のデートでプロポーズされます。

自分の判断ではなく、まず母に田所との結婚について相談します。

「彼をどう思う?」
「湖のような人。たぎる情熱や一番大切な感情を深い底に沈めているんじゃないかしら。正直なところ、彼のような人にとってお日様みたいなあなたはまぶしすぎるんじゃないかって少し心配にもなったけど、あなたと結婚したいということは、湖の底に沈めたものをお日様の当るところまで引き上げて、キラキラと輝かせてほしいと願っているのかもしれないわ」
「私が結婚を断ると、彼の人生には永遠に日が射さないのかしら」

ぼくはここで笑ってしまいました。なんて自己陶酔型の親子なんだろうと。人生に日が射すとか射さないとか、神様でもあるまいに。この映画は、娘と母との大げさな言葉のやり取りを笑うことができるストーリーだと思いました。

● 娘の清佳よりも母が優先
ところが、田所との結婚後にルミ子に女の子・清佳(さやか)が生まれたことから、物語は徐々に笑っていられない変化を伴っていきます。ルミ子は母を喜ばせればそれで満足するマザコンに育っていたので、娘の清佳よりも母が優先されてしまいます。

まだ幼い清佳を嵐の夜に救うために母が亡くなったことが原因で、ルミ子は清佳に愛情を注げなくなっていきます。

気づいたときには映画の描く世界観に引き込まれていました。思ったのは、なんてよくできた無駄のない映画なのだろうということです。母と娘の屈折した愛情をそれぞれの視点で描いた名作でした。

母が言うには、「映画は原作に忠実に作成してあり、小説に出てくるセリフをそのまま応用している」とのことです。まずは湊かなえの原作が素晴らしいことは明らかで、彼女の「母性」を含め、他の小説も読んでみたいと思いました。