「妹」 1974年製作 日本


藤田敏八監督の「妹」は、フォークグループ「かぐや姫」の大ヒット曲「妹」をモチーフに、突然、同棲相手の元から逃げてきた妹(秋吉久美子)と、運送業を営む兄(林隆三さん)の近親相姦を思わせる共同生活を描く。兄は同棲相手のもとへ帰るように諭すが…。

オープニングは小島ねり(秋吉久美子)が、新聞紙の舞う汚い地下鉄のホームを、荷物を両手に抱えて兄の元へ行くシーンから始まる。その灰色っぽいホームの画面左に”妹”というタイトル文字が黄色い習字の文字でゆっくり描かれる。この出だしが、タイトルと画面の色の対比も冴えていて、まずは惹きつけられた。

秋吉久美子は、自分の思うままに個性をそのまま出して演じていて、先に見た「赤ちょうちん」より生き生きとして見えた。作品としてもこちらが好きだ。兄を演じた林隆三も女の人から肘鉄をくらうような情けない人物を演じているにもかかわらず、男っぽい魅力が溢れていて味わいがあった。

ねりが、叔母の店を手伝って住み込みで働く為に兄の元を去った。その時に二階に上がると帰って来た叔母の娘(片桐夕子)が居て、腱鞘炎になっているという。

ねりが「こんにちわ」と娘にあいさつをして「仕事は?」と尋ねると、「トルコ」と答える。
「あ~トルコですか」「そぅ、トルコの出戻り」
その娘はしばらくねりを見つめた後で
「おかしい子ね。あんた」
「そうですか?」
「具体性がないのね。顔に」
「はぁ?」
「なんかさあ、如来様みたいでさぁ」

そのたとえが妙にピッタリはまっていた。自分自身がどこに漂流してしまうかわからない不安定さを持つキャラに秋吉久美子はピッタリだった。

2017年に秋吉久美子が、没後20年となった藤田敏八監督の特集上映時にトークショーを行った。映画「妹」の撮影当時は福島県から上京して1年目で19歳の時だった。その時のエピソードを語った。

「当時は、斬新な映画と言われていたけど、自分としては、この映画は、おじさんたちのものと思っていた。藤田さんや(助監督の)長谷川和彦さんは『分かっているのか? 脱ぐんだぞ、おまえ』と何度も言うんです。

私は、こちらは当然と思っていましたから、何言っているのか、と。都会のかっこいい女はノーブラだったので、即ノーブラ。そんなのはへっちゃらでしたよ。ブラジャーの線が入っていなかったでしょ」と明かした。

「ある時、パキさん(藤田監督の愛称)が『おまえ、うまくなっちまったな。うまくなるなよ』とゴニョゴニョとおっしゃった。調子に乗ったら、いけないな、とハッとした。今や、『たまにうまい』と言われていますが、今日、映画を見たら、うまくないところが生かされている」と振り返った。

参照:秋吉久美子「ノーブラ撮影だった」 藤田敏八監督「妹」撮影秘話を語る